ユーライさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

乱れる(1964年製作の映画)

4.5

塩田明彦「映画術」から。もう本当に書かれている通りだが、高峰秀子は橋を渡らない女として設計されている。酒屋の狭っ苦しい家屋しか殆ど映らない本作にあって、ひたすら加山雄三から逃げ続ける。共に歩かず一歩先>>続きを読む

フラグタイム(2019年製作の映画)

5.0

百合映画オールタイムベスト。パンツをめくってタイトルバック、下品な『リズと青い鳥』。学校で鬱屈している陰キャとクラス一の美人&優等生のカップリングは定番だが、「時間停止」という青春が有限であることを表>>続きを読む

ヘルドッグス(2022年製作の映画)

4.0

久々のモード全開かと期待した。別に日本映画の革命でも何でもないいつもの原田眞人。宣伝の雰囲気から邦画が横文字でノワールと謳って見せる時特有の痛々しさが散見されるが、それは邦画の問題ではなく原田眞人の問>>続きを読む

夏へのトンネル、さよならの出口(2022年製作の映画)

3.3

酷な表現をすれば「AIに新海誠と大林宣彦を学習させて出力した」くらいに物語が無味無臭過ぎる。ありきたりの域を超えて、フリー素材で構成されたような味気無さ。別に逆張りをやれば偉い訳でもないが、一から十ま>>続きを読む

GONIN サーガ(2015年製作の映画)

5.0

「いい気なもんだぜ。俺達は糞と小便に塗れてるってのによ――」。ひたすら降りしきる雨。ネオンと合わせて象徴的なモチーフを石井隆は自ら「死に接近するため」と語っているが、結果的に遺作となった本作が一番死に>>続きを読む

グッバイ・クルエル・ワールド(2022年製作の映画)

3.0

冒頭、訳ありそうな男女と金と犯罪をモンタージュしながら、お洒落洋楽をBGMに「まぁまぁ皆仲良くやりましょうよ」「うるせぇジジイ」殺伐としながらもどこかウィットがある会話がなされる。これこそ観たい映画だ>>続きを読む

ブレット・トレイン(2022年製作の映画)

3.5

伊坂幸太郎の小説は全く読んだことがないんだけれど、巷で言われているような作風が何となく理解出来た。中学二年生のプロットにいちいち回りくどい理屈付けをしながら、しかもその「伏線」がいくら何でも雑に過ぎる>>続きを読む

(2019年製作の映画)

3.0

漫画なら可能なリリシズム溢れる告白の台詞も、実写だと安い演劇のような段取りが見えるやり取りにしかならない。増村のように殊更飛び道具として「言葉」を使わないと中途半端になるのでは。劇伴も相まって感情を誘>>続きを読む

黄金を抱いて翔べ(2012年製作の映画)

4.0

二〇一二年の時点から邦画大作としてどれだけ“映画”をやれるか果敢に挑戦していて、そこだけでも評価出来る。説明を排したゴツゴツとしている手触りの再現。髙村薫の特徴である執拗なディティールの積み重ねは時代>>続きを読む

GHOSTBOOK おばけずかん(2022年製作の映画)

4.6

いつもの山崎貴かと舐めていたら全然悪くなかった。『リターナー』以来……ではなく『寄生獣 前編』以降で一番では。この人は現代日本が何かしらの力で異化された風景を撮るのが上手い。普通に端正な映画も作れる。>>続きを読む

キングダム2 遥かなる大地へ(2022年製作の映画)

3.5

前作の欠点をそのまま受け継いでおり、映画としては相変わらずガタガタ。にも関わらずマシに見えるのは、思い切って合戦だけで通し切っていることによるが、所詮『怒りのデス・ロード』のパチモノにしかなっていない>>続きを読む

湖のランスロ(1974年製作の映画)

4.1

初ブレッソン。理解不能ではなくむしろ傑作であることは分かる……が劇的さを排した作りが眠気を誘ってしょうがない。それは凄惨な殺し合いをどこか間の抜けた距離感で捉えている冒頭から始まっている。誇り高い騎士>>続きを読む

神は見返りを求める(2022年製作の映画)

4.8

これまでの吉田恵輔作品から頭一つ二つは抜けている傑作。これまでは主に物語の力で興味を持続させていたが、今作は「見たくないものを無理やり見せられる」映画的な魅力を獲得してしまっている。『空白』でもカット>>続きを読む

天使のはらわた 赤い眩暈(1988年製作の映画)

5.0

初監督作にして以降の作品に見られるモチーフが既に登場している。死体と同伴するのは『ヌードの夜』、バブルの影響で落ちぶれた男の狂気をさらに拡大していくと『GONIN』になる。もちろん雨やネオン、超現実的>>続きを読む

ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)

3.7

こういう周囲と馴染めずに鬱屈していく青年の映画は我が国にもゴロゴロしているが、銃による武装に傾倒していく、そしてフィクションであることを公言しながら実録の要素がある点で『丑三つの村』が当然のように思い>>続きを読む

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)

3.8

庵野秀明ではなく樋口真嗣の映画。物議を醸した実写版『進撃の巨人』から七年を経たが、良くも悪くも全く変わっていない。『シン・ゴジラ』と同様やたらと監督が多い中、どの程度の裁量が割り当てられているのか不明>>続きを読む

シン・ゴジラ(2016年製作の映画)

5.0

当時から人死にを画で見せたがらない姿勢には不満が残るが、それでも完璧というか成立自体が奇跡みたいな映画。オタクが思い描いた理想のゴジラ映画を形にしてしまっている……が故に五年以上実写による国産を出しに>>続きを読む

ULTRAMAN(2004年製作の映画)

4.6

当時の宣伝を見ると、なかなか挑戦的な文言で「大人向けのヒーロー映画を!」と書いてあるが、何回観返してもかなりの精度で達成しているように思う。ただ、明らかに意識下にあるであろう「ガメラ三部作」のような特>>続きを読む

ガメラ3 邪神<イリス>覚醒(1999年製作の映画)

5.0

オールタイムベスト。怪獣映画のフォーマットを使って、1999年の世界滅亡を不可逆の切迫感で描き出している。『1』『2』がパブリックな作風だったのに対して、一気に膿を出すように趣味を入れまくった感覚がた>>続きを読む

ガメラ2 レギオン襲来(1996年製作の映画)

5.0

前作は王道の復活を目指したら必然的にリアリズムに徹した作風になったが、今作はその方針をより突き詰め、一見さんの入りづらいハードコアな侵略SF映画となった。出てくる人達が皆博識な理系っぷり。「怪獣映画は>>続きを読む

ガメラ 大怪獣空中決戦(1995年製作の映画)

5.0

初めてスクリーンで、且つ久しぶりに観たのだが、エンドロールの「神話」で泣けてきた。個人的な事情もあるが、かつて信じたフィクションの理想形を自分達の手で作り上げる、という本編に現れている意志の結実と歌詞>>続きを読む

パリ、テキサス 2K レストア版(1984年製作の映画)

4.2

そのとき雄一郎は亀有署の会議室にいたのだが、蛍光灯の明かりだけが白々しい殺風景な空間と、安物のパイプ椅子に座っている疲れた中年男の姿が夜の窓に映っているのを、ただ眺めるともなく眺めながら録音を聞いてい>>続きを読む

(1954年製作の映画)

3.7

この「男女」の造形は、後年の多種多様なフィクションに影響を与えていると思う。聖なる白痴は欺瞞にしか映らないけど、これは単に天使化せず一歩は踏み込んでみせている。加虐性を持った男と被虐体質を持った女の愛>>続きを読む

ユンヒへ(2019年製作の映画)

4.0

時代によって離れ離れになるしかなかった二人のその後を描いた『夢の端々』。ただ、あちらが時々を象徴する事物を積極的に取り入れていたのに対し、こちらは具体を避けている感がある。説明を排することによってどこ>>続きを読む

卍 まんじ(1964年製作の映画)

4.5

増村特有の濃さがそのまま百合としての強さになっている。その濃さは某姫が仰け反るほどで、「裸を見せてくれないと絶交する」だの「名前を手の平に書き綴る」なんてそうそうない。間に男が挟まることにより関係性が>>続きを読む

港の日本娘(1933年製作の映画)

3.5

某本で紹介されていたので。Amazonプライムで観たのだが、まず後付けと思われる洒脱なBGMが陰鬱な物語と恐ろしく合っていないので消音で良い。画質が悪いので字幕を読むのも困難(表示時間が短い!)なら登>>続きを読む

旅愁の都(1962年製作の映画)

4.0

宝田明はプレイボーイにも関わらず、女性を点数付けしたり他の男性陣も容赦なく平手打ちを発動させているのだが、俗っぽいメロドラマにも関わらず何故か気品を損なわないのがかつての日本映画の懐の深さを感じさせる>>続きを読む

さがす(2022年製作の映画)

3.5

『岬の兄妹』がベストだったので期待との落差がある。とにかく「変わった事をやりたい」が優先になり過ぎていて、スケールを広げた結果手に余って暴走している印象。『岬の兄妹』は二人の世界に絞ったことによって監>>続きを読む

弟とアンドロイドと僕(2020年製作の映画)

4.7

監督の精神状態を心配したくなるような病んでいる感じが好き。というよりこれまで「男らしさ」にこだわってきた阪本順治の挑戦。中年にもなって「僕はここにいるのか」という中学生で卒業するような自意識に悩む姿は>>続きを読む

クラッシャージョウ(1983年製作の映画)

3.7

アニメーターが監督に挑戦した例の一つ程度の認識だったけど、普通に面白い。何より尺が二時間以上あるにも関わらず、作画がほとんど息切れしていないのは時代を考えると驚異的。ザ・安彦なアニメーションが全編を覆>>続きを読む

ウエスト・サイド・ストーリー(2021年製作の映画)

4.0

ミュージカルも61年版も未見、最低限の知識すらない状態で鑑賞。そもそもミュージカルについて知らないので、「適当に歌って踊って終わり」くらいの山あり谷あり具合なんだろうと思いきや、それとは真逆と言ってい>>続きを読む

大怪獣のあとしまつ(2022年製作の映画)

2.5

誰向けの映画なんだ。これまで特撮とは縁が無かった監督が得意分野であるコメディで挑戦、それなりに期待はさせたが予想以上に明後日の方向で落差が酷い。「空想特撮」に賭けて毒の含んだ風刺劇を期待すると緩さに唖>>続きを読む

さよならくちびる(2019年製作の映画)

3.8

「映画術」はバイブルだが、監督した映画を観るのは初めて。ロードムービーであるから、車内から捉えた風景が刻々と変わっていく様に合わせて関係性も変化していく。三者の組み合わせ、画面のポジショニングからサス>>続きを読む

劇場版 呪術廻戦 0(2021年製作の映画)

3.5

作画はTVシリーズに引き続き安定し動きまくるが、一本の映画として観ると原作の構成をそのまま団子にして繋げている歪さが目立つ。単話を連続上映しているような。ラストバトルも複数同時進行によって流れが寸断さ>>続きを読む

マトリックス レザレクションズ(2021年製作の映画)

4.5

『シン・マトリックス』あるいは『マトリックスはつらいよ お帰り ネオさん』。作家がほとんどヤケクソな自己言及を経て、物語を定義し直し自分の手に取り戻す。「もう一回始めればいい」というポジティブにやられ>>続きを読む

マトリックス レボリューションズ(2003年製作の映画)

2.5

何つうか、起こる出来事が全部どうでもいい。1作目の売りは「ビジュアルショック」と「現実と非現実が曖昧な酩酊感」にあったのにどっちも放り投げている。個性豊かなキャラクターや緻密な設定で固めた作品ではどう>>続きを読む