ラスコーリニコフ

ローマ帝国 カエサル:ローマ支配のラスコーリニコフのレビュー・感想・評価

4.3
ローマ史の偉人カエサルをめぐる物語。史実に忠実という作品の方向性にもかかわらず、あらゆるドラマを凌駕するカタルシスがここにはある。没落した家系の出身であった一兵卒が、軍隊でのしあがり、若くして今でいう総理にあたるコンスルになる。いわゆる三頭政治である。このアイディア自体が非常に巧みな政治術であり、ここで終わっても立派なのに、三頭政治の終焉でコンスルを追われても、ガリア征服というローマ史上最大の戦いに驚くべき戦術で勝利を収める。義父にあたる大ポンペイウスというライバルにも、兵力の差がありながらまたしても驚くべき勝利を収めるが、敗走する大ポンペイウスを追ったエジプトで思わぬ幽閉を被る。そこでクレオパトラと政略を兼ねた恋に落ちるのが面白いが、彼女との間に子を成したのは最大の失敗だった。ローマの政治を立て直したカエサルも、癲癇には勝つことができず、元老院への権威を失う。最後は息子のように慕ったブルートゥスの裏切りが大きい。カエサルに対する視点として、家族を愛するのに次々と先立たれたという視点が大切だ。彼は愛の欠如を権力に昇華していたように感じる。カエサルは情に深く、大衆を愛したが、血生臭いローマでは仇となったようだ。ただ、このドラマではアウグストゥスが描かれていないのが残念だ。この続編として描いてほしいが、次はカリギュラという暴君が主題のようである。