ひこくろさんの映画レビュー・感想・評価 - 16ページ目

ひこくろ

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ガンバレとかうるせぇ(2014年製作の映画)

4.4

若さというひと言ですべてを言い表せるような映画だった。
高校生の悩みは大人から見たら取るに足らない些細なことでしかない。いじめや体罰なんかがあっても、それは変わらない。
でも、高校生たちにとっては、生
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夏への扉 ―キミのいる未来へ―(2021年製作の映画)

3.3

SFの名作が完全に昼ドラになっていた。
というと、怒られそうだが、決して悪いと言っているわけではない。
作り手側はその辺を完全に覚悟しているようで、とにかく昼ドラであることを貫いている。
だから、昼ド
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Arc アーク(2021年製作の映画)

4.3

映画の根本にあるのは、見てはいけないものを見たいと思う欲求だと思う。
最初、それは死体という形で現れる。リナは死体を見たいと思い、触れたいと願う。
その行動は欲求を端的に表している。彼女は震えながらも
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オーファンズ・ブルース(2018年製作の映画)

4.4

最近の自主製作映画のレベルの高さを見せつけられたような作品だった。
構図とかカット割りとか、間の取り方とか、「プロじゃん!」と思うほど。唸るほど上手い。
しかも、この監督は「見せない魅力」についても、
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天使のたまご(1985年製作の映画)

4.5

絵の説得力というのはこういうことを言うんだろうと思わされた。
謎めいた世界観も、状況も、理由すらも、映画は何も語らない。
その代わり、異常とも言えるほどの圧倒的で繊細な絵を見せつける。
次に何が起こる
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ある日本の絵描き少年(2018年製作の映画)

4.1

たった20分間に夢とか才能とか現実とかのすべてを詰め込んだ意欲作。
その時の自分が描いている絵が、そのままアニメーションになっているという試みも面白い。
ぐちゃぐちゃだった絵が、きれいになり、マンガに
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青 chong(1999年製作の映画)

4.3

在日朝鮮人の問題はいまだに根深く残っている。
日本人でもなければ、朝鮮人でもない。アイデンティティーを根源から奪われた彼らの苦悩は尽きない。
自分は何者か、という問いに向き合いながら、彼らは毎日を生き
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くれなずめ(2021年製作の映画)

3.4

男六人がひたすらワチャワチャしている映画。
ただ、ワチャワチャの中でぽっと呟かれた「俺って死んでない」のひと言が、謎となって観客を惹きつける。
六人のワチャワチャは、全然謎を解こうとしない。それだけに
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映画大好きポンポさん(2021年製作の映画)

4.7

可愛らしくポップな絵柄からは想像もできないほどの、ものすごく熱い映画作りのお話だった。
プロとプロとが、時に意見をぶつけあいながら、一本の映画を撮り上げていく。
妥協も甘さもそこには一ミリもない。新人
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寝てるときだけ、あいしてる。(2014年製作の映画)

4.3

登場人物は三人。この全員がイカレている。
でも、三人も作り手も、イカレてることをよしとはしていない。
どうにかしたいともがき、どうにもできずに、結局イカレて過ごしているのだ。
「これは間近っている」と
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新感染半島 ファイナル・ステージ(2020年製作の映画)

4.3

これはたぶん、ものすごく叩かれるだろうし、評価もめちゃくちゃ低いと思う。
なんと言っても、前作にあった魅力がほとんどないんだから、それはしょうがない。
でも、別のタイプの映画として観たら、とても面白い
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真珠の耳飾りの少女(2003年製作の映画)

4.4

ある一枚の絵が誕生するまでの物語を、よくぞここまでスリリングに、かつミステリアスに想像したものだと感動した。
映画は最初から最後まで徹底した緊張感に満ち満ちていて、それが絵の完成に凝縮されているのが上
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スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち(2020年製作の映画)

4.3

まだ商業的に成り立っていなかった映画界では、男女の区別なく、みんなが好き勝手に映画を撮っていて、女性の監督も相当数いたという。また、この頃はまだスタントという概念もなく、役者自身がアクションシーンもこ>>続きを読む

さんかく窓の外側は夜(2021年製作の映画)

4.0

かなり上質なホラー映画だと感じました。
単純に「見えない物が見える」という感覚的な怖さもあるし、人の悪意や憎悪、狂気が他人を壊していく怖さもあります。
それをいい具合に怖く感じさせてくれる脚本がとても
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名も無き世界のエンドロール(2021年製作の映画)

4.3

基本的に現在の様子はあまり描かれず、子供の頃と青年期の思い出が交互に描かれ、そこから現在が見えてくるという構成。
物語よりも、人間関係とかその人物の人間性が徐々に浮き彫りにされるんだけど、そうすること
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ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)

4.5

前半から中盤にかけては、義理と人情が通じなくなりつつあるという状況はあるものの、まあ、普通のヤクザ映画だと言える。
自分の命にすら投げやりな一匹狼の若者が、ヤクザの世界に入り、ようやく自分の居場所を見
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哀愁しんでれら(2021年製作の映画)

3.3

中盤以降、不穏な空気が流れはじめてからは面白い。
ただ、そこに至るまでがかなり退屈で厳しかった。
わざとそういうふうに描いているのはよくわかるんだけど、それでも何のリアリティも感じられない人物と物語が
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2/デュオ(1997年製作の映画)

3.4

男女の同棲の様子が、淡々と、でも丁寧に描かれる。
お互いに言葉にできない苛立ちを抱え、それを相手にぶつけしてまい、解決されないまま、なあなあに仲直りして元に戻る。
でも、苛立ちは終わることなく、また頭
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タリウム少女の毒殺日記(2012年製作の映画)

4.4

人間の生命には価値があるって基本的考えが、根本から揺さぶられるような作品だった。
映画は唐突にカエルの解剖からはじまり、動物たちが実験に利用される様子や、暴力を振るうシーンなどがランダムに描かれる。
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ペパーミント・キャンディー(1999年製作の映画)

4.4

映画の語り口がとにかく上手い。
最初は、キム・ヨンホの訳のわからない行動に、なんだこれはって気にさせられるのだが、そこから過去に戻ることで、次第に様相が変わってくる。
少し戻った過去では、新たな事実が
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13月の女の子(2020年製作の映画)

4.0

狙っているのかどうかはわからないけど、物語も設定も映像もやけに古臭いなあと感じた。
「謎の転校生」とか「時をかける少女」とかの、ちょうど1980年代辺りの雰囲気。
どうしてそうしたのかは疑問だけど、た
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海抜(2018年製作の映画)

4.4

大学生の卒業制作というのが信じられないくらいに、映画の出来が素晴らしい。
脚本は、説明的なセリフやわかりやすい描写で場面を描くことを一切しない。
映像は、人を撮るのではなく、そこに流れる「空気感」をひ
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ある人質 生還までの398日(2019年製作の映画)

4.3

紛争地帯では何の常識も通用しない、という、わかりきっている、けど納得はできない現実にまず驚かされる。
撮影の許可を取ろうと、テロリストたちには関係がない。国際的な捕虜に関する決め事もやはり関係がない。
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JKエレジー(2018年製作の映画)

2.6

女子高生っぽいモノ、青春っぽいモノ、を集めてイメージでまとめてしまったような、とても上滑り感のする映画だった。
頭の中でいろいろ考えて組み立てたのだろう。それ自体は悪いことではないが、いかんせんリアリ
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すばらしき世界(2021年製作の映画)

4.2

西川美和って人は世界を一面的には絶対に捉えない人なんだなと思った。
世間も人もヤクザにさえも、やさしい面と残酷な面がある。それが両立していて社会は成り立っている。

ジョン・F・ドノヴァンの死と生(2018年製作の映画)

4.5

ルパートとジョンの二人の人生が並列に語られていき、そのどちらもの姿も浮かび上がってくる様子がもう見事。
出てくる人たちはみな饒舌でいろいろと語るんだけど、その言葉には真実があまりない。
逆に語られれば
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ジュリアン(2017年製作の映画)

3.0

粘着質で暴力的な父親との嫌な関係をただひたすら見せられるような映画だった。
しょっぱな、離婚調停の話から始まり、これはもしかしたらいろんな面があるんじゃないか、と思わせられる。
が、そんなことは何もな
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あのこは貴族(2021年製作の映画)

3.4

現代日本社会にこんな世界の違いがあることに驚いた。
世界の違いは、断絶でもあり、どちらの世界の人間も相手の世界のことを理解できない。
差別とか偏見ではなく、まったく相容れないから、わからないのだ。

町田くんの世界(2019年製作の映画)

4.4

かなり現実離れした設定に、物語、そして展開。
普通なら悪ふざけにも見えてしまうと思う。

でも、この映画ではそのおかしさは味になっていて、むしろ映画の雰囲気づくりに役立っている。
これは、人物造形と台
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太陽は動かない(2020年製作の映画)

4.0

のっけから邦画とは思えないほどの派手なアクションシーンが展開され、度肝を抜かれた。
しかも、アクションの良さは映画の最後まで続き、途中でだれることが一切ない。
一体いくらお金をかけたんだ、と心配になる
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ミナリ(2020年製作の映画)

4.2

これはコミュニケーションの物語なんだなあ、と強く感じた。
年齢、人種、国籍、文化の違いで、他者との断絶は簡単に起こる。
それを解決するのは、相手を認めたうえで、付き合うことにほかならない。

騙し絵の牙(2021年製作の映画)

4.0

予告にあるようなコンゲームとか、どんでん返しとは違う感じを受けた。
どちらかといえば、出版業界の内幕ものに近い。
しかも、描かれていることはかなり非現実的。こんなのは実際にあり得ないだろうと思うような
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砕け散るところを見せてあげる(2021年製作の映画)

4.3

何よりもまず、キャスティングの上手さに驚いた。
ストレートなイケメンというよりは、むしろ真面目な感じの強い中川大志が主役にぴったり。
さらに、どちらかと言えば、斜に構えた役の多い石井杏奈をピュアなんだ
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パーム・スプリングス(2020年製作の映画)

4.2

タイムループものってよくあるけど、そこに恋愛関係を持ち込んだことでとても面白くなっていた。
ループの先輩でもう諦めきっているナイルズに対して、必死にループから抜け出そうとするサラの奮闘がまた面白い。
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異端の鳥(2019年製作の映画)

4.6

息を呑むのも忘れて見入るとはこういうことを言うのだろう。
とにかく最初から差別と暴力が全開で描かれる。
それも極端な形でではない。静かに淡々と、でも残酷に描写されるのだ。

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)

4.7

一応、ホラーという形を取っているし、体裁もしっかりホラーなんだけど、この映画の怖さは別にある。
身近な人が亡くなった時の不安定な気持ちを、ものすごくくっきりと描いてみせているのだ。