マカ坊

I MAY DESTROY YOU / アイ・メイ・デストロイ・ユーのマカ坊のレビュー・感想・評価

4.5
性暴力にまつわるドラマですので鑑賞の際はご注意を。感想もその点に触れます。















数年のラグがあったもののこうして日本でも観られるようになって良かった。
できればリアルタイムで観たかったけど。

主題のシリアスさと語りの軽快さが極めて高い次元で調和していてまぁ見事。

主人公のアラベラを演じるミカエラ・コールが監督・脚本・プロデュースと、制作の根幹を一手に引き受けているそうで衝撃。

序盤、主人公がどうやらレイプ被害にあったらしいという事を少しずつ本人自身の視点で認識していく過程の描き方からすでに、作り手の只事ではない志の高さが伺える。

常に「認知」と「事実」の境界でイニシアティブを奪い合う性暴力の醜悪さを1話30分のテンポ感で次々とユーモアまで交えて据え膳され、咀嚼が追いつかないままひとまず喉に詰め込まれる。

この"咀嚼の追いつかなさ"は今作の登場人物達の多くもそれぞれの立場で時に激しく、時に緩やかに、等しく重く、経験するのだが、言い換えればこの「認知のタイムラグ」こそが性暴力被害の最も残酷で厄介な問題の一つでもあるのだろう。

ある決定的な出来事、その瞬間のダメージはもちろんの事、その時点では自分でも気づかなかった、あるいはうっすらと感じた違和感が次第に確かな痛みとして自身や周囲の人々を傷つけていく残酷さ。

今作はその上でさらに「被害者の加害性」にまで同じ温度感でカメラを向けるのだから凄まじい。そういった視点でキャプチャーされた物語は次第に「被害者」「加害者」に代表される様々な二元論の輪郭を曖昧にし、視聴者それぞれへ自身の振る舞いへの徹底した省察を促す。

レイプだけでなく、人種差別や虐待や家族、SNS問題等々、毎話かなりクリティカルなテーマに、ある種フラットに踏み込んでいくので、自分の中に何となく沈着していたトキシックな部分や無学無知さがいつの間にか顕になって、とにかく揺らぐ。

それでいて間口が広い。過度な"エモさ"も皆無。これは勿論ポップミュージックの影響も大きい。ジャネイルの使い方は実はかなり難しいと個人的には思っているが、制作年も考えると今作はそこも上手い。

物語の閉じ方、綴じ方も、これしかないという収め方。

「性暴力」と「自業自得」という言葉に少しでも関連線を引けてしまう人は絶対に見るべき傑作ドラマシリーズ。
結構、いやかなり良かったな。ミカエラ・コールすごい。




あとこれだけは言っとかなあかんので少し口汚くなりますが…マジでレイプとかクズ中のクズやからな!!!!クソが!!!!
マカ坊

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