静謐で大人っぽい良質な作品。BGMも最小限で、ギャグシーンもなく、いつも騒ぎを起こす天然キャラも出てこない。
ゆるキャンから甘さをすっかり取り除いたような。ほっこりというよりは切なさも伴いながらじんわりと生きる実感を得ていくような物語。
家族も友達もおらず趣味も目標もなかった少女が、ある時安いカブを買ったことでその世界を広げていく。
コネなし金なしの積み状況から、ふいの小さなチャンスを掴んだことで運が一気に開けていく様子が爽快。
ヒロインのお金のない生活は退屈なのかもしれないが、質素で正直で余計なものがなくかえって素敵に見えた。それだけにカブが一層輝く。
最初に友達になる礼子とは、絆を築きながらも一定の距離を保っていてべったり一緒にいるわけではないところも良い。それでいて、会話のなかで何気なく言った一言を必死に守ろうとするまるでアスリートのような根性と戦意が格好良い。
