さすらいの旅人

やがて海へと届くのさすらいの旅人のレビュー・感想・評価

やがて海へと届く(2022年製作の映画)
3.6
★あなたの好きな曲をかけていいんですよ
【BS/WOWOWシネマ/放送録画視聴/ビスタサイズ】

これは決して楽しい映画ではない。
女友達の友情や愛情をきめ細やかに描いた作品だ。岸井ゆきの主演、浜辺美波の共演と言う現在大活躍中の若手女優の組み合わせは贅沢だ。ドラマの中では陰の真奈(岸井)、陽のすみれ(浜辺)という役どころは言わば反対の性格に見える。しかし、ドラマが進むにしたがって性格が近くなり、姉妹の様に見えるから不思議だ。

すみれの愛用のビデオカメラが両者の交流の証であると同時に永遠に結び付ける物として描かれる。旅先や日常生活はリアルに記録される。しかし、お互いの心の思いは言葉や温もりからしか分からない。このドラマはお互いの心象風景を時間軸を前後させながら丁寧に描写する。少ないセリフと自然描写は人間ドラマとしては物足りないかも知れないが、心の隙間を埋めてくれるような居心地の良さがある。

本作はキラキラの青春映画ではなく、逆に暗く重い作品だ。これにはすみれの失踪などが絡み、あの忘れられない事象も重くのしかかって来からだ。彼女達を結びつけるものは何かが本作の見所だ。主演の岸野ゆきの存在感が凄い。どこにでもいるタイプの容姿だが、作品に没入するその女優魂は半端ない。