KnightsofOdessa

水の中の八月のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

水の中の八月(1998年製作のドラマ)
4.5
[] 90点

大傑作。冒頭、狭い屋上に自転車を置き、その上に器用に寝そべりながら自家製シャワーを頭に浴びる主人公の姿から、本作品の異様さは伝わる。彼はどこに行くにも分身とも呼べる自転車に乗って移動し、止まっている時は近くに置くどころかどう考えても自転車がいる場所じゃないところまで引っ張り上げる。タイヤの山、謎のコンクリアスレチック、干潟、取り残された鳥居などポストアポカリプス的なロケーションと相まって、まるでSF映画を見ているかのようだ。主人公が乗り物に乗ってそれらの間を往来するのも、転校生とライバルとブラジル人に囲まれた環境も(多文化的という意味で)、"魚になる"という言葉もSFっぽく感じられる。自宅に戻るときだけ自転車の上げ下げを強調するのも、ベース基地からの旅立ちを意味してるんだろう。それにしても、空転、速さと遅さ、不自由さと器用さ、不安定さなど自転車と高三の八月の相性が良すぎるのがマジで驚き。バイクに抜かされた瞬間に泣きそうになっちゃった。次作『日曜日は終わらない』はついこの前国立フィルムアーカイブでやってたらしく、映画鑑賞には運が一番必要というのを感じてしまた。
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