たつや

機動戦士Zガンダムのたつやのレビュー・感想・評価

機動戦士Zガンダム(1985年製作のアニメ)
3.8
作品としての完成度はファーストガンダムには遠く及ばない。シリーズ構成やストーリー展開が下手なので展開がやたらと行き当たりばったりに感じてしまうし、どうしても80年代のバブリーな空気感が出てしまうためファーストガンダムにあった戦争の空気感は本作からは感じることはできない。

しかし良いところも結構ある。モビルスーツのデザインは明らかにファーストガンダムより洗練されており、特にガンダムMk-Ⅱとスーパーガンダム、キュベレイのデザインはディテールの複雑さとシンプルな造形が両立していて素晴らしい(パイロットのエマ中尉とハマーン様も大好きです)。可変モビルスーツというアイデアにも驚いた。なるほどこれならミノフスキークラフトを積まなくても重力下で空中戦闘を行えるわけだ。
キャラクター描写も結構面白い。赤いグラサンノースリーブのクワトロ大尉は無駄に筋肉が逞しい割に情けないシーンばかりで、見た目と相まって最早存在自体が面白い人になってしまったが、最終話でシロッコとハマーンから百式で逃げ切るシーンはカッコよく、最後の最後で格を落とさなかった塩梅は見事だった。輸送機やリックディアスで無双するアムロの前作主人公としての活躍っぷりも堪らない。ハサウェイの初登場(お前姉がいたのか!)やミライ・チェイミー・ハサウェイからのブライトへのビデオメッセージのシーンはまるで『インターステラー』の某シーンの元ネタのようで堪らなかった。このシーンは『閃光のハサウェイ』3部作が完結した後に再見すると精神に滅茶苦茶効いてきそうで楽しみである。
全体的にキャラクター描写はかなり充実していたため、ラスト3話くらいの喪失感が凄い。カミーユがナチュラルにだんだんおかしくなっていくところも怖いし、まるで在庫一斉処分のように次々とメインキャラクター達が命を落としていくので観ていてひたすら辛い。そしてラストがカミーユの精神崩壊とは…。本作を作った人間には人の心が無いのか?果たして宇宙世紀に救いはあるのだろうか…。
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