三樹夫

魔法少女まどか☆マギカの三樹夫のネタバレレビュー・内容・結末

魔法少女まどか☆マギカ(2011年製作のアニメ)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

すごく久しぶりに再視聴。ステレオタイプな魔法少女もの像を逆手に取った展開の数々で視聴者のソウルジェムを真っ黒にした本作。当時ブイブイいわせていたシャフトと虚淵玄の脚本、キャラデザは蒼樹うめ、イヌカレーの演出と色々な要素が上手く組み合わさり次の話が気になる、観ていて引き込まれるアニメとなっている。ミームのしやすさからネットとの相性も良かったように思う。3話のマミ死亡で暗黒魔法少女ものへと変容するが、1話2話の段階でも、建物や室内がどこの世界かわからないアンリアルで不安感を覚え、すでに不穏な空気があると、シャフトの特徴的な演出も作品の雰囲気づくりにハマっていたし、すべてのパーツが上手く組み合わさったアニメだ。
何と言ってもアニメを代表する害獣、邪悪な営業マン、女衒のキュゥべえが印象に残る。再視聴でこの害獣の狙いをあらかじめ知ったうえで観ると、まどかを魔法少女にしたくて必死に営業かけてて笑える。僕には感情がないとかほざいていたが、嘘つけ絶対悪意があるだろ。キュゥべえには、自称私は合理的な人間みたいなこという奴に対する腹立たしさを覚え、特に後半からはこの害獣に心を動かされっぱなしだ。マミがいなくなったからグリーフシード狙いのよそ者が乗り込んでくるかも、でも魔法少女じゃない者がそれを非難する資格はないよという対人論証をかまして、だから魔法少女にならない?という営業をかける、詭弁を投げかけ契約を迫る極悪テクニックに、魂はソウルジェムに外部化、魔女は元魔法少女という重要事項を言わずに契約結ぶ邪悪な営業マンっぷり、挙句訊かれなかったから言わなかっただけ、意見の相違とあたかもこちら側が悪いかのように煽ってくると、中々お目にかかれない害獣っぷりは楽しませてもらった。後半なんてひたすらまどかを煽ってて、もはやエンターテイナーの領域にいると言っても過言ではないが、心の底から死ねと思っている。人間が魂をソウルジェムに外部化されることに拒否反応を示す感情を理解できないとしても、人間は何か知らないけど魂をソウルジェムに外部化されることに拒否反応を示す生物と認識できることは可能なので、自称私は合理的感が凄い。観ていてキュゥべえに対する殺意は、無感情合理性のみとかほざいていながらも言動の矛盾点が多いため、開き直った詐欺師でしかないことから引き起こされるのだろう。

このアニメは、脚本があまり修正されなかったこともあり、虚淵玄の脚本の特徴及び良い点悪い点が分かりやすく出ている作品であると思う。虚淵玄は扇情的な展開で視聴者を引き付けることに長けている。その反面、やりたい展開に沿うように無理やりにでもキャラクターを動かすため、キャラクターが突然バカになることが起こる(『Fate/Zero』の蟲おじさんが突然首絞めだしたり)。このアニメで展開に無理矢理でも当てはめるためにキャラをバカにするというので一番割を食ったのはさやか。
キュゥべえがエントロピー云々と長々とほざいていたがあれは、魔女は闇落ちした元魔法少女だったという鬱展開をしたいのであって、エントロピー云々は何の意味もない。やりたい展開が作中にあることの説明にすぎない。
このアニメはライブで観るのが一番適しているというか、結構ガバガバなのでそこのところで気になる点も多い。ただしガバガバな部分に触れても、すぐに次の展開へ移行というようにガバガバなのが気にならいように誤魔化されてはいる。そのためライブで観るのが一番な作品だ。
このアニメはほむらが周りにちゃんと話しておけばそれで話が終わっていた。キャラクターがちゃんとコミュニケーションをとっておけばこんなことにならなかったのにというのが虚淵玄には多い。このアニメでは別の時間軸で、魔女は元魔法少女、ソウルジェムは魂の外部化という重要事項を言ったけど聞き入れてくれなかったからということになっているが、説明の仕方も、契約する前に表れ、キュゥべえに魔女は元魔法少女かどうか尋ねたり、ソウルジェムは魂の外部化かどうか質問してみろと言うことができたり、じゃあマミのソウルジェム持って100mぐらい離れてみなよとかやりようはいくらでもあったと思うが。これは言ったけど聞き入れてくれなかったという設定でしかない。そういう設定なんで無理なんだと誤魔化している。
数年前に、もし俺がプリキュアの脚本を書くならというツイートをしていたが、勿論自身のイメージを理解した上でのファンサービスというのは分かるのだが、あの不謹慎イキりが虚淵玄の本質の一面でもあるように思う。精神年齢が幼くまるで中学生。マッチョ主義の性悪説と、希望か絶望かの白か黒かしかない二元論、社会や人間に対する浅い洞察に冷笑系と、精神性が幼稚。ほむらが武器をどこから調達しているかというと、ヤクザ事務所という、まあニュースでヤクザがロケットランチャーとか手榴弾持ってたとかあるけど、発想が中学生で幼稚なんだよな。
まどかの母親の気持ち悪さは凄まじく、脚本家の頭の中にしかないキャリアウーマン像でかなりキツいキャラクターだ。11話でのまどかとの会話でてめぇとか~してんじゃねぇとか言ってたけど、自立した大人の女性を全く描けておらず、色々な深夜アニメから寄せ集めたみたいな成人女性となっており、ひたすら気持ち悪い喋り方の恥ずかしいキャラクターだった。
まだ鬱展開に突入する前の1話2話の日常的な会話はおっさんが考えた少女感がすごく、まどかとさやかのやり取りを見て仁美がもしかして2人は禁断の関係と言ったり、担任の未婚いじりがあったり(英語の授業のシーン)、認識と意識が前時代的なのは今観ると結構キツい。
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