MCATMさんの映画レビュー・感想・評価

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マッドマックス:フュリオサ(2024年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

「実りの地」への道は徹底的に護られなければならないため、冒頭で森を荒らすバイカーたちに対して行使されるフュリオサの破壊行為は、「実り」と強く結び付けられている。幼く、力なき者であったため、フュリオサは>>続きを読む

豚が井戸に落ちた日(1996年製作の映画)

4.5

クズ中のクズ、と言い切って差し支えないであろう、主人公の一人である小説家ヒョソプ。本命の人妻ボギョンとは別に、大学での教え子であったミンジェと逢瀬を重ねている。二人の女性は、それぞれがヒョソプへの恋慕>>続きを読む

ゴジラxコング 新たなる帝国(2024年製作の映画)

4.0

むすこと二人ですっごい堪能した。アダム・ウィンガードが、コングとゴジラのソフビ持って「べべべべ」「どどどど」などと奇声を発しながら遊んでいる姿を観させられたような二時間強。大変好ましいことである。もの>>続きを読む

システム・クラッシャー/システム・クラッシャー 家に帰りたい(2019年製作の映画)

5.0

「そんなガキの番組見たくない!」と大騒ぎする弟の叫びから推し量れる、主人公ベニーの精神年齢。すぐにそれ以上の大噴火が、貴重なママとの再会を恐怖の一夜に変えてしまう。どこの施設に行っても、どこの家に行っ>>続きを読む

辰巳(2023年製作の映画)

5.0

誰にも共感させないし、誰にも同情させない。危うく共感したり、同情しそうになるとなると「そういうタイプの人間ではないので」とばかりにスルッとかわされてしまう。すべての行動が、あくまで打算的でしたたかな選>>続きを読む

みなに幸あれ(2023年製作の映画)

3.5

『ヘレディタリー』や『ゲット・アウト』『スマイル』などの海外ホラーを紐解くまでもなく、今一番怖いのは突き抜けた笑顔であることは間違いない。勝手に「暗がりであれば、笑顔も怖いよね」とか無邪気に信じてると>>続きを読む

コスモス(2015年製作の映画)

4.0

借家の軒先に青いケーブルで吊るされた雀を見た時から、形而上の世界が少しずつ現実を侵食し始め、主人公の言動も周囲のそれも果たして何を言っているのか判然としなくなるのだが、それでも不思議と狂気は感じられな>>続きを読む

チア☆ダン 女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話(2017年製作の映画)

4.0

色恋動機で入部してチャラけてたひかり(広瀬すず)が、戦力外として一人外された舞台。円陣でいつも通りメンバーを勇気づけてから大舞台に送り出すと、その背中を眺めながら涙がこぼれないように天を仰ぐ。無難な監>>続きを読む

インフィニティ・プール(2023年製作の映画)

5.0

リゾート地を訪れた売れない作家夫婦が、現地で出会った希少な愛読者であるという夫婦(ミア・ゴス、ジャリル・レスペール)と出かけた夜の浜辺からの帰り道。泥酔し、眠い頭で運転している主人公(アレクサンダー・>>続きを読む

ふたりだけのロデオ(2022年製作の映画)

4.0

あらすじとか概要だと、父娘がトラックレースに向かうロードムービーであることぐらいしか分からないんだけど、実際は序盤から雲行き怪しい。離婚して親権を元妻に取られた父親セルジュが、空手教室終わりの9歳の娘>>続きを読む

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)

3.5

そもそも母親の介護費用が必要になる…というタイミングで書き始めた本なわけで、「売れたなら…」という皮算用は頭のどこかにあったはず。その下心を隠して、小賢しく振る舞うからややこしいことになる。「本当の自>>続きを読む

エターナル・ドーター(2022年製作の映画)

4.0

母親と訪れたホテル、かつてそこに母が暮らしたというその建物がいかにも不気味で、事前のリクエストも通っておらず、スタッフのやる気もゼロ。というか、なんか全体的に脱力したような不穏な空気が漂っている。そん>>続きを読む

のら犬(2023年製作の映画)

5.0

粗野でヤバい奴として登場したミラレスが、地元のはぐれものにも優しく、文学を愛し、母親のために食事を作る献身的な男であるということがわかってくるにつれて、この街に正しい奴などいない、ひいては、世界に一か>>続きを読む

哀れなるものたち(2023年製作の映画)

4.5

堂々たる出来。徹底的にアンチ・ピグマリオン的映画。征服欲独占欲の高まりを、暴力的な束縛で叶えようとする男たちに対する抵抗の記録であり、欲望を曝け出すことで、男たちは意志ある世界からの敗走を余儀なくされ>>続きを読む

ボーはおそれている(2023年製作の映画)

5.0

「正しいことをしなさい」という言葉が、沈黙をかき分けた電話越しの母によって絞り出されると、これまで同様、ボーを縛り付ける呪いとなる。投薬、スマートフォン、広告、芸能人、報道、カメラ、害虫、暴力、騒音。>>続きを読む

スティルウォーター(2021年製作の映画)

5.0

「スティルウォーター」という会社が産業の中心となっている街で、職を失ったビルがフランスはマルセイユに向かう。娘アリソンが、恋人の女性を殺した罪で服役しているのだ。彼女は、アキームという男が真犯人である>>続きを読む

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)

5.0

隕石の落ちた大きなクレーターのある砂漠にある街『アステロイド・シティ』に、少年少女科学コンテストに出場する天才の子息を持つ家族が大挙して訪れる。という物語の舞台が上演されている、というメタ構造を持つ作>>続きを読む

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

4.5

『ポニョ』『ハウル』『千と千尋』などに通ずる、つまりは宮崎駿大得意の奇想ファンタジーもの。冒頭の空襲シーンにも現れる溶けるような人体描写、水彩のようにぼんやりとボケてなお美しい背景画、活き活きと躍動す>>続きを読む

戦慄怪奇ワールド コワすぎ!(2023年製作の映画)

5.0

コワすぎシリーズ集大成にして、白石晃士監督の現時点でのベスト。いや、作品としては同等に面白いものはいくつかある(『ある優しき殺人者の記録』とか『オカルト』とか)が、初見の人に勧めやすいという意味でベス>>続きを読む

ほつれる(2023年製作の映画)

5.0

主人公綿子(門脇麦)は、居間のソファで眠る夫・文則を置いて、木村(染谷将太)との旅行に向かうが、その旅行からの帰路で木村が綿子の眼の前で事故死してしまう。公に出来ない悲劇が生活の中心に腰を下ろし、本当>>続きを読む

マンディブル 2人の男と巨大なハエ(2020年製作の映画)

4.5

巨大なハエあるあるで進行する頭のおかしい映画を期待して観てたら、巨大なハエそっちのけで相変わらず1から10までどうかしてるだけの映画。ホント最高だから観て欲しい。カンタン・デュピューは映画界の宝。アデ>>続きを読む

無情(2019年製作の映画)

3.5

2つの家族の間にある諍いが復讐を呼び、復讐は次の復讐を呼ぶ。主人公の兄はその連鎖の中で殺害され、主人公は下手人を追い詰めるが、殺すことが出来ない。ためらいをきっかけに、抗争の運命に抗う者が生まれた時、>>続きを読む

戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ! FILE-02 暗黒奇譚!蛇女の怪(2015年製作の映画)

3.0

まさかの恋愛譚。一見「キチガイ」で片付けられそうな人も、紐解くと色んな事情があるということがわかることってよくある。蛇女の娘が、直後の劇場版で霊能力者「珠緒」として再登場する(全くの別人役)。あと、M>>続きを読む

戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ! FILE-01 恐怖降臨!コックリさん(2015年製作の映画)

3.0

明らかに以前よりガラが悪くなった工藤。前作の結果、過去のトラウマがなくなって、人間としての深みがなくなったとのこと…。相変わらず斜め上の事態、斜め上の解決法しか出てこなくて呆れる。

インポート、エクスポート(2007年製作の映画)

4.0

ウルリッヒ・ザイドルの代表作の一つ。ウクライナからウィーンに行く女性、ウィーンからウクライナに行く男性。2つの人生が交差しながら、クロスフェードするようにあらぬ地点に落ち着いていく。セクシャル描写が過>>続きを読む

アル中女の肖像(1979年製作の映画)

4.0

「ベルリンの片道切符。酒を飲みまくるぞ」と決めた裕福な女が、本当にただただ酒を飲みまくりへべれけになっていく話。なんだけど、ベルリン空港からいささか様子がおかしく、「現実」に到着しました…なんて言われ>>続きを読む

ママと娼婦(1973年製作の映画)

4.0

ジャン・ユスターシュの代表作。奔放な性行為の果てに、妊娠という「危機」が訪れるのであれば、生と死の重みにだって歪みが生じてしまう。「娼婦」については死と結びつけて語られ、語られない「ママ」は背景として>>続きを読む

エドワード・ヤンの恋愛時代(1994年製作の映画)

4.5

まるでトレンディドラマのような群像劇なのに、とにかく暗く暗く潜るように展開していくエドワード・ヤンの傑作。どの登場人物も決して褒められたような人間ではない中で、そんな文脈から「良い女の子のフリをしてい>>続きを読む

クライムズ・オブ・ザ・フューチャー(2022年製作の映画)

3.0

超難解(『コズモポリス』系です。俺、あれ、全然わからんかった)で何が言いたいのかいまいちわからなかったんだけど、ビジュアルや設定が奇想過ぎて全然見れる。ブランドンの『ポゼッサー』より良かったし、逆にブ>>続きを読む

ハズバンズ(1970年製作の映画)

4.0

That's カサヴェテス映画って感じでたまらんもんがありましたよ。『Faces』を彷彿とさせる居心地悪い瞬間と、野放図に明るい瞬間が交互に出てくるので、磁場が狂う。勝手知った人にしかオススメ出来ない>>続きを読む

バービー(2023年製作の映画)

4.5

享楽に耽溺しているうちはよかったのに、一度考えこんでしまうと抜け出せなくなる。そうすると、完璧なルックスに皺が入り、老け込み、扁平足になる。「この足にはヒールが合わない」から何から何まで、現状に対する>>続きを読む