戦争作品の代表として勧められたので、手を出してみましたが、とんでもない大作です。超濃厚な1時間エピソードが10話分もあるので体力要ります。正直、1日1話が精一杯でした。一気見なんて出来ません。観ているだけで脳内トラウマレベルで、むご過ぎて、どんな綺麗なメッセージよりも、戦争はあってはならないことがしっかり伝わります。
配信シリーズとは思えないほどのクオリティ。しかも2001年ということに驚きます。そんな前かと思うものの、あの頃によくあったヒューマニズムにフォーカスされてるのが特徴なので、裏を返すとあの時代だからこそ作れたんだとも思います。映像技術も十分で申し分ないです。
原作に沿いストーリーは続きますが、毎話完結のオムニバス形式になっており、主人公が入れ替わります。苦しいぐらいに濃い内容で、戦争の過酷さを淡々と高品質なアクションとして見せていく悲劇。この淡々さが辛いリアリティで、戦場シーンはコストをしっかりかけて徹底的に容赦なく描いています。実在の人のインタビューから始まるのも響く仕掛けです。
印象深いのは、
第2話ノルマンディー降下、戦争に放り込まれる衝撃は想像以上のスケールでした。
第6話衛生兵、戦争ものでなかなかここにスポットライトは当たらないので、新鮮でした。
そして何より、第7話雪原の死闘。英語タイトル「The Breaking Point」の「転」なだけあり、どピークに強烈。ここで第1話からの6時間分の蓄積が爆発します。
凍てつく寒さの中、何も出来ない上司の元、最初から見続けたみんながどんどん負傷していくのは、見るに耐えない。安心の要だと思っていたコンプトンが堕ちていき、カオス下でも正義感を持って前に進むリプトンに私もすがり、急に振られようとも躊躇なく敵地に走り込み、代打指揮を取るスピアーズが鬼かっこよすぎて声が出ました。
その後、HBO Official Podcastシリーズも全部聴きまして、エピソード0のトム・ハンクスのコメント「スピアーズの目的はただ一つ、一刻も早く戦争を終わらせることだった。そのためにはドイツ人を殺害し、猛スピードで敵地を突破した。」と聴いて納得したものです。目的思考の塊です。
そして、リプトン役のウォルバーグも監督に「戦場ではそんなに周りを見る余裕なんてない、みんな自分に必死になって、戦友の死に様を目の当たりにして、今でもうなされてるんだ。」と綺麗事にさせない演技指導があったと語ってました。
10話の時間をかけて、緩やかに終戦に向かうところも丁寧です。
キャラクターがとても大事な作品ですが、全員同じ軍服を着ていることもあり、最初なかなか見分けつかず、キャラクターを覚えるのに時間がかかりました。
ウィンターズ役のダミアン・ルイスはハマり役。とにかく着いていきたいリーダー気品満載です。回を重ねるごとにどんどん偉くなっていきますが、どんどんカッコよくもなっていきます。イギリス人なのにアメリカ人になりきってます。
懐かしきNKOB、マーク・ウォルバーグを弟に持つドニー・ウォルバーグのリプトンもフィット感凄い。お気に入りです。
スピアーズは、第7話のヒーロー行動に伴うイケメン放つマシュー・セトル。美しい。
語り始めたらキリないですが、その他お気に入りのコンプトンやニクソンもみんなハマり役でした。(終盤で、ニクソンが崩壊していくとは思いませんでしたが。実に人間。)
でもソベル役のデヴィッド・シュワイマーはフレンズのロスにしか見えないので、他の役者にして欲しかったのが本心です。
いまの自分の生活を踏まえて、これが現実だなんて、本当に信じられません。その後のたった数十年後、オンラインゲームやサバイバルゲームとしてみんなが没頭するようになる未来がくると思えたでしょうか。なんなんだ。
さすがのスピルバーグxトム・ハンクス製作の規模感です。元気な時に観ることをお勧めします。
なお、Official PodcastはSpotifyで配信されてます(アメリカはMAXにもあります)。各エピソードを掘り下げる全10エピソードです。英語ですが、俳優やスタッフを招き、対談というより、インタビュー形式でゆっくり話しているので、比較的聴きやすいです。
スピルバーグとトム・ハンクスがしっかりキャスティングに関わり、中でもトム・ハンクスが如何に全てのキーマンかが伝わります。全員同じ発言するので、裏表もないのでしょう。そして、地上波はCMが入るのでNGなど方針を決めたのもトム。スピルバーグの右腕ですね。
当時9.11の2日前に配信開始して、中断しなければならなかったのも、何ていう運命の巡り合わせでしょう。
https://spotify.link/blEi8Su0ADb