揺れる心。たぎる想い。好きになってはいけない人を、好きにはってはいけないタイミングで思い慕う。繊細な空気感や息遣いが零れ落ちるカメラワーク。
伏線回収とどんでん返しがあることがわかっていながらも、それを忘れさせるリアルさがほしい。茶番に光る生田絵梨花。
舞台はフィンランド。絶えず脅威に晒されていながらも、ロシアの文化に対する敬意がおもしろい。尊敬が執着に変わる。救世主を求めて、救いを願って。
憧れのブロンドのあの人。重なり共鳴し呼び覚まされていく。息苦しい生活を突き抜けていく高揚感。
あの人に、あの人に、あの人に。
劇薬は知らず知らずのうちに蝕む。
目的に向かって、一歩ずつ。山を登るのに似ている地道な作業。華々しいオープニングを飾る物理学者とのコントラスト。ねじれていく事実。主役と脇役という立場でさえも。
全てうまくいっている。黒い裂け目がそこにずっと掛けられているのに、そう、信じたい。なぜって、息子だから。理屈の残酷さが、弁護士という職業によって際立つ。
青梅のニューシネマパラダイスでの鑑賞1作目。
学生デモで揺れる80年代。“人生の主役”として、瑞々しい青き春を過ごしていることがいかに尊いか。それすらポップに描く暴力的衝突とのフュージョン。
懐かしのメロディとともに、時の流れに痛みも感じながら>>続きを読む
予定調和な一日の始まり。流れるような身のこなし。華の都を謳歌しているようで、どこか物足りない。そこに現れる二人の女性との出逢いをきっかけに、世界が揺さぶられ、心が踊りだす!
占領解放から5年。建国2>>続きを読む
そのシーンの“中央”を見せない。
音や声の主体ではなく、その周りで耳にしている人を映し出す。だから、その場に惹き込まれる。想像力が掻き立てられる。
高まらせておいて、あえて引く。
最後のシーンもそう。>>続きを読む
どっちだったか。
そんなものかもしれない。決めるのは、自分の確固たる意思ではなく、時代の流れ。逸脱も、裏切りも、ない。
絶対的権力者に牙を向く忠臣は、明智光秀とかぶる。朴正煕暗殺事件を描く、クライマッ>>続きを読む
カサブランカ、フランスの海外領土になびくハーケンクロイツ。抵抗とナショナリズムの混沌とした時代を生きる、ある捻れた愛のストーリー。
Marion Cotillardが美しい。言葉や表情だけでは作りき>>続きを読む
届かないから送ったのに、返事が来た。
1990年代は「手紙」が物語と想い出を作り出し得る、最後の時代。
何通も書いたな、もらったな。
中学時代の同姓同名のあいつ。
遠く離れた同じ顔のあのひと。
失わ>>続きを読む
これまで不毛な極寒の地を抜け出す人々を描いてきたAki Kaurismäki。いざ、米国に渡るとなれば、それは普通の人々にするわけにはいかなかったのだろう。滑稽だが、テッペンと足下の尖りが芯の強さを表>>続きを読む
フィンランドの寒空の下を、閉山した炭鉱からオープンカーで南を目指すプロレタリアートのカスリネン。
金を失い、宿を追い出され、仕事にあぶれ、車も手放す。
出会うは、離婚したばかりの物憂げな女性と、その息>>続きを読む
一体、自分は何と闘ってるんだ。
極右の国民戦線?
頑迷な父親?
レーガンとサッチャー?
団結、なんて虚しいスローガン。
離れたいのに、解き放たれたいのに。
でも、どこへ行く?
あの人は、どこへ連れて>>続きを読む
映画をつくるっていいな!
ネタバレ注意の脚本が魅力なのでリメイクしても、と思っていたが、そう、これは裏方に光を当てた作品。
「第七の芸術」と称される映画発祥の国ならではの空気感のおかげで、観終わりホッ>>続きを読む
「東京」は、忘れていくことを宿命付けられた世界。そうしなければ存続し得ないのかもしれない。戦争の傷が残る、この暑さと喧しさの中で。
幸せな方でさぁ。尾道から出てきた老夫婦は戸惑っても怒らない。仕方な>>続きを読む
後頭部が印象的。
Ingrid Bergmanの麗しさも、ナチの残党との息を呑む心理戦も特徴的。
しかしそれよりHitchcockたらしめているのは、不気味で、推測を掻き立てる後頭部。陰謀渦巻く、世界>>続きを読む
わたし、というストーリー。
これでいいの?
いいじゃん。
…本当に?
浮気を描く第2章。触れていない。核心をついてまさに交じり合っている。実にいやらしく、魅力的。
時の止まった世界で会いにいく第5章>>続きを読む
こうすべき、あれがない、それはダメ。
この世界の捉え方。
ひとつじゃない。霞がかった空のように。何が正しいんだろう。わからない。
でも、今ここに、生きている。当たり前だけどかけがえのない事実を教えてく>>続きを読む
誰しもが大切な人のことを想い、
そして自分自身のことを想う。
点と点。
その間の、目に見えない何か。
糸と呼んだり、縁と崇めたり。
そうして造られる緩やかな円。
、という想いすらファンタジーかも。>>続きを読む
屈強な父と、美しくしなやかな母、引け目を負った僕。家族同然の隣人と、戦後の陽気、消せない歴史の傷。
「ある秘密」は原題では単数系、しかしこの作品が包む秘密は決して一つではない。過去はそのまま現在。複雑>>続きを読む
飯田橋ギンレイホールでの最後の作品。どこか、ちがう世界に連れ出して浸らせてくれるという、映画館で観ることの醍醐味を存分に味わせてもらった。映画館でなければここまでこの作品を満喫することはなかったはず。>>続きを読む
南へ南へ下っていく。
時間も旅する。
あの日の我らとすれ違いながら。
スコットランドから続く風景や出会い。
そんなに映画音楽で煽らずとも美しく響いたのに。
あの日々を懐かしみ、微笑みを浮かべ、瞳を>>続きを読む
声。
内にある想いをゆっくり吐き出していく。正しい答えも間違った答えもない。大丈夫じゃなくていい。
目には見えない大事なものが詰まった作品。目を閉じて耳を傾けたい。だからこの画にはカラーはなくてもいい>>続きを読む
きっと来る夜明け。冒頭の薄明かりに包まれた街がそんな希望を抱かせる。必ず見つかる、その約束が破られたかくれんぼ。失踪の風景。これはいつの、誰の記憶?
声は騒音にかき消され、過去ははっきりしないまま。>>続きを読む
のちの最高裁判事 、ルース・ベイダー・ギンズバーグ(RBG)。ロースクールで家庭で職場で法廷で、類稀なる血の滲む努力(という言葉で括るにはあまりに忍びない)で世の中も、自分自身をも導いてきたリーダー。>>続きを読む
Pierre Nineyののめり込む感じ。Un homme idéal (2015)を彷彿とさせ、もしかしたら…との疑惑に囚われるが、果たして。
フランス人のバカンスに対する(日本人からすると)異常とも言える執着。恋愛活劇のマエストロ、Éric Rohmerが、幸福を求める女性を追求した作品。
太陽が沈む前に一瞬放つかもしれない緑の光線。それが>>続きを読む
プロモーションビデオの世界。ストーリーは多少無理があってあたりまえ。寧ろ、それが奇抜な魅力を生んでいる。どこへでも行ける。
兄貴の存在感がいい。主人公も、作品全体も支えている。
普通の顔。
あやしい顔。
刑事の勘。間違いない。
…そんなはずがない。
漠然とした猟奇殺人の輪郭。明らかになっていくようで絶えず霞む。
排水溝、トンネル、膣。
はまっていく。抜けられない闇。
監督・脚本・主演。どのようにプロデュースし、そこに乗るか。我を出すと陳腐に陥るし、引き立て役に徹するのではつまらない。結果は絶妙。
親も当然、だれかの子。
刹那のフラッシュバックに襲われ、神秘的な桃>>続きを読む
現実社会の事件をニュースで目にする度にこの作品を思い出す。強烈。
教室での孤独な昼食時間。
理不尽に轢き殺される小動物。
あらゆるシーンが作品の世界観を膳立てる。極めつけは卓球の長尺ラリー。
見紛>>続きを読む
このアパートで何が起きたのか、どこに何があるかを我々は知っている。それが見つかってしまうのか、隠し切るのか、ハラハラ感が続くサスペンス。
だが、何故、この事態に至ったのかは分からない。この場に次々に人>>続きを読む
真実を求める人々の心に火を灯す。
しかしこの真実は絶対に明かされることはなく、それが追求されることもない。
1963年11月22日のクーデターを暴き出していく渾身の意欲作。リンカーンの足元で、建国者>>続きを読む
監督Guillermo del Toroが生み出す新たな異形の生物と、奇妙な時間の流れ。
人と人の騙し合い、化かし合い。