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ナイト・ドクターのAPOのレビュー・感想・評価

ナイト・ドクター(2021年製作のドラマ)
4.0

OST 得田真裕
めちゃめちゃ良い。さすが得田さん。


主題歌 琴音 "君は生きてますか"


第1話

"昼夜完全交代制” を試験的に導入した病院を舞台に、夜間救急専門の医師「ナイト・ドクター」たちにスポットを当てて描かれる作品。

救命救急センター(EMS)というテーマでいうと『コード・ブルー』が真っ先に思い浮かぶが、あちらとはコンセプトが違う。

率直に思ったことを以下に羅列していく。

・ナイト・ドクターとして招集されたメンバー(指揮を取る本郷先生を除いて)でみんな同期というスタンスが客観的にすんなり入ってこない。明らかに経験値の違いや、技術力に差がありすぎる。集められた5人の中でも特に深澤(岸優太)は全く救命医として機能していない様子。成瀬(田中圭)なんて明らかに年上でどちらかというとベテランの域なのに、使い物になっていない桜庭(北村匠海)から呼び捨てでタメ口で話されているのが違和感が拭えなかった。深澤が朝倉美月(波瑠)を呼び捨てでタメ口なのも同様。

・深澤が手に負えないことに気付き、やはり元々の内科医に戻して欲しいと依頼。→ 最終日の夜に持病を持つ妹・心美(原菜乃華)がEMSに運ばれる。→ 何も出来ず(最初受け入れを拒否することまでするのは予想外)に終わり、深澤が救命医としてやはりもう少し働きたいとお願いする。
この流れは予想がそのままだった。

・深澤と朝倉が恋愛関係に発展する未来は、今のところ見てられない。

・深澤メインで描かれた第1話。凄腕ドクターを主軸に置くのではなく、ポンコツドクターを救命医として描くスリリングな気分にさせてくれる作品。

・周りの役者陣が上手だという効果もあると思うが、岸優太の演技がまだちょっと観ていて慣れなかった。



第2話

コンビニ受診・・・夜間の時間帯や休日に、緊急性のない軽症者が受診に来ること。

何をもって重症患者なのか。
一通り医学を学んだ医師でさえ、見落とす危険性のある病気だった場合、何の知識もない素人が重症だと気が付けるはずがない。

深澤は成瀬に対してタメ口ではなく、敬語を使っていることに気が付いた。



第3話

桜庭の過去。元々心臓が弱く、11歳の頃に心臓移植を施されている。はくおう会グループ会長が息子である桜庭を経営の勉強のために救命医を辞めるように説得しにくる。
立場上自分だけの命ではないと説得される桜庭であったが、自身の追い求める夢を諦められず会長を説得する。

本郷先生に小さい頃面倒を見てもらっていたこともあり、医師という存在の大きさを知った桜庭。
大人になって憧れていた人と同じ場所で仕事が出来るというのはそう簡単に叶うものではない。
まだまだ半人前の救命医だが、着実に成長していってほしいと思った。



第4話

ありのままの自分を受け入れてくれる人なんていない。だからきっと誰だって、理想の誰かを演じている。

高岡の回。
同期の中ではスキルもあり頼れる存在として強いイメージだった高岡。周りの評判を気にして、必死に勉強をし医者になった彼女は、周りも羨むようなステータスの彼氏である北斗と付き合う為に、夜勤の救命医として働くことを決めたと告白する。
そんな北斗が仕事の為に仲良くしていた宮園(松井愛莉)という女性が運ばれてくる。
松井愛莉の演技力が高くなっていた印象。嫌な女性役が合っていた感じはする。脆く綺麗なベールを一枚被った表面上だけ強い女性が似合っていた。

高岡自身も自分という存在意義を改めて認識出来たような回。朝倉との本音のぶつかり合いで成長した。

緊迫した状態と隣り合わせの過酷な現場で働くみんなの成長物語は、次回成瀬先生の裁判沙汰になっている案件の真相が明らかになる。




第5話

助かる可能性がほぼゼロの子供をたった1人見捨てなかった成瀬は、親に同意を求めて手術を決行し奇跡的に命は助けたものの、元気な状態に戻すという親との約束を果たせず、訴訟されていた。
親も親だ。医療に100%なんてないことくらい理解しておかなくてはならない。だが、それでも最愛で最も大切な人が対象者になった場合に冷静にいられる人は少ないのかもしれない。

訴えられている状態の成瀬のもとに、両親から虐待を受け、それから守る形で隣人に"誘拐"された子供が運ばれてくる。オスラー病という全身の毛細血管が異常をきたし、そのせいで色々な箇所から出血をしてしまう珍しい病気と診断された少年に脳出血がおこる。すぐにオペをしないと助からない状態だが、両親のサインが無いとオペは出来ない。
犯罪者になってもいいから助けて下さい、と覚悟を見せる女性に成瀬は応える。

監禁されていた少年を女性が助けなかったら彼は死んでいた。オペをしなかったら彼は死んでいた。
本当の両親はアパート家賃を滞納しており蒸発して行方不明。息子の捜索願いも出されていなかった。
このケースで隣人の女性が逮捕されるという道徳的矛盾がまだまだ法律の杜撰な部分を露わにしている。




第7話

同じ場所で働くものが全員同じ志を持っている訳ではない。

朝倉:ナイトドクターとして働き実績を積めば、人手不足に悩まされる中で働き方改革が求められている現状の医療業界で、いつか本当に救急医の未来を明るいものにしたい。

深澤:ナイトドクターとして一人前の医師になる。そしていつかは妹の病気を治せる医師になりたい。

桜庭:ビジネススクールで経営を学び、人だけに頼らないで、もっと医者が働きやすい環境や仕組みを整えて、病院をもっと働きやすい場所にしたい。言うなれば、医者を救う医者になりたい。

成瀬:もう一度脳外科医にチャレンジするか迷っている。自分にしかできない技術を身につけたい。

高岡:目指すは、女医のロールモデル。女医の結婚できなさそうなステレオタイプを払拭して、仕事も家庭も充実させる。若い女の子達に希望を与えるような存在になることで、医者を目指す若い世代を増やしたい。



 同じ場所で同じ時間多く費やすことで最初に抱いたそれぞれの印象が大きく変わったと話す朝倉。
 深澤は、ただのチキンだと思っていたが、本当は誰よりも愛情深くて根性あるやつ。
 成瀬は、自分のことしか考えていない冷徹な人間に見えて、本当はちゃんと暑いものを持っている。
 桜庭は、能天気で中身空っぽの軽い人間に見えて、本当は広い視点で色々なことを考えていて気も利く優しい人。
 高岡は、年下なのに生意気だが、本当はその分誰よりも真面目に勉強していて努力している。

最初のレッテルを剥がすことができたのは同じ時間を過ごし、みんなを知ることができたから。現職の夜勤のドクターに対する世間の目が厳しいレッテルにも同じことが言える。大きすぎる夢ではあるが、ちゃんと知ってもらうことで変えられないものはないと。日本の救急医療を本気で変えようとしている本郷先生に少しでも応えたい。朝倉が4人に話す内容は、空中分解をしていしまうのではないかと危惧していた私の不安を和らげてくれた。




第10話

めちゃめちゃ良い回だった。
台風直撃による影響で、大規模停電が発生し病院も非常用電源に切り替わる。停電による影響で処置が難しくなった患者達の受け入れ要請が各方面からやってくる
本郷先生が部下たちナイトドクターに、自分達が出来る範囲のことを考え、受け入れられるか判断を委ねたのが良かった。ドクターを始めとするスタッフ総動員でやれることを迅速的に考え行動することが求められ判断力に繋がる。休日であったはずの朝倉の大いなる力もあり、なんとか電力復旧まで対応してみせたナイトドクター達。
嘉島先生が朝来院した時のシーンが丁度良いアイロニカルなテイストが面白かった。

本郷先生の夜間救命救急センターのナイトドクターに対する熱い想いも聞ける良い回だった。

そしてちゃんと第11話まであることに喜びを感じている。。




第11話

各々の成長が見れた回。そして力を付けた皆が全国へナイトドクター制度を普及するために各地へ散らばる別れ。
「場所は離れていても同じ空の下繋がっている」
よく聞くあるあるだが、本作は丁寧に関係性を描き、絆が深まっていく様子が伝わってきた。

まだまだだが、見違える程逞しくなった深澤。第1話を観た時では考えられない行動力を持ち合わせている。
ナイトドクターのお兄ちゃん的存在の成瀬は、笑顔が増え表情が和らいでいく様子が素敵だった。
根気強く真面目な芯の通った高岡。立派で頼もしい医師にどんどん近付いている。
母親からも認められた桜庭は、自信に満ち溢れた様子から微塵も体の弱さは感じなくなった。
誰よりも責任感が強く、人を助けたい気持ちが強い朝倉は、間違いなく"ナイトドクター"を背負って立つ人間になるであろう。


こんな時期だからこそより一層、医療従事者に対する畏敬の念が強まる中で、作り物ではあるが医師たちの葛藤苦労を本作で観られて良かった。
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