月丘夢路と芦川いづみの麗し姉妹が駆け寄る→きこしめしたオヤジふたりの抱擁、というマッチカットに爆笑。社宅の井戸端会議の賑わいをアヒルに喩えたコメディで、主婦連のかまびすしさが臨界点を突破すると、アヒル>>続きを読む
「山登りには最適だよ」って言われて靴を買った次のカットで海に行ってて笑う。イネス・デ・メディロスと村の女たちが対峙している切り返しかと思いきや、女たちの背後からイネスがヌッと出てくる終盤のカットにもビ>>続きを読む
徹頭徹尾現状追認を強いてくる省略と抑制に圧倒されるが、わかりやすくシネフィル趣味全開なのが処女長編らしくて最高。いきなりフラー顔負けの瞬発力で平手打ちが飛んできて、タイトルの「血」がブレッソンみたいな>>続きを読む
侯孝賢のセルフ聖地巡礼。『童年往時』のパートを筆頭に、映画と地続きの時間や風景が流れる瞬間があり多幸感。『冬冬』祖父宅の洗濯物が甘美な光を反射させるショットを挟んで、サラブレッド文学少女な経歴を語る朱>>続きを読む
皮肉な悲喜劇。集団の浅慮な善意が捻れて飼い牛を失ったおっさんの狂気を加速させていく。自らを牛だと思い込んだおっさんが飼い主(自分)に助けを求めるシーンのキメキメの採光に震える(シリアスな笑い)。はじめ>>続きを読む
地方都市あるある。経済成長がもたらした、都市景観や儒教的価値観のダイナミックな解体と、リー・ピンビンみのあるハイスケールな長回しで山水画の一場面として定着する山紫水明な風景美の混淆が、大家族の揺らぎと>>続きを読む
ジェットコースター・オペラでクソ楽しい。ほとんど衝動だけが発露されていく超高速メロドラマに食らいついていくように転調しまくる音楽のノリの良さ。美術と衣装の見事なカラーコーディネートや、メインの人物とは>>続きを読む
詰め込み過ぎの台詞による停滞を防ごうとするかのように、過剰なレイヤー構成と動線設計がなされた画面を、パンとドリーの乱発で広げていく。その繰り返しに食傷するが、後半のエスタブリッシングショットの不足や浅>>続きを読む
「夜明けの笛吹き」と化するドノヴァン。冒頭のアイリス・インと衣装と美術の作り込みに「牧歌的いいぞ〜」とルンルンになったが、まもなく閉塞的な街に舞台が限定。複雑な権力構造と暗黒中世の大定番に鬱然。多すぎ>>続きを読む
講談みたいな荒っぽい物語と人物造形が、景気よく小屋ひとつ燃やすようなリッチな画に見合ってない。冗長な台詞と無駄なカットも多くてダレるし、脚本の黒澤明の映画のイメージを流用するセコさも気に入らない。千秋>>続きを読む
女性の好意に向き合いきれずトンズラこいた過去があるので他人事とは思えない。自己卑下によってアイデンティファイされてしまった器用貧乏な男が抱える屈折と、それを韜晦するための狂躁的な空騒ぎ。マジキチ連中の>>続きを読む
アバンタイトルがとにかく大好き。フランキー堺による噺家風のナレーションが実に芸達者で楽しい。動物の生態にもふれるし、これは『御先祖様万々歳』の元ネタにちがいない、とか思ってたら、あまりにも押井守なオチ>>続きを読む
スタージェス『凱旋の英雄万歳』とは対照的な皮肉。褒章や酒の過剰な反復、戦場に行きたくても地元の基地で飼い殺しにされる前半と、前線と本国を強行往復して休みたくとも休ませてもらえない後半のあざやかな反転に>>続きを読む
「シニカルさがナンパを空虚で醜悪なものに貶めてる」「自分がこうだから故郷を離れたのか、故郷を離れたからこういう自分になったのか」「いたい場所にいつもいない」など「わかる〜」な台詞が頻出。停滞気味のダイ>>続きを読む
暗すぎて鬱。倦怠と厭世観がハンパない。話も暗いが、池内淳子に終始まとわりつき、あるいはかたどられる影の濃さがとにかく不穏。小物のキツい色彩はグロテスクだし、ぼんやりと浮き上がる光は彼女とは縁遠い幻のよ>>続きを読む
政治家と記者の大仰なカーチェイス、からの料亭を利用した籠抜けのスピード感は気持ちいいし、フレーム内フレーム(襖)内の空間を物だけが行き交う姉妹キャットファイトもアニメみたいで大好物。しかし、錯綜した群>>続きを読む
ワイズマンが関わってるのね、というのも納得な感じにハーレムの路上にたむろする人々の点描がリズミカルに挿入。ドキュメンタリー的な実景や社会派な独白が劇映画の後景として収まり良すぎて拍子抜けしないでもない>>続きを読む
アホヅラしたデブ(監督ご本人)が延々と醜態をさらし、美人女優に次々と説教を食らう。M的なご褒美がテンコ盛りの自虐「芸」としては楽しめるし、無駄に洗練されたダベりの露悪性も笑えた。しかし、あくまで「プレ>>続きを読む
人間的な交歓を超越したプロフェッショナルの次元においてのみ成立するライバル関係がアツい。俊敏なカット割りと多彩なスピード表現、まとわりつくように重量感のある雨の描写もアガる。公開時の劇場にオッサンしか>>続きを読む
もしかしてタランティーノ版よりおもしろいのでは……? ドイツ兵に扮していた脱走兵たちがドイツ兵に扮していた味方の工作部隊を誤って殺してしまい彼らの任務を引き継ぐ羽目に、という状況からして不条理でバカバ>>続きを読む
冒頭と結尾で提示されるビジュアルイメージは確かに強烈。しかし、主人公の場当たり的な行動、いまひとつ垢抜けないバイオレンス描写、KKKを謎アレンジした赤頭巾、西部劇を装うための雑なアリバイ作りなどに良く>>続きを読む
ダメ人間なので正直この主人公の少女の実存というか人生に対してほとんど興味を抱けなかったのだが(オーストラリアの元祖フェミニスト映画らしい)、併映の『若草の祈り』と違い、シーンごとの場所や時間による自然>>続きを読む
一点の曇りなき善意の連鎖と健全すぎる子どもたちの造形にハマれず。というか、家長不在の隙をついて周囲のオッサンたちが母娘丼を狙うNTR展開くるのかな?と身がまえてしまった自分の堕落に死にたくなる。日中の>>続きを読む
例によってお花畑なリチャード・カーティスの脚本のヌルさを、ダニー・ボイルの躁的な編集で煙に巻いていくのかと思いきや、わりと禁欲的でハジけない。結果的に、いくつもの過ちが予定調和の翻意で清算される甘っち>>続きを読む
シャアとアムロという二つのオルターエゴにそれぞれ仮託された、富野由悠季のニュータイプ思想ひいてはガンダムシリーズそのものへの絶望と職業意識による消極的肯定が、その相克のはてに中年男性のこじらせた幼児性>>続きを読む
スコセッシの諸作を初めとした映画史への目くばせ、とりわけジョーカーの来歴を『キング・オブ・コメディ』の再話として描くという着想には心躍るものがあったが、キャラ造形は『ダークナイト』からあきらかに後退。>>続きを読む
ひとり旅のステキおばさんがクドかれたり騙されたりで一喜一憂。チョロすぎるキャサリン・ヘプバーンの豊かな表情を堪能。ヴェネツィアのロケーションが反則的で、橋と運河が入り組み、開放的な広場とミステリアスな>>続きを読む
二ノ宮隆太郎の役者の身体の扱いはやっぱりおもしろい。主演女優が美人、という映画の中でスルーされがちな事実が言及されまくる。いかにも鎌倉らしいロケーションはほとんど現れず、洗練されたグダりとクズっぷりを>>続きを読む
初対面でブレッソンの決定的瞬間がどーのこーのと早口で議論をふっかけてくるヒロインとか最高じゃん。強烈な個性のぶつかり合いとスピーディーな台詞の応酬が、ゆるいギャグとご都合主義な展開で気の抜けたコーラみ>>続きを読む
担任の先生が本気出した学芸会の演し物。映画史上類を見ない凄惨な抗争とスリリングなカーチェイスに刮目せよ。ただひとりプロフェッショナルな貫禄を漂わせていたジョディ・フォスターが、ガキんちょどもといっしょ>>続きを読む
答え合わせのような二部構成の明晰さの一方、冒頭の魔術的な雰囲気が全編を覆い、素朴なメロドラマを妖しく艶めかしく彩る。16ミリの粗い質感と台詞を抜いたサウンドトラックで記憶の抽象性を再現するのはいいが、>>続きを読む
インスタっぽいカラーグレーディングが絶望的に好きくないんだが、カメラと被写体の距離感が絶妙。魁偉な役者の身体性を活かすアプローチに好感が持てる。手持ちの寄りとフィックスの引きを織り交ぜた緩急もなかなか>>続きを読む
ケイト・ブランシェットのキャサリン・ヘプバーン完コピ芸に爆笑する映画。過剰にニューロティックな語り口にはあまりノレないが、強迫性障害をバイタリティーと表裏に描き、ギリギリのところで彼の生き様を称揚して>>続きを読む
デカダンスな臭いがプンプンのタイトルバックと、幼女からFワード連発でセックス拒否される冒頭にワクワクがとまらなかったが、想像以上にイカれたグロテスクは展開せず。卵管が3つあって3分割された子宮とか呪術>>続きを読む
開放的な街の景観が随時挿入され、ヒロインはその中を自由に駆けまわるのに、閉塞的で抑圧的で箱庭的な迷宮として描き出されるリヴェット最初期のパリ。この監督おなじみのモチーフはほとんど出揃っているが、それら>>続きを読む
ARという題材の特性上、「部外者」の視点を持ち込んではならない映画だが、鑑賞者の没入に依存した雑なSF設定にはいちいち興が削がれる。身体性への意識も中途半端なので、物理法則から解放されたVRバトルのケ>>続きを読む