さいとぅおんぶりー

当りや大将のさいとぅおんぶりーのレビュー・感想・評価

当りや大将(1962年製作の映画)
4.1
大阪西成のドヤ街で生きる底抜けに愚かな人間を描いた映画

主人公が有害な男性性の象徴のようなキャラクターなので共感できる箇所が微塵もなく、特に女将から金を奪って自殺に追い込んでおきながらブランコ如きで償えると思っているあさましさとそれをあたかも美談に昇華しようとする物語の流れはこの作品をどう受け止めたら良いのか困惑させられました…しかし贖罪の為にブランコを作り破滅の要因を賭博場に向けるのは無学で愚かな人間の発想としては至極当然だとも納得させられてしまった。(息子を帝国大学に連れてくなんて発想はそもそも大将から出てくるはずがない)

結果としてこの大将というキャラクターの徹底したリアリズムにやられてしまった、鑑賞後しばらくは女将が歌っていた「雪の降る町で〜」の一節が脳内でリフレインして大将の歩んだ人生の虚しさと寂寥感に深いため息が出てしまった作品。