マグルの血

THE DAYSのマグルの血のレビュー・感想・評価

THE DAYS(2023年製作のドラマ)
5.0
東日本大震災における福島第一原発事故の話。

あまりに重厚なテーマと最初から最後まで張りつめた緊張感。「事実に基づいた物語」というたった一文によって、耐え難いプレッシャーを感じながらも「この作品は絶対に最後まで観なければならない」という使命感が、本編開始早々に自分の中で生まれました。

当時を思い返してみると、あまりニュースなどに関心がなく自分の身の回りのことで手一杯だったと思います。職場の対応やらでバタバタして、「何まずいことになってる」という漠然とした認識はあっても、目を反らすかのように気にしないフリをしていた気がする。

それでも知人と会う度に「無事で良かった」「なんとか乗り切ろう」と声を掛け合ったものですが、よくよく考えると何がそんなにヤバかったのか、少しずつ理解していったのはだいぶ後だったと思います。とにかくなんとなく「自分は大丈夫だろう」という気でいた。

キャッチコピーにある「これは天災か、それとも人災か」。このドラマはことなるいくつかの目線のストーリーが交錯して事故の様子を描いています。
淡々と、じわじわと進む物語。事故発生後からとてつもない緊迫感に。現場も、それに指示を出す人々も、行政も、作業員の家族も、とてつもないストレスにずっと拘束され続ける姿に目を覆いたくなります。

物語が進むにつれ深刻化していく原発の状況。それぞれの立場で懸命に対応しているからこそ、立場の違いから生まれる軋轢。苛立ち。絶望。
錆びた針金を脇腹にゆっくり差し込まれるようなずっと続く鋭い痛みに耐えながら、次から次に起こるトラブルに真摯に向き合い続ける。

7話目はもう涙が止まりませんでした。

確かに大地震は天災であり、人にどうすることもできない事象だが、原子力発電所の存在は人間が作り出したものです。
重なるトラブルへの対処の中には、立場の違いからくる判断の過ちや対処の遅れもあったと思う。
だからこそ、考え続けなきゃならないんですね。私は結論付けることができませんでした。現場に混乱を招いていたように描写される総理の振る舞いですら、あの異常な混乱の中で批判する権利は誰にもないように感じます。

観賞後、自分が抱いていた「大丈夫だろう」という感情が、命懸けで作業する皆さんの上に成り立っていたんだなと痛感し、きちんと知ろうとしなかったことを恥ずかしいと感じました。

このドラマは正直スコアはつけられません。でも、重要な作品であると判断しまし、多くの人の目に触れるべきと考えたので5.0です。
ある程度の思想の偏り、映像作品としての物足りなさなど人によって感じ方は様々と思いますが、今後日本で生きていくうえで観ておかなければならないと思う。
あのとき、皆大変で、自分以外のことなんて気にしてられなかった。少なくとも私はそんな感じだったので観賞できて本当に良かったです。

Netflix、強い。
マグルの血

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