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コントが始まるのAPOのレビュー・感想・評価

コントが始まる(2021年製作のドラマ)
3.9
コント自体はお笑いとしていうと正直面白くはない。毎回ストーリーに基づいたコントをしている為、導入と完結の役割を担っている。それが分かったら毎度冒頭のコントから集中して観ようという気になる。

コントこそ面白くはないが、ドラマとしては面白い。


(以下ネタバレ含む)





ドラマチックな大きな展開や大どんでん返しなどはなく、サクセスストーリーを歩めなかった主人公達を描くリアリティのあるヒューマンドラマだった。

初めトリオ解散の流れにストーリーが進んでいった時は本当に解散して別々の道に進むとは、観ていて思わなかった。最後は解散を食い止めて、3人でコント芸人として売れる夢を追い続ける形で終わるものだと勝手に想像していた。しかし、脚本は現実的だった。約10年間3人で突っ走ってきた道のりに終止符を打ち、それぞれの新たな道へと走らせた。
本作は兎に角 "地味" 。全く悪い意味ではなく、我々が生きる現実世界のリアルを、売れずにもがく芸人のリアルを垣間見れた気がする。


登場人物も大きく魅力的な人ばかり。
先ず、マクベスの3人。それぞれの役者陣がそれぞれのキャラクターにマッチし過ぎ。この関係性は一生もの。羨ましい。
次に、マクベスの大ファン中浜里穂子(有村架純)。本作において華という役割も勿論ある。だが、それ以上にマクベスを心底想う彼女の気持ちがこの物語には重要。マクベス3人を最後まで支えたというのもあるが、里穂子自身が人生に息詰まる中で生きる支えとしてマクベスの存在があった。そしてマクベスが解散してもずっと応援すると。それは多分自分自身の為に、という部分も大きいと思う。この社会に生きる上で、私も "マクベス" を持ち続けたいと思う。新しい "マクベス" との出逢い、そして既にある "マクベス" を大事に生きていく。そのようなことを教えてくれた里穂子先輩だった。良いキャラクターだった。
そして、里穂子の妹、中浜つむぎ(古川琴音)。下記にもメモしてあるが、彼女は心優しい強い人間性を持つ女性。だが、強がり過ぎて客観的に観ていて少し心配にもなる。でも彼女からは、そんな "強がり" も人生を上手く生き抜く上でとても大切な要素のひとつだ、と教わった。彼女の周りへの影響度は計り知れない。本作において価値ある役割を果たした。
最後に(というか全員のことを綴れないので)、マクベス3人の高校時代の恩師 真壁先生(鈴木浩介)。彼はマクベスの名付け親でもあり、密かに春斗と潤平が芸人になる背中を押してくれた"親父"。途方もない夢ばかり追わずに現実を見なさい、と告げる高校教師はドラマの世界ではある種悪者扱いされがち。真壁先生の場合は10年間マクベスを走らせたのち、3人を思って解散にも反対しなかった、むしろ賛同した。20代の10年間と、この先に待っている10年間とでは苦しさが段違いだ、と言うようなことを教えていて、バランスの取れた優しい人間だなと心底思った。
そしてやはり最後の最後に、瞬太のバ先である焼き鳥屋の大将(伊武雅刀)。我が子のように瞬太を始め、マクベス3人を愛し、時には厳しく、時には懐深く受け止める姿が魅力的だった。最終話、瞬太が旅立つ前の解散打ち上げ会の際、「身体だけは気を付けて、帰ったら必ず顔出せよ。」という台詞がある。こういう人が言うこの気遣った言葉ほど心に響いて残るものはない。
まだ潤平の彼女 奈津美(芳根京子)など魅力溢れる人は出てくる。
兎に角マクベス3人の周りには素晴らしい人間性を持つ人で溢れている。


本作のオチも個人的にはクスっと笑えて最高だった。
春斗の次の道が決まった。ラーメン屋に向かう修理屋の男の姿が春斗だった。第1話の「水のトラブル」のコントを彼は続けていた。


OST 松本晃彦
"出囃子Rock'n Roll"
コント入りの曲。このドラマ始まった!とギアを一つ丁寧に上げてくれた、そんな曲。

"Yes We Do, Just Be Good"
"Beautiful Days"
Inhyeok Yeo(ヨウ インヒョク)のアカペラが心地良い。

ED曲
あいみょん "愛を知るまでは"


〜メモ〜

第二話
瞬太の春斗と潤平に対する仲間愛、マクベス愛が大きくて好感しかない。

順平が舞台コントにてアドリブで謝罪したのも男同士の仲直りみたいだった。
ハマると何でも深掘りせずにはいられない中浜のキャラクターが絶妙に本作に効いている。
大して人気も出ないトリオの大昔のインタビュー記事やブログなども隈無くチェックしているオタク度合いが堪らない。しかもそんな彼女を有村架純が演じているのがまた堪らない。


第四話
つむぎ回。
つむぎの周りには助けを求めている人が自然と集まってくる。それはつむぎの人柄たる所以のこと。困っている人のことは放っておけない他者に対する優しさが底知れないつむぎに心温まる。
姉の中浜さんはもう少し自分のことも気にかけて優先し、大切にしてもらいたいと、いち助けられた側の人として、また姉として思う次第であった。
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