slowさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

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やすらぎの森(2019年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

テッドの絵画が世に出されたことに賛否があることは理解できる。わたしはこれを観ながらソール・ライターのドキュメンタリー映画のことを思い出していた。内容については触れないけれど、一つボタンを掛け違えていた>>続きを読む

アナザーラウンド(2020年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

これはデンマーク人(監督)の、開き直りというか、そんな風に感じた。お国柄ということで済ませていいのだろうか。劇中の言葉通りデンマーク人は酒飲みが多い国なのだそうで、もう良くも悪くもわたしたちは飲まなき>>続きを読む

茲山魚譜 チャサンオボ(2019年製作の映画)

4.2

切り取られる風景もさることながら、人々の表情が実に豊かで清々しい。描かれる島流しとなった天才学者とその島一番の漁夫である青年との交流は、『小説家を見つけたら』なんかを想起させるもので、国や時代が違って>>続きを読む

TOVE/トーベ(2020年製作の映画)

4.1

あなたのにおいがわたしを帰す朝に、流状の光が止まって見えた夜を少し思い出していた。踊り過ぎたのに疲れを全く感じないのは、きっとまだ夢の中にいるからだろうと、わたしはメモ紙に走り書きした君の声を拾い上げ>>続きを読む

ディナー・イン・アメリカ(2020年製作の映画)

4.4

ああ、この人も、あの人も、自分とは全く違う基準で、同じ物事を考えているのに、たどり着いた全く違う解釈を、さも同じこととして押し黙らせる雰囲気と、時間が擦り合わせて行くのを生温く笑って、それっぽく場が収>>続きを読む

ヤンヤン 夏の想い出(2000年製作の映画)

5.0

もう何日も、譜めくりをするように記憶に残る声に耳を傾け、眠れない夜を過ごしている。耳がいいわね、と褒めてくれたあなたの手を握っているようなこの感覚は、ありがたいことに、変わらずあたたかい。ある夜、昨日>>続きを読む

アイム・ノット・シリアルキラー(2016年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

本当よく出来てる映画だと思う(超私見)。地味にお金もかかっていそう。受け付けない人も多いようだけど、むしろ受け付けたい。数パターンのBGMを反復させる巧さ。OP曲とED曲も16mmフィルムのザラつきを>>続きを読む

お引越し(1993年製作の映画)

5.0

大人の笑顔が仮面の輪郭に塗られた血の通わない絵柄のようなものに見え、冷淡な声は、わたしの護りたいものを片っ端から、躊躇いなく、傷付け、あるいは奪って行くのです。そういう悪夢を子供の頃はよく見ていた。自>>続きを読む

(500)日のサマー(2009年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

スコア5にしてしまったのは、サマー効果のせいでしょうか。いいえ、好きな映画だからです。

冒頭、これは男女が出会う物語ではあるけれど恋愛物語ではない、というような前置きがある。では何なのか。これはトム
>>続きを読む

誘う処女(2013年製作の映画)

5.0

終末と創生を覗く小さな鍵穴。宇宙の法則も届かないその地の果てを、ひとり少女が泳いでいる。誰の耳にも止まることのないモノローグは、風にさらわれて、あらわれて、美しい音になり、やがて、倫理だけが馬鹿になれ>>続きを読む

Summer of 85(2020年製作の映画)

4.1

やけに眩しい季節だった。薄く開けた僕の目は、夜通し遊び倒して動けなくなった身体をベッドに投げ出し、死んだように眠っている君を、ぼんやりと見ていたろうか。それが愛の姿であると思わせる、そういう眩さだった>>続きを読む

マリグナント 狂暴な悪夢(2021年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

自分にとっては近年稀に見るA面、B面映画だった。あまりメジャーでない(メジャーだったらごめんなさい)役者を起用し敢えて淡々とB級映画のような雰囲気を演出していたのであろう前半は若干ウトウトしてしまった>>続きを読む

オールド(2021年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

やりたかったのは、生涯の内に起こる起こり得る出来事が一日の内に起こったとしたら、と言うことだろうか。着眼点が面白い。前半のスリラー展開がそれ以降人間ドラマにシフトして行くため、そっちを期待していなかっ>>続きを読む

君は永遠にそいつらより若い(2021年製作の映画)

-

始まりは小さな関心だったろう。うまく言葉にできなければ、その言い訳にすらならない、未熟な想いだったろう。この言葉が届くということが、想いだけでは都合不十分な、自身の答え合わせであってはならない。言葉足>>続きを読む

クローブヒッチ・キラー(2018年製作の映画)

3.9

息をするように信じてきたものを、息を殺して疑わずには、いられなくなってしまったら。
何という自然体。チャーリー・プラマーだからこそ成立している映画だと思うし、この内容でスリラーやサスペンス色よりドラマ
>>続きを読む

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)

4.6

人は雄弁であるが故に、いつまでたっても語り尽くせないのだろう。この世には似て非なるものばかり。だから、人は眠ることを覚えたのだろうか。沈黙を知るために。朝夕も微睡の前では青く、概念ですら白々しい。それ>>続きを読む

カオス・ウォーキング(2021年製作の映画)

4.0

何かもう主演の2人がひたすら人力で旅をしている、それだけで満足してしまう映画。もちろん異議はあるでしょう。これは超個人的な意見(いつものこと)。ちょっと人もお金もかけ過ぎているけど、これくらいのB級感>>続きを読む

ナポレオン・ダイナマイト/バス男(2004年製作の映画)

4.5

やってみようを育てないことには、やってよかったという実が結ばれることもない。別にいい人じゃなくてもいい。汚い言葉もたまにはけっこう。改めて知る、ポケットに夢を詰めようが、何を詰めようが自由だってこと。>>続きを読む

子ぐま(2021年製作の映画)

5.0

あの頃みたいに家族の心が重なることは、もうないのかもしれない。そもそも、そんな頃本当にあったのかな。どこかでまだ信じている分、言葉にならない感情がこわい。北斗七星を眺めているといつも、パパが初めてわた>>続きを読む

少年の君(2019年製作の映画)

4.3

涙に暮れている。涙が流れ続けている。血がこの身体を流れ続けているように、涙も血なのだとわかれば、それはもっともなことのようにも感じる。腐った社会は不在の親は、あなたとわたしたちが流したその血の海を泳げ>>続きを読む

ソウルメイト/七月と安生(2016年製作の映画)

4.0

神様という存在に頼らなければ。人生にはそんな瞬間がいくつもいくつも待っているのだそうだ。わたしは切に神様を信じたことがあったろうか。見よう見まねで、祈ったことくらいはあったろう。誰かを愛することは、も>>続きを読む

レリック ー遺物ー(2020年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

あなたは大切な人を、最後まで愛することができますか。

思い出のものだらけで片付けられなくなった屋敷は、祖母エドナの頭の中そのもののように見える。長年一人で住み続け、内に内に向いた精神(屋敷)は、他者
>>続きを読む

PITY ある不幸な男(2018年製作の映画)

3.9

予期せぬ悲劇に見舞われてしまった男のカーテンコール。ヨルゴス・ランティモスやリューベン・オストルンド。テイストで言えば『隣の影』などもあったろうか。最近観る機会の増えた欧州発ブラックヒューマンドラマ。>>続きを読む

彼女来来(2021年製作の映画)

4.0

MOOSIC LAB(映画監督とアーティストを掛け合わせた映画制作企画)って、必ずしも良作ばかりとも言えないけれど(個人差)、たまに引き込まれる作品があって、これはまさにそうだった。ちょっとチャーリー>>続きを読む

ストリート・オブ・クロコダイル(1986年製作の映画)

4.5

少年は不思議な夢を見ていた。埃とカビのにおいが漂ってきそうな廃工場のような空間で、童子が一人遊びをしている夢だ。それはその少年の過去だったろうか、全くの他人だったろうか。面影は何ひとつとして重ならず、>>続きを読む

ライトハウス(2019年製作の映画)

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ベルイマン作品を観ているような錯覚に、『神々のたそがれ』的不衛生さが毒を盛る。理解を神話になぞらえるあたり、全ては映画狂いの夢語りであったような、鼻息の荒さが耳にこびりついて離れない力作。

Mr.ノーバディ(2021年製作の映画)

4.0

コメディ畑の役者にコメディをさせないことの効果。これが正直なコメディ映画ならどのような台詞であれその都度オチを付けて笑いにするところを、オチを付けずコメディ的ストレスを敢えて生むことによって、ボブのシ>>続きを読む

ブータン 山の教室(2019年製作の映画)

4.3

幸福の国という言葉が一人歩きを始めたのは、いつからだったろうか。ここに描かれている現実を想像しなかったわけじゃない。むしろ想像に難くない。しかし、それよりずっと的外れであって欲しい、そう無責任に願いも>>続きを読む

転校生(2012年製作の映画)

4.5

取るに足らない今日のために、わたしをわたし足らしめることで精一杯だったわたしたちに捧ぐ。

街の上で(2019年製作の映画)

4.6

振り向けば恋しい。しかしながら、追い付いてしまえばどこか寂しい。恋と呼ぶには物足りなくて、わたしたちは打算と懐を探り合うように笑ってみる。生きることはなりすますことと、本音の言い回しの選択で、器用だろ>>続きを読む

れいこいるか(2019年製作の映画)

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正午頃。買い物に訪れたスーパーマーケットの入り口あたりで、ゆっくりと歩いて来るおじいさんとその孫らしきふたりの姿が目に入った。好きに選び買ってもらったのだろうソフトクリームを両手で抱えながら、夢中にな>>続きを読む

藍に響け(2021年製作の映画)

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大きな音を出す。大声を出す。エネルギーを解き放つ。音楽にはそういう力もある。和太鼓ほどシンプルなものであれば、それはとてもストレートで誤魔化しのきかないものなのだろう。

いとみち(2020年製作の映画)

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やってやれないことはない。わたしはわたしの音を信じる。

これでもかと配役がはまっている。これは役者がみな不足なく演じる力を持っていたという、そういう素晴らしさでもあるけれど、監督のイメージに無駄がな
>>続きを読む

17歳の瞳に映る世界(2020年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

彼女の身に何が起こっていたのか。あの問診中、顔が歪んだ瞬間、生々しい悪夢がざらりとした感触と共に一気に流れ込んで来た。この原題にはしっくりしかない。邦題も意味のないものとは思わないけれど、少し内容とは>>続きを読む

スターフィッシュ(2018年製作の映画)

4.8

このレビューはネタバレを含みます

かざした手からこぼれ落ちるものが、わたしの分け前なのだとしたら、わたしは光に気を取られて、多くのものを失ってきたのかもしれない。

故郷の片田舎を出たオーブリーは、都会での生活を謳歌し、自由奔放に生き
>>続きを読む