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スモール・アックスのKUBOのレビュー・感想・評価

スモール・アックス(2020年製作のドラマ)
4.5
今日は、スティーヴ・マックイーン監督作『スモール・アックス』第1話『マングローブ』を最速試写会にて鑑賞。

舞台は1968年、ノッティングヒル。自分の店「マングローブ」を開店したフランクは人生最良の日々を迎えるはずだったのだが、黒人を目の敵にしている地元警察は、嫌がらせに何度も店に立ち入っては不当に黒人仲間を拘束、店内を破壊して回った。

「マングローブ」は地域の黒人たちの憩いの場であり交流の場であったことから、フランクの惨状が逆に黒人の結束を呼ぶことになり、彼らは警察署まで “Hands off black(黒人に手を出すな)” のプラカードを掲げてデモ行進を行うのだが、そこで多くの黒人仲間が逮捕され「暴動を扇動した」という嘘の罪状で訴えられてしまう。

まずは1968年という時代。昨日見た『ベルファスト』の前年。同じUKでの出来事なのだが、アイルランド 内の紛争と、黒人に対する差別や暴力と、宗教間、人種間と争いの根は違えど、この頃いかに人間が暴力的だったかを感じさせられる。

また「ブラックパンサー」。「え? アメリカじゃないの?」って思ったが、イギリスのブラックパンサーは名前は同じでも、アメリカのそれとは違うものらしい。作品内でも非暴力だったし。

この「ブラックパンサー」の女性を演じているのがレティーシァ・ライト。映画『ブラックパンサー』のシュリ、かつ次回作『ワカンダ・フォーエバー』の主役なのだから、どれだけ「ブラックパンサー」に縁があるのか。

後半は法的劇となり、『シカゴ7裁判』と同じノリ。奇しくも、この2つの裁判は同じ1968年に行われ、こちらは「マングローブ9」と呼ばれた。

白人社会の法廷で、白人の裁判長が、白人が圧倒的に多い陪審員が有罪・無罪を決める。困難な審議の流れの中で、あるポイントで形勢が逆転してから俄然おもしろくなる。

実話に基づく作品なのだから、このまだ偏見や差別が蔓延する社会にも、人種を超えた正義はあったと思えるところがうれしい。

本作は配信を前提にしたドラマ作品の第1話ということだが、独立した作品であり、劇場用映画と何の遜色もない素晴らしい作品であった。さすがはスティーヴ・マックイーン監督といったところか。

機会があれば、2話以降の作品も見てみたい。
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