田島史也

坂道のアポロンの田島史也のレビュー・感想・評価

坂道のアポロン(2012年製作のアニメ)
4.0
青春時代の不器用な恋愛が、心の葛藤と剥き出しの感情と共に描かれる。必ずしもジャズがメインという訳ではない。

いやぁ、あまりにも展開が早い。直ぐに相手を傷つけ、仲違いし、そして仲直りする。
ここまで自分の気持ちに素直で、それを考え無しに相手にぶつけてしまうキャラが揃っている作品も珍しい。少し過剰にも思えるが、心が未熟な高校生たちのストーリーとしては、意外と納得感がある。

結局、それぞれの恋愛は有耶無耶になり、うまくは行かないというのが、高校生の儚き恋愛そのものという感じで、良かった。最後、かなり駆け足で、8年後という時間が無理やりに解決させてしまった感は否めないが、高校時代ってこんなものなのかもなぁと思う。本作で描かれ、語られた量が実際の経験とも合致する作りになっていた。

最後駆け足であっても、12話で終わってくれてよかったなと思う。3人の関係性を描く以上、これ以上長ければと悠長になってしまっただろう。

時代性が感じられたのも良かった。ビートルズの隆盛や学生運動の勃興など。どこか別の世界のお話ではなく、数十年前の日本の佐世保という町を舞台としたことで、青春を描くありふれた物語が、重厚感を与えられたように思う。

「坂道のアポロン」という題だが、坂道があまり主張されなかったのが良かった。ささやかに、物語に添えられる感じ。あまりに主張されると、狙いすぎてるなぁと感じ冷めてしまうから。

BLUE GIANTはジャズによる成長譚、坂道のアポロンは青春withジャズという感じでかなり違うのだなと。しかし、大事な舞台の直前に主人公の仲間が事故にあってしまうという構成は完全一致していた。

体育館に人が集まるシーン、冴えない男子がピアノで輝くシーン、電車を追いかけるシーンなど。ベタベタの演出が目立ったが、本作こそがこれらをベタな演出にした作品のひとつなのかなと思うと、アニメという文化の歴史を感じずにはいられなかった。
田島史也

田島史也