<概説>
人間の世界とクマの世界の間には大きな壁がある。
断絶の壁と呼ばれるソレを越えるには代償を払わねばならず、その代償は己の好きという酷なもの。しかしてこの壁を越えてきたクマが巻き起こす旋風は、どのような結末にたどり着くのか。奇才幾原邦彦による百合異類婚姻譚。
<感想>
幾原邦彦監督には『輪るピングドラム』で完全に惚れてしまったのですが、相変わらず本作もぶっ飛んでいます。
異類婚姻譚×ガールズラブロマンス
この時点で既に破壊力抜群なのですけれど、そこに更に社会風刺をねじ込んでくるのが、らしい。
透明な嵐を起こす没個性的な群衆。そこに個はなく思考もなく、あるのは電子媒体における文字列のみ。そんな内実のない自分に気がつきたくないから常に攻撃の対象を求める、同じような大衆とともに。
『ピングドラム』と比較してみると社会風刺の面が強すぎたかなというきらいはありますが、それはそれで良。
3話までにモチーフが人魚姫ーー御伽噺ではという目星もありましたから、本筋の収束がデウスエクスマキナ頼りなのは十分許容範囲でしょう。
むしろ変にひねってめでたしめでたしで終わらない童話があるなら、それはポップコーンを全力投球するような駄作です。
本当にめでたしめでたし。お後がよろしいようで。さああそこで鼠が跳ねていますよ。