さいとぅおんぶりーさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

殺し屋(1956年製作の映画)

3.0

学生時代の短編作品ながら鏡など重要なモチーフが既に出来上がっていた。

登場人物すべてが支配や従属の中で生きており、強大な力に対して死を待つ男の無力感や絶望感は翻って「なぜ人は生きるのか」の問い掛けに
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オルメイヤーの阿房宮(2011年製作の映画)

4.5

父親オルメイヤーが凋落してゆく物語りと折り重なるように、娘ニナの自立が描かれた作品。

女性が1人で生きるには他者に隷属するしかない時代性を写していたと同時にニナの美しさによって周りの男たちが狂ってく
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GUNDA/グンダ(2020年製作の映画)

4.5

基本的にカメラは低く映像は白黒で動物の視点から捉えている、監督がモノクロを選択した理由は画面の美しさを狙って決定したのではなく、豚の「色覚」に近付ける為(豚の視覚は青以外モノクロに写る)
豚の視点に限
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ショーイング・アップ(2022年製作の映画)

4.5

この作品における鳩の役割りは「コントロール出来ない外部的要因」の象徴として受け取りました。

当初リジーは鳩という存在に対して気にも留めなかったが隣人のジョーに押し付けられる形で鳩の面倒を見る事になる
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ドランク・モンキー/酔拳(1978年製作の映画)

3.6

序盤からコメディとアクションを交互に挟みながら進行して最後はコメディとアクションを融合させた酔拳の会得に至るのは面白かった。
各シーンの殺陣は豊富なアイディアと観た事ないアクションで息を呑むほど凄いん
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他人の顔(1966年製作の映画)

4.2

新橋ミユンヘンのシーンが特に好き、さりげなく安部公房本人やら武満徹やら当時の文化人が勢揃いして映っている。
何故わざわざミュンヘンなのか?これは安部公房が当時ハイデッガー•ヤスパース•ニーチェ•リルケ
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おとし穴(1962年製作の映画)

4.5

一つの殺人事件から派生して人間の持つ業を推進力として展開されてく不条理喜劇。
物語りが後半に向かうにつれ登場人物それぞれの見る異なる真実が同一の画面で展開されてくのが見応え抜群で唸ってしまう、その中で
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燃えつきた地図(1968年製作の映画)

3.7

被写体の前に遮蔽物を置いて観客が覗き見る画面作りはミステリーと親和性があって非常に良かった。これは多彩で歪なカットをこれでもかと見せることで原作の燃え尽きた地図のテーマである自己同一性の崩壊と合致して>>続きを読む

小説家の映画(2022年製作の映画)

5.0

ホンサンスの作品は「逃げた女」以降私の中ではハズレがなく常に最高点を出してくれるのですが今作はその中でも突出して好きでした、それ故にどの角度からでも語れるこの映画をどの部分に絞って書くか非常に悩む作品>>続きを読む

ランユー 4Kリマスター版(2001年製作の映画)

3.0

北京で出会った男性同士のラブストーリー。
中国に返還される前の香港だったり天安門事件に触れていたりと今の中国ではタブーとされる物がてんこ盛り!題材も完全にアウトだろうし別の意味でハラハラしてしまった。
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気まぐれな唇(2002年製作の映画)

4.0

小説家の映画が余りにも面白かったので10年ぶりくらいに再見しました。

ホンサンスの初期作すっごいロメール!俯瞰ショットとかカット割りが多くて今見ると余りの違いに驚きの連続!!現在と違い即興演出もなく
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当りや大将(1962年製作の映画)

4.1

大阪西成のドヤ街で生きる底抜けに愚かな人間を描いた映画

主人公が有害な男性性の象徴のようなキャラクターなので共感できる箇所が微塵もなく、特に女将から金を奪って自殺に追い込んでおきながらブランコ如きで
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TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー(2022年製作の映画)

3.7

ティーンエイジャー降霊トリップ作品

冒頭5分くらいで父と娘の関係性が上手くいってないことを蛇口の開閉だけで表現されていてボタンの掛け違いが悲劇に繋がってく事を予期させる流れが良かった。

ミアの親友
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デビッド・クローネンバーグのシーバース(1975年製作の映画)

3.1

人間の臓器の代替品になると言われている寄生虫が次々に人々に寄生するパニックホラーで寄生された副作用としてみんな淫乱になっちゃう低予算B級作品。
クローネンバーグの初期作ながらキモグロエッセンスがしっか
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ザ・ブルード/怒りのメタファー(1979年製作の映画)

3.3

クローネンバーグが娘の親権を争って妻と離婚調停中に撮られた作品と聞いてあまりに腑に落ちてしまった、これでもかと妻に対する私怨が詰め込まれており後半は完全にギャグ。

物語構造も心理学者が患者の内面を受
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絶壁の彼方に(1950年製作の映画)

4.0

アメリカの外科医がとある独裁国家に医療講演として呼ばれ、大統領と知らずに手術をするが術後に独裁者は亡くなってしまい独裁者の死を隠蔽する為に命を狙われるスリラー映画。

銃を持った兵士に周囲を取り囲まれ
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チーム・ジンバブエのソムリエたち(2021年製作の映画)

3.2

ワイン文化が全くないジンバブエの4人がフランスで行われるワイン世界大会に挑むソムリエ版クールランニング。

ムガベ独裁政権のジンバブエから南アフリカに渡った同郷でありながらそれぞれ違うバックボーンを持
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散り行く花(1919年製作の映画)

3.0

西洋列強から支配を逃れ仏教を広めるためにイギリスに渡航した中国の青年と家父長制の中で父親に怯えて生きる少女との愛を描いたサイレント不条理劇。

そもそも中国からイギリスまで仏教を伝えに来たのに阿片中毒
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怪物(2023年製作の映画)

4.3

モンスターペアレント・DV・ネグレクト・LGBT・学級崩壊・事勿れ主義・パワハラなど様々な現代日本の問題が前景化されており人間の持つ両義性を描いている作品。

興味深いと感じたのが依里の父親の存在で、
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午後の網目(1943年製作の映画)

5.0

結末は変わらないのにこの映画を観るときいつも心の何処かで別の結末を想像してしまう。
ループ構造を抜け出せない因果と必然性や繰り返し再現される映画構造の特性が物語り構造と合致していてシュルレアリスム映画
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ウォールデン(1969年製作の映画)

5.0

学生時代ヘンリーDソローの「森の生活」に傾倒して訳者違いで3冊読み耽った私にとって森の生活から着想を得たメカスのウォールデンは余りにも親和性が高くオールタイムベストの作品になりました。

この作品はソ
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凱里ブルース(2015年製作の映画)

4.4

観終わった感想がなんとも難しい映画、冒頭の金剛般若経の一節のように捉え所のない過去と現在と白昼夢が入り混じる作品で言語化される事を拒むような曖昧模糊なロードムービー。

物語りのプロットは至ってシンプ
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ぼくの伯父さん(1958年製作の映画)

4.2

この映画で1番ツボった場面はお客が来た時にだけ誇示するように水を流す魚の噴水でそれが虚栄と虚飾の象徴になっており、門越しに普段流してない事が来客にもわかってしまう滑稽な作りも細かくて最高でした。

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オン・ザ・ミルキー・ロード(2016年製作の映画)

3.0

全体的にエモーショナルで監督の内的世界を具象化したような叙事詩的作品。 
不毛な戦争と普遍の愛がテーマとして解釈しましたがハッキリ言って全然わからないしカラックス並みに濃い絵作りが私の感性に合わなかっ
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セールス・ガールの考現学/セールス・ガール(2021年製作の映画)

4.0

モンゴルZ世代の女の子サロールがひょんな事からアダルトショップで働く事になり、癖の強いオーナーのカティアから性を通して人生の生き方を学んでいく青春映画。



以下ネタバレ↓
無気力で受動的な人生を送
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オール・アバウト・マイ・マザー(1999年製作の映画)

3.6

シングルマザーのマヌエラは息子が目の前で車に轢かれて脳死してしまう、マヌエラは臓器移植の為に生命維持装置を外すサインをする。
蒸発した息子の父親に会う為に旅をする過程で様々な人生を生きる女達に会い癒さ
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ロード・インフェルノ(2019年製作の映画)

2.4

キャッチコピーは「あおり運転した相手がイカれたサイコパスだった!!」これを見て勝手にヒッチャーや激突を想像してワクワクしながら鑑賞。

一家4人で祖父母の家に里帰り中に前方の車を煽ったらそこから恐怖の
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最後まで行く(2023年製作の映画)

3.3

マネーロンダリングされた裏金を巡って三者三様の思惑が交錯するサスペンススリラー作品。

原作の韓国版は未見。前半の死体を隠蔽するあたりはスマホのバイブが鳴るたびにハラハラさせられて手に汗握りました、皆
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ハッピーボイス・キラー(2014年製作の映画)

4.0

冴えない主人公のジェリーが喋るペットの動物たちに翻弄されるポップでキュートなスプラッターコメディ映画。

ジェリーの生い立ちの悲惨さや憎めないキャラクターに思わず感情移入してしまった…。
彼にとって殺
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ブンミおじさんの森(2010年製作の映画)

4.7

メモリアで味わった強烈な映画体験が忘れられずDVDを購入。
腎臓病になり余命短いブンミが猿の精霊になった息子と先立ってしまった妻に会う、超常現象が立て続けに起きてるのに登場人物達はそれを自然と受け入れ
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ウィ、シェフ!(2022年製作の映画)

3.9

一流レストランで働く副料理のカティが自身の想い出の料理にレシピ変更を求められた事から店を辞め、移民の子供達の自立支援施設で働き始めるとこから物語がはじまる社会派コメディ作品。

フランス留学してた身と
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TAR/ター(2022年製作の映画)

5.0

正直1回目の鑑賞は情報を追いかけるのに精一杯で作品構造の複雑さと強度の高さに終始困惑してました、あの作品が登場する衝撃のラストに鑑賞後はポカーンと開いた口が塞がらず現在も自分が観たものの正体が掴めない>>続きを読む

BLISS ブリス(2019年製作の映画)

2.0

スランプを抱えた女性画家のデズがプレッシャーから新種のドラッグに逃避するだけの話しで、ドラッグの作用を追体験するような混沌としたカメラワークが特徴のアート系バイオレンスホラー。

ギャスパーノエとダリ
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イグジステンズ(1999年製作の映画)

4.5

近未来、人々は脊髄に穴を空けコードを差し込み仮想現実へダイブするゲームポッドが流行っており、それに反対する現実主義者がゲームポッド製作者の命を狙うキモグロSFサスペンス。

1番好きな場面はストーリー
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駄作の中にだけ俺がいる(2012年製作の映画)

3.5

会田誠に密着したドキュメンタリー作品
妻であり芸術家の岡田裕子のナレーションも聞き取りやすくて良かった、会田家の何気ない食事風景や制作に詰まって頭を掻きむしりながらタバコ咥えて悩んでるプライベートな側
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切腹(1962年製作の映画)

4.5

序盤は答弁で相手を納得させて如何に此方の理を通すのかイニシアチブを取り合う法廷劇のような構成で後半にかけて徐々に明かされる切腹に至るまでの動機など会話劇が見応え抜群。
後半の殺陣の迫力も凄まじくエンタ
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