Frengers

ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン 1のFrengersのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

本作がNetflixに顧客を呼び込むきっかけになった、つまりストリーミング時代を決定づけ、2010年代の映画とドラマの接合点でもあることが良く分かると同時に、デヴィッド・フィンチャーによる画面構成と演出が一つの王道になっていく流れとして見ることが出来ると思うと楽しい。最新作『The Killer』における照明と、映画然としたあっけらかんとした語り口は王道になった「その後」をより印象深くさせる。本作の企画が『ベンジャミン・バトン~』から始まり、『ドラゴン・タトゥーの女』と『ゴーン・ガール』の間に作られていること。ガーディアン紙の今年のインタビューで、『ゾディアック』の様な長い物語を作りたいときに映画というフォーマットでは観客の耳目を惹き続けられないからドラマを作ったという旨の発言をしているのも納得のタイミング。

英国で90年代、サッチャー政権時代に作られた『House of Cards』を元に作られた本作は、アメリカのホワイトハウスに置き換えられている。画がキマリ、衣装や編集の切れ味もある(劇伴は00年代を引きずっているようにみえる)。画面に語りかけるフランク・アンダーウッド(ケヴィン・スペイシー)は視聴者を相棒にし、権力・自尊心への底なしの欲望に駆り立てる。中心人物は欲しいものが欲しいだけ。そして全員が利用し利用され、操作し操作させられる。主要人物から欲望を抜くと彼らはある種の若さに返る。フランクは学友との時間、妻クレア(ロビン・ライト)は純粋な愛情。幼さや無垢さを如何に遠ざけられたものだけが権力(金ではなく)に近づけるという構図はウォール街とも近い。『ウルフ・オブ・ウォールストリート』、『インサイド・ジョブ』を思い出した。

NetflixではなくBlu-rayで見たのですが面白かったです。特典映像でフィンチャー監督は俳優たちが集まって行う「本読み」が苦手(自分は映像に意識があるから)で現場に居たくないらしく、中心に監督と繋がったカメラを置きながら本読みしているシーンがあるんだけど、劇中でフランクも会議で近いことしていて、やっぱ自分を重ねているのかなと思うと最新作『The Killer』の着地も腑に落ちたりした。色々な萌芽をかぎ取ることが出来て面白かった。
Frengers

Frengers