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ウルトラマンコスモスの1984okのレビュー・感想・評価

ウルトラマンコスモス(2001年製作のドラマ)
4.2
幼少期、おそらく2、3歳で初めて触れたであろうウルトラマンがコスモスだった自分にとって思い入れが一段と深い作品です。(便宜的にではありますが)自分も大人になり、先日まで行われたYouTubeでの配信を一通り観てからは、より一層この作品の革新性に驚かされています。

怪獣との共存、友好的な関係性を標榜するTeam Eyesの姿勢はさることながら、最も特異的と言えるのは主人公である春野ムサシの平和主義的なポリシーです。
近代を経て人類の行いや過ちを省み、自然環境や生態系の保護を行うその延長線上として怪獣を保護するべきだというポストモダン的な思想は、非常に先進的でかつ理解可能なものです。

その一方で第1話から登場しては怪獣に寄生し凶暴化させ、人類や怪獣を含めた第三惑星の天敵とみなされるカオスヘッダーに対しての戦闘も、シーズン終盤においてムサシは躊躇します。これには終盤で明かされるカオスヘッダーについてのある事実も関係してくるのですが、それにしたって自分の大好きな怪獣たちに取り憑いて良いように利用する存在に同情するなんて、ただのお人好しどころじゃない、ぶっちゃけ言うとちょっとイカれてます。

でももうここまでかというところで、この急進的、過激的も言えるムサシの理想主義が最終的には争いに終止符を打つ。幾重にも重なり、異なる考えを持った者同士が通じ合うという奇跡、まさに闘いの場所は心の中だった訳です。(子供が理解できるかは置いといて)おそらく視聴者ですら「おいおいそりゃ無理な話だよ...」と呆れんばかりに友好的な対話を望んできたムサシが報われる、全てを回収する最高のフィナーレです。

多少粗があるご都合主義的なストーリー展開はありますが、そこは些細なものに過ぎません。地球に降り注いだ奇跡の光、ウルトラマンコスモスという慈しみの青き巨人とそれに共振した1人の青年、春野ムサシという人物の成長譚。至る所で対立が起きている現代、理想を持ったって良いじゃないか、綺麗事を言って何が悪い。お互い恐れずに相手を思い遣り、ちょっとお人好し過ぎるくらいが丁度良いんじゃないか、そう思わされるような、そんな強さと優しさ、そして勇気を我々にもたらしてくれる作品だと思います。
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