なまくらウォッチメンさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

なまくらウォッチメン

なまくらウォッチメン

ステレオ/均衡の遺失(1969年製作の映画)

3.7

実験によりテレパシーを獲得した人間たちを描く話
言語を介さず思考を共有するテレパスたちはオムニセクシャルを自覚していくが、それでも共同体、延いては社会の中での対立からは逃れられない
クローネンバーグは
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クライム・オブ・ザ・フューチャー/未来犯罪の確立(1970年製作の映画)

4.0

とある疫病が蔓延し成人女性が死滅した世界が舞台
性の均衡が崩れた世界で種を保つために、生き残った者たちが生殖の均衡を崩す実験を始めていく
後の監督作のようなドラマ性は無いが、その分変態性やフェチシズム
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セレブレーション(1998年製作の映画)

4.3

父親の還暦祝いの催しで、長男が自身と自殺した妹が父親にレイプされた過去を暴露したことから始まる地獄絵図
何を言ったかでなく誰が言ったか、で簡単に黙殺される様は同監督作の『偽りなき者』と通ずるものがある
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オオカミの家(2018年製作の映画)

4.3

コロニア・ディグニダ(ナチス残党による共同体)の教育ビデオという体で作られたストップモーションアニメ
村から逃げ出した少女が豚2匹を人間に変え生活を始めるも、コロニアで育った少女はコロニアの再生産を行
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怒りのキューバ(1964年製作の映画)

4.2

面白い
革命前のキューバを舞台に、アメリカと政府から搾取され続ける民衆の怒りが爆発するまでを描くオムニバス映画
ドラマパートは正直退屈だったが、縦横無尽に動き回るカメラがキューバの人々と空間を時代の流
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サンライズ(1927年製作の映画)

4.3

面白い
サイレント映画最高峰と呼ばれるのも納得の大傑作
話自体はよくある恋愛映画だが、無駄無く台詞に頼らぬカット割と、ムルナウらしい幽玄的かつ表現主義的な画作りがとにかく素晴らしい
動線設計も見事で、
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私は殺される(1948年製作の映画)

4.5

面白い
自身が殺されることを知った主人公が、電話伝いに第三者の回想の数珠繋ぎにより真相を追っていくサスペンス
「なぜ殺されるのか?」という理由が徐々に判明していく為、回想続きでも話が停滞せずノンストッ
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都会の牙(1949年製作の映画)

4.2

面白い
何者かに毒を盛られ、余命2日と宣告された男が自力で犯人を見つける為に捜査するフィルムノワール
文字通りが時間が残されていない男が暴力も辞さず死に物狂いで奔走する為、導入部のスローさを除けば展開
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廃墟の群盗(1948年製作の映画)

4.0

全体的にはそこまで好きな映画ではなかったが、クライマックスの第三者視点で見せる銃撃戦が良かったので満足
『ソナチネ』に近い感じ

マルタ(1974年製作の映画)

4.2

親から経済的にも精神的にも自立できなかったマルタが父親の死をきっかけに結婚するも、実は相手がモラハラ男で愛の隷属関係を築いてしまう話
マルタの被害妄想や親からの飼い殺し等、序盤から既に救いが無い

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マリア・ブラウンの結婚(1978年製作の映画)

4.2

面白い
戦時〜戦後の西ドイツを舞台に、主人公が自身の能力を活かし、言語や人種、夫婦、不貞といった障壁を前にサバイブしていく話
女性だけでなく、男同士の友愛的な描写があるのも良かった
他の監督作とは異な
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コロニアの子供たち(2021年製作の映画)

3.6

面白くなかった
サブプロットであるコロニア・ディグニダの内情を描くパートは『1984』的で良かったが、主軸の主人公周りの話がつまらなすぎる
というか主人公の人物造形が没個性で見所が無い
あのラストは上
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タイラー・レイク 命の奪還2(2022年製作の映画)

3.9

散々言われてるようにドラマ部分がつまらないのと終盤は確かに盛り上がりが欠けていたが、中盤の列車アクションと高層ビルアクションが最高だったので個人的には満足
目玉の刑務所での乱闘よりこちらの方が情報が整
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らせん階段(1946年製作の映画)

3.8

序盤こそヒッチコックのようなトリッキーな演出やサスペンス性があり面白かったが、そこからの屋敷の内情を見せるパートが思った以上に地味で退屈
見せ方次第では『暗くなるまで待って』や『見えない恐怖』のような
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殺人者(1946年製作の映画)

3.8

保険調査員が無抵抗で殺された男の事件を不審に思い捜査をしていく回想形式のサスペンス
冒頭の殺し屋のパートと保険屋がチンケな保険金を回収し美味い思いをするオチは良かったが、ひたすら回想に次ぐ回想で無駄に
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セールスマンの死(1951年製作の映画)

4.1

面白い
老いが迫りセールスの仕事が立ち行かなくなり始めた男のニューロティックスリラー×中年の危機でより父権主義的になった父親と息子の確執が広がる家族ドラマ
メイズルス兄弟の『セールスマン』やポール・シ
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白い刻印 アフリクション(1998年製作の映画)

3.4

『息もできない』と同様の家父長制が生む暴力の呪縛を描いているが、とにかく全体的に平坦な語り口で退屈
『タクシードライバー』になるのを避けたのだろうが、今作が主観と客観の両方の視点で語られる意図もよく分
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ビッグ・ボウの殺人(1946年製作の映画)

4.2

面白い
無辜の人間を処刑してしまった導入部から密室殺人を解き明かしていく中盤、そして誤認逮捕からのクライマックスまで一切無駄のないドン・シーゲル印
ピーター・ローレの複雑なキャラクター造形が単にミスリ
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殺し屋ネルソン(1957年製作の映画)

4.3

マッチョな裏社会で舐められた子男を描いた早熟のニューシネマとして超面白い
ケイパーもの要素を織り交ぜたノンストップの追走劇も見事だが、兎に角主人公の引き金が軽すぎる暴力描写が良い
ザラーはドン・シーゲ
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仮面の報酬(1949年製作の映画)

4.2

面白い
アクション的な見せ場だけで繋いでいくタイトさ、スクリューボールコメディのような軽妙洒脱で見ていて飽きない三つ巴カーチェイス、そして無駄がなくスピード感が途切れない編集捌き…
ドン・シーゲルの良
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食人族4Kリマスター無修正完全版(1980年製作の映画)

4.3

やっぱ最高に面白い
野蛮云々も大事だけど、映画作りの映画として本当によくできてる
この点ではオーソン・ウェルズの『フェイク』と同じ罪深い面白さを持ってる作品

EO イーオー(2022年製作の映画)

4.0

クレショフ効果(モンタージュされた映像の前後によって間のカットの印象が変わること)を多用し、観客にロバの意向の解釈を委ねる作りの映画かなと思っていたが、予想以上にロバ自身の演技(動き)や劇伴、SEとい>>続きを読む

ソフト/クワイエット(2022年製作の映画)

3.4

人種差別だとかフェミニズム関係なく面白くなかった
技巧的なワンカット撮影がどう見えても作品に制約をもたらす枷になってるようにしか思えない
途中でオチが分かり切ってる状態でダラダラ進む終盤も悪手
これな
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私、オルガ・ヘプナロヴァー(2016年製作の映画)

3.0

題材とか関係なくシンプルに映画としての出来が悪くてつまらなかった
途中からずっと早く終わってくれないかな、と思ったしランタイムも20分以上削れる内容
こんなに冗長に感じた105分はなかなかない

劇映
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TAR/ター(2022年製作の映画)

3.1

いつになったら面白くなるんだろう、と思ってたら終わってた
こんなの3時間もダラダラとやる話じゃない
同情的な視点と突き放しを両方入れた結果、中途半端な作りになってしまった印象
たびたびシーンの繋がりが
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ウーマン・トーキング 私たちの選択(2022年製作の映画)

4.0

一回目でほぼ全編寝るという失態を犯したので二回目観たが、それでも所々うたた寝してしまった
今作の主張は正しいしそこへのアプローチも良く出来てるが、会話劇としては正直退屈でテンポも良くない
ここは正直『
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aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

4.3

正直地味で面白くないし出来もそこまで良くないが、良い映画だった

ソフィア・コッポラの『SOMEWHERE』とプロットが似てるから引き合いに出されてるみたいだが、構造とか帰結は真逆
『SOMEWHER
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波紋(2023年製作の映画)

3.8

面白かったが、汚くないヴァーホーヴェンみたいな人間賛歌で正直物足りず
荻上直子の中では1番好きだった

ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー(2023年製作の映画)

3.7

面白かったが、あくまでゲームの映像化という点では成功してるが一本の映画としては及第点、という気がする

ゲームの映像化という点では本当によく出来てる
単にファンサービスというだけでなく、ゲーム内のアク
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聖闘士星矢 The Beginning(2023年製作の映画)

3.6

アクションはちょいちょいダサいながらもそこまで悪くはなかった
1番良いのがマーク・ダカスコスなのが変なバランスだが
展開とファムケ・ヤンセンのおかげでどうしても『X-MEN :ファイナル・ディシジョン
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鶴は翔んでゆく/戦争と貞操(1957年製作の映画)

4.3

話はよくある戦争によって引き裂かれる男女の恋愛映画だが、今作はとにかく撮影が素晴らしい
中盤にある二人が引き裂かれる様を物理的に表す演出も優れてるが、それぞれが身を置く環境自体が変化することで更に二人
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ペトラ・フォン・カントの苦い涙(1972年製作の映画)

4.4

リメイク版ではフォン・カントがただヤケになったようにしか見えなかったが、今作では自己完結型の愛情しか注げない人間として描かれていて良い
執事のキャラも今作の方が記号的でない実在感がある…と言うか、実質
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クリード 過去の逆襲(2023年製作の映画)

3.8

微妙だった
脚本の練り込みが甘く、ドラマの盛り上げが巧くいってなかったのが惜しいな

今作はアドニスが殆ど挫折を経験してないから、最後の決戦までの溜めが足らないんだよな
最後の試合の前にデイムの調子乗
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クリード 炎の宿敵(2018年製作の映画)

4.0

色々と要素詰め込みすぎかなと思うけど、ここは『ロッキー4』リスペクトと捉えると良い作品
『クリード』1作目が『ロッキー』1〜6まで全部綺麗に纏めてしまったからちょっと無理して続けてる感はあるが、2作目
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クリード チャンプを継ぐ男(2015年製作の映画)

4.3

『ロッキー』シリーズを全て包括しながらあくまで『クリード』としてのドラマを逸脱していないのが素晴らしいスピンオフ

ロッキーではない、クリードはクリードの、己の価値を証明して見せた