公開当時は作品としてのトリック(ギミック)ばかり取り沙汰されたが、時間を経た今観るとよくできた小品という感じ。
トリックにしても、実は勘のいい人なら序盤で気づくような控えめな作りになっている。
「よ>>続きを読む
長尺、セリフ過多、内容は地味。これだけ揃っていて飽きさせないというのは如何なることか?
リンカーンはとにかくよく喋る。が、それはセリフに拠る説明ではなく、ダイアログですらない。すべて「語り」なのだ。>>続きを読む
死の影に怯え次第に囚われてゆく少年、死に直面し気丈に立ち向かう少女、時代に押しつけられた死を受け入れられず漂う亡霊。難病メロドラマに倒れそうなモチーフに、優しくも崇高な死生観を帯びさせる、ガス・ヴァン>>続きを読む
アルデン・エーレンライクの投げ縄芸、演技指導するレイフ・ファインズとの噛み合わないやり取り、スカーレット・ヨハンソンの目に鮮やかな水中ショーなど、楽しいシーンは満載なのだが、この映画全体を貫くモチーフ>>続きを読む
もっとハードボイルドなものを想像していたが、ヘタな怪談みたいなお話だった。細かなカット割、場面転換でテンポよく状況世界に引き込んでいく手際はなかなか秀逸。
母イザベラ・ロッセリーニの存在、サラ・ガド>>続きを読む
風を受けてメーヴェがふわっと浮き立つ感覚だとか、腐海の底に流砂が落ちていく触感だとかをアニメーションという手段を使って完璧に表現した。そうした細部にこそ真髄があり、世界観を支えているのだと改めて思う。>>続きを読む
珠玉のキャスティング。ジョン・ウェインはいつも通り粗野で優しく、ジェームズ・スチュアートはここでもまたパラノイアックなまでに正義と理屈の闘士を演じる。単に豪華共演というだけではない。二人の掛け合わせが>>続きを読む
壮大なサーガの波間に飲み込まれた名もなき人々を拾い上げる、という役割であろうとすることに実に忠実。主張は薄いが、その意味で誠実な作品だ。
フェリシティ・ジョーンズという女優のよさは実は自分にはあまり>>続きを読む
作劇構成が鮮やか。二人が入れ替わる構造が次第に解っていく過程には幸せさを感じるし、だからこそ終盤に至り切なさが喚起される。
が、都会は過剰に都会として、田舎は過剰に田舎として描かれることや、あのよう>>続きを読む
冒頭20分、病院の屋上での二人だけのダイアログを見せ切ってしまう演出力は圧巻。そして、本上まなみがあんなにも鮮やかに軽妙に会話劇を演じられることに驚く。
あんなに美味そうなおはぎがたくさんあって、夕>>続きを読む
端正な画面構成、手の込んだカット割りは演出の教科書のようだ。老人は、美しき嫁と若き男女3人組に伴われた車旅行を通して、苦いこともあった人生を振り返り、幼児に還ってゆく。静かな幸福感が漂う余韻が心地よい>>続きを読む
インテリジェンスの職業映画、というに相応しい地味さと堅実さ。呆気にとられるクライマックスの一瞬のために、終始淡々としていたのではないかとすら思えてくる構成の妙。殺伐とした世界に、人間味と華をもたらすレ>>続きを読む
実話ベースながらも作劇としては王道。F1という特殊世界(しかも一昔前の)を丹念に描き込もうという志向が、作品に魂を入れる。そして完璧なキャスティング。ヘムズワースもブリュールも、名の通った俳優というわ>>続きを読む
2つの家族で構成する、変則『クレイマー、クレイマー』。
世の中には2種類の男が存在する。妻の死を受けて、人前で泣ける男と泣けない男だ。泣けない男キヌガサ・サチオは、泣ける男とその幼い子供達と出会い、>>続きを読む
真面目だ。切実さは伝わる。ただ、彼の境遇が個別の事例として哀しすぎて、戦争の悲惨さを問うという一般論としての主題から乖離してしまうのかもしれない。どこかちぐはぐ感を覚える。
脚本家が演出した映画、と>>続きを読む
北の地での暮らしの厳しさや侘しさを画面に定着させることにかけては、この監督の右に出るものはいないが、ヤマ場だけがつながれていて、前触れも余韻も無い感じ。
近親情事にしろ、殺害現場にしろ、男色未遂にし>>続きを読む
中国語・英語・日本語ちゃんぽんで飛び交う会話、粗大ごみの集積所からお宝を探し出す件り(クレーンに吊るされたアップライトピアノ越しの画が秀逸)やイェンタウン・クラブでの即興「マイ・ウェイ」セッション。混>>続きを読む
女は誰もが目を惹かれる美女、男は一流レーサー、という時点で相当鼻白む設定だが、一切の衒いもなく押し切る力強さには感服。
カラーとモノクロの使い分けなど小賢しさも感じるが、ところどころでハッとするよう>>続きを読む
映画を観て、原作の良さを再認識する。ドブ臭い鰻、釘針、義手…作為的と思われても仕方がないような事物を自然に受け容れられてしまうのは、光石の怪物性に苦しみながらも強かに受け流す田中、篠原、木下、三代の女>>続きを読む
状況にいきなり引き込む導入の鮮やかさと、スペンサー・トレイシーの顔芸は秀逸。が、ほぼ会話劇だけでこの尺はややツラい。米国の上流家庭が映画の舞台になる、最後の時代の作品とも言えるかもしれない。
金にも女にも酒にも時間にもだらしなく、失敗ばかりの主人公だが、どこか誠実さを感じさせるのは、音楽に対する一途さを貫いているから。こういうキャラクタ造型を一貫するのは案外に難しい。終盤はわかっていても切>>続きを読む
新幹線の運行管理は、今見ると相当アナログでびっくりするが、手作り感が程よく緊張度を高める。車内での乗客のパニックぶりが一本調子で、そこに工夫があれば。滑り出しでは群像劇を期待したのだが…
時代に取り>>続きを読む
話を面白くしようという色気がまったく感じられない潔さが心地いい。
妨害や抵抗が描かれていないわけではないが、それがドラマを形作るほどではない。つまりこれは「巨悪」を暴く過程を描いたものではなく、無自>>続きを読む
人生は複雑であり、単純だ。同じ茶の間で、ベートーベンもテレサ・テンも聴けてしまうのだ。ただそこに居て、動いて喋るだけで、そのすべてを飲み込んでしまう。樹木希林は人間国宝。
カルピスを凍らせた手製アイ>>続きを読む
田舎娘が都会に染まり、持ち前の聡明さを保ちながら次第に自信を身につけて綺麗になっていく。が、何時まで経ってもどこか垢抜けなさをも残す。そんな絶妙に魅力的な女性像を、印象深い薄いブルーの瞳のシアーシャ・>>続きを読む
デジタル修復版にて再鑑賞。『晩春』の換骨奪胎と言い切ってしまってよいと思うが、『晩春』のゴツゴツ感と比べると数段洗練されている。どっちも魅力的なのだが。
主人公ペアを父娘から母娘に変えたことで、近親>>続きを読む
「助けて、治して、海に返す」に象徴されるお仕着せのパターナリズムに、それぞれに障害を抱えた「壊れ者」たちのダイバーシティ共生を対置させるあたりにピクサーの志が垣間見える。箱庭アドベンチャーは『トイ・ス>>続きを読む
軍艦マーチにあわせて敬礼しながら体をくねらせてリズムとる風呂上がりの岸田今日子、楽しげなその姿が脳裏から離れない。
その岸田を、あろうことか娘や息子たちに対して「(死んだ)母さんに似ている」と溢し>>続きを読む
あまりに古典的なプロットで、こんなんヒッチコックが撮ったほうが百倍面白いわ!と思いながら眺めていたが、最後の一捻りは皮肉屋アレンの真骨頂か。
それでもコーエン兄弟の真似事のようにも思えてしまい、アレ>>続きを読む
実話、美談であることや真相を探るミステリは本質ではなく、これは「決断と責任」を描いた物語だ。その点でとてもイーストウッドらしい。
と言いつつも、ハドソン川への着水、それに続く脱出と救出を再現したシー>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
戦災も震災も同じ括りで捉える国民性からすれば、謎の巨大生物に防衛出動で対抗することも全く違和感はない。
政治風刺劇(パロディ)として出色の出来。お飾りの名誉職でメンツをぶつかり合わせることしかできな>>続きを読む