Nagaki

刑務所のルールブック/賢い監房生活(原題)のNagakiのレビュー・感想・評価

5.0
「賢い監房生活」
全部見終えて、「見てよかったな〜」と心の底から思えた。

「賢い医師生活」が好きな方には是非観てもらいたい、!「ヴィンチェンツォ」好きな方もハマるんじゃないかなと思います、、!
ということで、ジャンルは全く違いますが、演出や展開などについて、「賢い医師生活」と比較しながらレビューしようと思います笑
ネタバレはしません。

まず、「賢い医師生活」の顔見知り俳優さんたちがこのドラマにもたくさん参加されています笑
ポスターに載ってるジュンワン先生こと、チョン・ギョンホはもちろん、「え、○○先生いるじゃん!」ってなることが多々あります。


「賢い医師生活」と比べると、面白くなっていくのは遅めかもしれない。
「賢い医師生活」は2話あたりから面白くなるってよく言われてるけれど、このドラマは、まず3話から一展開があって、5、6話から面白さが加速していくと思う。(完全に個人的な意見。)

1〜4話がつまらない訳ではなく、「賢い医師生活」と同様に、ユーモアや伏線が所々に散りばめられている。ただ、「賢い医師生活」に比べて、このドラマの題名からも察する通り、悪い人物が多いので、ハラハラする場面も多い。


あとは、変な言い方だけれど、フォーカスを当てる立場の人物が異なっている。先生と生徒、医師と患者、刑務官と受刑者、みたいな立場。
そして、登場人物たちの入れ替わりの頻度も異なる。
病院全体の日常を描いた「賢い医師生活」では、主人公たちは医師なので、医師たちを軸にストーリーが進む。患者さんたちは基本的に1話ごとに入れ替わる(例外もある!)し、様々な診療科の患者さんにフォーカスが当たるから、患者さん一人一人に対してのエピソードが少し薄く、短くなってしまう。心無しな言い方をすると、患者さんのエピソードだけでは心動かされるシーンを作るのは難しい。

「賢い監房生活」では、主人公は受刑者側なので、主人公ジェヒョクと同室の受刑者を中心とした日常が描かれており、「賢い医師生活」で軸になっていない「受ける側」の葛藤や、これまでの過去のエピソードを丁寧に描くことができている。また、出所までの期間が長いので、基本的に、1話分だけで受刑者誰かの出演が終わることはない。だから、時間をかけて、主人公以外の受刑者のエピソードも徐々に明らかになっていき、愛着も徐々に高まっていく。

私自身が、登場人物に対しての背景知識、共感、愛着がないとあまり感動できないタイプので、個人的な意見だと、「賢い監房生活」の方が、一人一人のエピソードに対して時間をかけるので、感動の回数は少ないが、感動の深さは圧倒的に深かった気がする。


あとは、「賢い医師生活」と同じく、時系列をずらす演出も素晴らしい!!
「賢い監房生活」の方が、時系列ずらす演出がかなり多く起用されていると思う。


ユーモア演出も、「賢い医師生活」と同じく最高🙌
ただ、「賢い監房生活」の登場人物は、やはり犯罪者が多いため、ブラックジョークも多くある笑
なんだろう、シン・ウォンホ監督の作品はまだ、この2作品しか見たことないけれど、この監督のユーモア演出って、チョコプラのコントとなんか似てるな〜って思う。バラエティ番組出身の方だからかな、、🤔
ツッコミの人がいなくて、ボケだけで終わらせる、みたいな。
誰かがボケをしたら、他の人がツッコミをするんじゃなくて、ヘンテコな効果音とか、動物の鳴き声で終わらせる、っていう演出がめちゃくちゃ良い笑
(ちなみに、「賢い監房生活」では、小鳥のさえずりが聞こえたら🐦それは、ユーモア演出です笑)
平和な世界だな〜って思うし、登場人物たちが可愛く見えてくる笑
ドラマの世界観とか、登場人物の魅せ方は2作品とも最高🙌



見終わった後は、すこーーーしだけ心残りはあった(ネタバレの部分で述べます)けれど、本当に見て正解だったな、と思った。


この作品も、見て損することはないと思います、、、!気になった方は是非ご覧ください!!!












以下ネタバレ




ジェヒョクは、一見、何も考えてなくて、ただボーッとしているように見えるし、なんだかんだで、監房生活に馴染んでいるように見えるけれど、
やっぱり、心の奥底には悔しい気持ちはずっとあるんだってことを、ドラマ全体を通して何度か確認できるシーンがあった。
(5話の終盤が1番分かりやすいが、)特に2話の最後は、心にズシンときた。
教会の集会で、受刑者たちが合唱している中で、今までの合唱中は特に何もせずボーッとしていたジェヒョクが、今まで溜まっていた悔しさや辛さを全部吐き出して叫んでいたシーン、、。なんか涙出てきた。

3話は、環境が拘置所から刑務所に変わり、メンバーも一気に変わる。
1番最初にミンチョル氏を見た時、拘置所にいたカモメと同じフォルムだったし、ソジを脅してたし、同室のカイストと
バルジャンと、あたかも脱獄を試みているような内容の会話をしてたから、「あ〜、刑務所でもこんな奴と一緒にジェヒョクは生活しなきゃならないのか、、」と思ってたけれど、
まさかの熱々のラーメンを食べるために、雨の日を狙ってこんなにも真剣に計画を練っていたとは🤣🤣
ここから一気に同室メンバーの愛着が湧いた。

まず、ミンチョル氏のエピソードがこのドラマ全体を通して、1番感動した。号泣した。心にグッとくる、めちゃくちゃ素晴らしいサプライズだった、、👏

まず、今までドラマの中で、
「みんな犯罪者だ。誰も信じるな。」っていう台詞がよく出てきた。
さらに実際にも、拘置所の浴場で親切にジェヒョクにシャンプーをくれた人は、実は死刑囚だったり、拘置所で同室にいたよぼよぼのおじいちゃんは、実は20回も刺殺した殺人犯だったり、カモメにパシリにされていたソジは、実は、拘置所のご飯を予め自分の分だけ多くとっておく、優しさのかけらもない奴で、さらに強姦犯だったり、など、

私たち視聴者たちも、「この人、親切だな、可哀想だな」と、思って見ていたけれど、結局はみんな犯罪者で、この人たちの残酷な面を後に知り、裏切られた気持ちになることが多かったと思う。


バルジャンが出所する前に、ミンチョル氏に、「出所したら、まず刑務所の正門前にあるプデチゲ専門店でプデチゲを食べる」って言ってて、「出所したら、必ず会いに行く」とも言ってたけれど、
いざ出所したら、プデチゲ専門店に見向きもせず、すぐにタクシーに乗って、どこか遠くに行っちゃったから、ミンチョル氏に会いに行くことも多分、すでに頭にないんだろうな、、
しかも、バルジャンは出所直前、自分が出所したいがために、自分に疑いがかかっていた不正を、ミンチョル氏に背負わせて犠牲にしてしまっていたし、
やっぱり、「犯罪者を信じるな」って言葉は正しいのかな、、
バルジャンに裏切られた気持ちだな、、

と、思っていたら、第10話!!!
監房生活22年目のミンチョル氏に面会が、、!
ミンチョル氏と関わりのある人物はバルジャンくらいしかいないんじゃ、、と少し察した。
だけど、ミンチョル氏が面会室で座って待っている時、私も何故か緊張してしまった笑
そして、面会室にバルジャンが入って来た瞬間号泣してしまった笑
裏切らずに、約束しっかり覚えてて、嬉しかった、、ほんと涙止まらなかった。

バルジャンとの再会もそうだし、まず、ミンチョル氏役の、チェ・ムソンの演技というか存在感が、めちゃくちゃ自然で、すごく引き込まれた。

あとは、舌ったらずなカイスト役のパク・ホサンも素晴らしい俳優さんだった。
まず、舌ったらずな役を作った、監督さんと脚本家さんの斬新な発想力というかアイデアに拍手を送りたい!👏そして、それを見事に演じ切るパク・ホサンの演技力に、「新ラーメン」5箱送りたい!!

カイストの入院中の場面は胸が痛んだな😢ずっと、刑務所内で持ち前の滑舌で場を和ませてくれるカイストが、現実社会の境界線にいる感じで、「犯罪者だから」という理由で想いが報われなくて、少し現実を突きつけられた、、

ハニャン(ヘロリン)の場合も同じく。
恋人のために!と、頑張って薬を打ち切って、体調を崩しながらも耐えて耐えて頑張っていたのに、出所した途端、薬に手を出してしまい、恋人と再会することは出来なかった。
私は普通に、ハニャンは葛藤しながら耐えて、最後は克服できるんだろうな、って予想していたから、車の中で薬に手を出した瞬間、衝撃すぎて、呆然状態になった。

ドラマ内でも、「ジャンキーは、一生クスリを打ち切ることはできない」みたいな台詞が度々あった。ハニャンは克服してくれる!って思ってたけど、現実はそう上手くはいかないってことを、監督はしっかり表現してくれた。

このドラマは、ユーモア溢れるシーンはもちろん沢山あるが、それと同時に、上手くいかない現実、ダークな部分も沢山ある。

特に、最終話最後のシーン。
普通に、視聴者が期待するドラマ展開は、ジェヒョクが出所して、家族、恋人と再会。そして、野球選手に復帰して、マウンドに立つ。(ここまではこのドラマの展開と同じ)そして、観客席には、今までに出所した受刑者たち、ペン部長を含む西部刑務所の刑務官たち、親友のジュノ、恋人のジホ、家族たちの姿が所々に見える。ジェヒョクは観客たちの歓声を浴びながら、ボールを投げる。
こんな感じのラストを少なからず私は期待していた。(ここまで見たかったのが本音笑)

しかし、実際のドラマのラストシーンは、ジュノが刑務官として、ジェヒョクが出所した後も、いつものように、受刑者たちを取り締まっているシーンで終わる。
ジェヒョクのハッピーエンドではなく、刑務所の日常のシーンで終わることで、題名に最もふさわしい終わり方だったと思う。誰かが出所して、また現実を生きていこうとする反面、別の誰かが刑務所に入所しに来る、という日常が、しっかりと最後まで表現されていた。
ユーモア、ハッピーな部分と、現実、ダークな部分のバランスが、めちゃくちゃ良かった。
終わった後、色々考える時間を与えてくれるドラマだと思う。




過去一に長いレビューを書いてしまいました😅でも、それくらい誰かに良さを伝えたくなるドラマでした。

レビューでは一切触れていませんが、このドラマを通して、チョン・ヘインの魅力にも気づくことができました。


キム・ソンチョルも毎回ドラマでいい役してると思います。このドラマでは法子(ポプチャ)として出演してるけど、1-2話の特別出演だけかと思ってたら、7話から予想外の再登場してきて、本当に最高でした。最終話まで、ジェヒョクとの関係性も👍でした。


最後まで読んでくださった方ありがとうございました!
Nagaki

Nagaki