Frengersさんの映画レビュー・感想・評価

Frengers

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薔薇の葬列(1969年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

ゲイボーイをテーマにした実験的な映画…という触れ込みながら、意外にも丁寧だと感じた。それは、数々の意匠を混ぜ合わせた作風ながら、一つ一つ反復するから。『時計仕掛けのオレンジ』より先んじた早回し、メタ視>>続きを読む

マッドマックス:フュリオサ(2024年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

アイデンティティを一方的に与えられ、成替わっていったフュリオサが反対に自身の影武者を幾度も用意し、自身を守ろうとしていたディメンタスを討伐するという端的なプロット。2回の奪い合いの反復を繰り返すもグル>>続きを読む

関心領域(2023年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

カメラは基本的には固定化されたままで、壁や紙などの平面性が強調された正面の構図と奥行きを生かした斜めの構図を入ったり来たりするだけ。そのなかで煙草の火と焼却炉を重ね、監視塔の往復と生活を重ね、機関車の>>続きを読む

ジキル博士とハイド氏(1932年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

最初のpovから良くて、ジキル博士と鑑賞者は「見る」ことで繋がっている。手元足元のアップ、階段を乗り降りする度に悪に染まっていくという演出。ヒッチコック作品とも近い位置にあるとも言える。そしてハイドが>>続きを読む

ありふれた教室(2023年製作の映画)

3.4

このレビューはネタバレを含みます

レオニー・ベネシュ演じるノヴァクを少し動かせすぎかもとは感じたが、非常に優れた演出に支えられた作品だと思った。会話シーンではカットを割る、切り返すことで対立を描き出し、「見る」事への不信と扉の開閉や窓>>続きを読む

新バビロン(1929年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

戦争映画ではもあり、映画についての映画でもあると思った。出会ってすれ違ってまた出会う。管楽器とピストルの反復と横溢。あとはひたすら運動があるだけ。繰り返す動きと日差しの明滅、洗濯場面での手で回す動作の>>続きを読む

マックスと犬(1912年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

「サイレントシネマ・デイズ2024」のマックス・ランデ―作品集で6作品見た中の一つ。個人的には「マックスと規那入り葡萄酒」にやられたがフィルマークスに作品がないのが残念。点数付けるなら4.0。

マッ
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人間の境界(2023年製作の映画)

3.3

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飛行機の上から眺めた風景、窓ガラスに映る街並み等々、窓には時間が経過した幻視された歴史が映り、対照的に液晶には手の届かない人たちが映る皮肉。『大いなる幻影』を想起する、モノクロ、国境越しの断絶と音楽の>>続きを読む

悪は存在しない(2023年製作の映画)

3.9

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木→切り株→まき割りから雪→川→水汲みそしてタバコの煙と蒸気の上昇の動きへ。あまりにも雄大な円環に導かれるように人と鹿が繋がる。上層/下層の関係は人間社会の地位にも相当するが、しかし水挽町の人間もまた>>続きを読む

阿片戦争(1942年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

国策映画なので悩ましいが幾つかのカットはかなり素晴らしい。特に屋外での群像性やアクションを際立たせた幾つかの場面にはやられたし、二度目の反復で必ず状況が変わる(もしくは一度目の続きが始まる)というのが>>続きを読む

釣鐘草(1940年製作の映画)

-

併映された『姉の出征』(3.7点位つけるかも)の見事な絵の作り方のあとに本作を見てしまうと、さすがに厳しいし、話も見えてしまうのだが、筏にのり遠ざかっていく姉と弟の距離感、背を向け悲嘆に暮れる弓子(高>>続きを読む

稲妻(1952年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

同じ方向を向くor歩く→馬が合う。団扇を仰ぐ、泣くなど同じ動作をする→心が通う、と呼応するように対峙する位置にいる反目し合う男たちが家族を乱す。バスでの隣り合う客たちと窓の外から見える男女の位置のズレ>>続きを読む

類猿人ターザン(1932年製作の映画)

3.2

ターザンの体操選手さながらの躍動的な動きと人間と動物が同じカットの中で映る幾つかのシーン(30年前のハタリ!か)は見応えがかなりあって、それが左右の動きとして配置される瞬間はあがるし、カットで断絶され>>続きを読む

名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)(2024年製作の映画)

3.3

このレビューはネタバレを含みます

 平次を夕暮れをはじめとする黄色い光で、怪盗キッドを月あかりで示すところは良かったし、レンズフレアがここまで画面を彩ったシリーズは無かったと思う。そこ以外はしんどくてジャンプカットまみれだし、兎に角ア>>続きを読む

アイアンクロー(2023年製作の映画)

3.3

このレビューはネタバレを含みます

 ディゾルブと暗転によって時間を進めていく様は映画というより2時間のドラマという感じ。脚本が織りなす物語は感動的。マジックアワーを切り取った一瞬が冒頭の訓練から天国に行きつく様、「お約束」でもあった攻>>続きを読む

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

 低所を幼児性、高所を成熟として一緒に通学路を上っていき(ペットを連れた老人とすれ違う)、ノラ(グレタ・リー)はヘソン(ユ・テオ)より先に階段を進む。12年後、フェイスブックを介して画面越しに会う前の>>続きを読む

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

3.1

このレビューはネタバレを含みます

「矛盾している、それでもなおうまく機能する」という台詞通りの出来。しかし隣の部屋(別のシアター)では別の事態が進んでいたりするのである。時系列を断絶させること、カットを割りまくることとそれを一つの連続>>続きを読む

Here(2023年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

16mmのスタンダードサイズの画面の固定カメラの中で真横、ナナメに位置しながら交流し、奥に進んで一つになっては手前に来て離れていく。森に群生する様々な生物の差異とプレパラート越しの焦点、同じ雨に打たれ>>続きを読む

病院はきらいだ(1991年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

動かない部位を自立的に動かさせようとする若い手と足が、過疎化する社会の暗喩でもあり、季節の流転に合わせる我々の生活の暗示にもなる。わざわざ施設を撮る時に小川の流れを入れた所も骨董品の振り子時計の動きも>>続きを読む

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

@IMAX

事前に前作を見返した。1作目が細部まで行き届いた画ながら動作毎にカットを割りまくるor一つの動きを反対にカメラを置いて切り返して録るというつなぎ方に「???」となっていたのであまり期待し
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ともだち(1961年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

「幼児教育60年代作品集」にて『ケンちゃんたちの音楽修行』と併映。

幼い子供に対してカメラを意識させることなく予想できない動作を一つ一つ収めていく。画面構成も素晴らしい。声を口の動きに合わせることな
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リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシング(2023年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

「俺の教えを広めてほしいんだ」という言葉を誰よりも実践したのが本作であること。高所からの啓示としての教会の光とスポットライト。その光そのものになってしまった人とも言えるだろう。神に身を捧げ、同時に後継>>続きを読む

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)

3.3

このレビューはネタバレを含みます

脚本がとにかく素晴らしい。当事者性を欠いた本がベストセラーになり、そしてそこに関わった家族や身内が幸せになるという余りにも自己言及的なプロットは、市場原理に求められる嘘とコミュニティの繋がりが表裏一体>>続きを読む

昔々、アナトリアで(2011年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

英米圏でのonce upon~というタイトルによるあり得たかもしれない過去を描くというスタイルとはまた別に、冒頭の遺体探しから遅々として進まないプロットと解決しない事件。30分ほど過ぎたあたりで初めて>>続きを読む

落下の解剖学(2023年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

演出、カメラの動き等々全てがピンと来なかったし、間違いなく150分を超える必要も無かったと思う。「Fall」という言葉から何かしらの上下運動を期待し、家の階段の構造を見てキター!となったものの寧ろ動き>>続きを読む

瞳をとじて(2023年製作の映画)

4.1

このレビューはネタバレを含みます

2020年代で一本選ぶならこの作品という感じ。
ここで何か記すより、もう一度この170分に浸りたい。瞳を閉じるとはそういうことでもあると思う。記憶すること、老いること。

ボーはおそれている(2023年製作の映画)

3.2

このレビューはネタバレを含みます

 アリ・アスター版『夢』(黒澤明)、『TAKESHIS'』として非常に楽しんで見ることが出来た。冒頭のPOVの靄がかったショット、頭を打ち付けることへの恐怖、体への衝撃で息を吹き返すを繰り返しながら、>>続きを読む

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

雨で立ち止まる藤沢美紗と光の明滅の中で蹲る山添孝俊。自転車が通り過ぎるたびに二人の関係性に変化が生じる。蛍光灯の明滅で薬を発見し、雫を拭うことによって相手を慮る。気付けば彼らの行先は反転し(栗田和夫/>>続きを読む

ストップ・メイキング・センス 4Kレストア(1984年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

@IMAX

画質、音質ともに遥かに向上した。特に興味深かったのはステージ上で、そこは家であり庭であり街であり国でもありThis Must Be A Placeでもあることが良く分かった。エンドロール
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Saltburn(2023年製作の映画)

3.1

このレビューはネタバレを含みます

サイコパスが血統主義と拝金主義を蹴散らすエンターテイメント。「見る」ことが愛憎入り混じるものであること。そもそもArcade Fireの屈指の名曲「No Cars Go」が薄っすらかかるバーで出会いM>>続きを読む

哀れなるものたち(2023年製作の映画)

3.7

内面と外面がアンバランスのベラ・バクスターを魚眼レンズとズームイン/アウトの歪みによって捉え直すこと。ヨルゴス・ランティモス監督作特有のあおり気味のカメラによる高低差はそのまま死と生を暗示する。そのた>>続きを読む

マリン・スノー-石油の起源-(1960年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

太陽を起点とし、水中のプランクトンの死骸が地層にたまり、それが石油になる。微生物をはじめとする水中の生き物の弱肉強食に人間の生活が如何に関わっているか。星空の様な瞬きは沈んでいき、波の様な煙は太陽に向>>続きを読む

この雪の下に(1956年製作の映画)

3.9

雪国の春夏秋冬の生活を収めたドキュメンタリーながら、日常の動きを再現し再構成してあるので作劇とも近く、カメラの位置があまりにも素晴らしい。冒頭の画面向かって左から右に、手前から奧に歩いていくショットか>>続きを読む

Sambizanga(原題)(1972年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

反政府組織への関与を疑われた夫を妻が探しあてるも…というプロットがシンプルな物語でありながら、作劇とドキュメンタリーが高度の次元で混じりあう。自分が見ているのがどっちなのかわからなくなる。演出からはみ>>続きを読む

枯れ葉(2023年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

最高。
冒頭のベルトコンベアによって詰め込まれる肉に象徴される運動(力、暴力)が、ラジオから労働から溢れ、廃棄されていく食べ物、人間、犬という世界のなかで、視線を交わし手を差しのべることに着地させる。
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ファースト・カウ(2019年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

さりげなく格差社会、資本主義と競争、移民、持たざるものの不条理を滲ませながら、優しさと友情の不可能性を描くプロット。冒頭と同じように「何かを見いだす」事によって物語は駆動し、それとシンクロする様に、暗>>続きを読む