「フランキー堺って菊池寛に似てない?」という発想の一点突破でつくってしまった感。菊池寛の人物像を掘り下げようとする姿勢もあまりうかがえず、フランキー堺はいつものフランキー堺なのでとくに見るべきところも>>続きを読む
ノスタルジックなロマンスをひとり抱えて老朽船の中に引きこもる老船長や、蛤のむき身にいそしむ妻をかいがいしく世話する夫など、本来ならしっくり収まるべき旧世界のエピソードがむしろ浮いてしまっている。原作の>>続きを読む
こりゃ傑作。『時は止まりぬ』『就職』において少年たちの心情を雄弁に物語っていた豊かな表情は、詩的な回想や夢想に代替され、その総決算ともいうべき婚約者たちの和解と再会のシーンは、コミュニケーションの幻想>>続きを読む
ロレダーナ・デットが異次元の可愛さ。ひとりですたすた車道を渡っていってしまうドメニコくんには頭をかかえてしまったが、すぐにとって返してアントニエッタの手をとった瞬間には息がつまりそうになった。自伝的な>>続きを読む
やるせなさや気だるさのただよう夏の終わりに、サバービアのねばついた空気を振り払うかのように衝動に身を任せた充足感と、本当に欲しかったものは見つけられなかった失望を受け入れるティーンエイジャーの奇跡のよ>>続きを読む
後半になるにつれて顕著になる希薄なドラマ性はむしろ肝。観客の実体験による補完で成立している作品を、過去へのビタースイートな郷愁をたくみに喚起していると評価するか、それによってのみ支えられた貧弱な表現で>>続きを読む
初監督作品なのに自分の趣向を反映させまくりでビビる。思春期特有の溌剌さと鬱屈をみなぎらせたエネルギッシュな少年少女たちが、痛々しくも可愛らしい。いかにも80年代に量産されたラブコメらしい物語と設定の凡>>続きを読む
「ゆとり代表」と書かれたたすき代わりにヘラヘラした笑みを顔にはりつけたバイトくん(未経験)がやってくるが、やる気のなさを隠そうともせずに受験勉強にとりかかり、上司の晩酌にも付き合わず若者の酒離れっぷり>>続きを読む
前半におけるいっさいがっさいがあざやかにひっくり返っていく後半の展開が痛快。主役の男女の家庭環境の相似や、アスピリンをめぐる出版社の社長の応対など、前半のさまざまな描写が後半への言わば前フリになってお>>続きを読む
恋あり歌あり活劇ありのごった煮コメディ。くわえてメタ要素まで。当時の映画の消費環境がかいま見えて興味深いといえば興味深いが、一本の映画として評価するにはちょっとヌルすぎる。陪審員の人形はなかなかおもし>>続きを読む
妻の不貞の疑惑に対する煩悶が指揮者として最高のパフォーマンスを引き出す、というアイロニーがかなり笑える。主題からは外れてしまうが、たとえばスランプを抱えているなどの設定にして、夫婦生活の安穏(家庭)と>>続きを読む
マイケル・マクラマーがたいへんすばらしい。最初こそ、オーソン・ウェルズのイアーゴが見たかったなあなどと思っていたが、イアーゴの執拗な悪意と野心、そしていやらしい狡猾さを、「怪演」と形容してしまうにはあ>>続きを読む
自身にとって巨大で不可解な現代という迷宮をめいっぱい楽しんでしまおう、というタチの遊び心と懐の深さがそのまま形になったかのような映画。ドレスコードが設けられたナイトクラブの扉は粉砕され、それまでドアマ>>続きを読む
スクリューボール・コメディの元祖とされているだけあって、後続の作品に比べてプリミティブな印象。ジョン・バリモアとキャロル・ロンバード演じるハイテンションでエキセントリックなカップルはたしかに群を抜いて>>続きを読む
緻密に計算されたスラップスティックが次から次へとテンポよく披露され、観る者をおおいに楽しませてくれる。ハロルド・ロイドのトレードマークの丸眼鏡、その下からのぞく柔和な表情と茶目っ気、目まぐるしいがどこ>>続きを読む
大戦中の中国北部という広大な風景や、遠隔地であるのをいいことに私服を肥やす副官の小悪党っぷりなど、和製西部劇の舞台としてこれ以上ない秀逸な状況設定。いわゆるキ印の役を演じる三船敏郎のあまりのハマりっぷ>>続きを読む
「ジュール・ヴェルヌの世界」や「ロマン・ポリシエ」や「チャンドラー風」といった形式を次々に持ち込んでは放置するつぎはぎだらけのクライムサスペンスのなかで浮き彫りにされ、解体されるひとつの「愛」のかたち>>続きを読む
劇中の人物たちが直面するままならさとは対照的に、映画表現の自由さをあらためて気づかせてくれる作品。パリの街並みの奥行きや開放感、そこに息づく人びとの生々しさと躍動感に、急に視界が開けたときのような胸が>>続きを読む
ライブ感覚で作られたわりに、そつのないウェルメイドに仕上がっている謎の映画。異国の地、不安定な情勢のなか、義と利のあいだでそれぞれバランスをとっていたふたりの男が、一方に傾くことで生まれる友情が、まさ>>続きを読む
市井の人間の描写とメロドラマを極力排除している点がすばらしい。最後に長谷川博己と石原さとみがくっついてブッチューしたり、行方不明だった竹野内豊の感受性豊かな息子かなんかが無事に発見されて平和のついでに>>続きを読む
ゴジラがふつうに怖い。真っ昼間に大戸島の山の影からヌッと顔を出す登場シーンが鮮烈で戦慄。慌ただしく避難する民衆、壊滅した街や怪我人と死者であふれる救護所は、どうしたって戦時の光景を彷彿とさせる。黎明期>>続きを読む
いささか込み入っているジレンマが巧妙に設定してあるシチュエーションをまったく生かし切れてないのが残念。ニコルを破天荒なおてんばに、デルモットをそれに振り回される職業倫理に忠実な青年にして、もっと状況に>>続きを読む
アントン・カラスのすっとぼけた音楽に終始脱力させられる。特にメリーゴーランドの影からハリー・ライムが白日のもとに現れ、ついにホリーと対峙かというシーンでこれを流されてはたまったもんじゃない。が、サスペ>>続きを読む