dm10forever

キャプチャー: バッタのdm10foreverのレビュー・感想・評価

キャプチャー: バッタ(2017年製作の映画)
3.3
【欠落】

これはまた・・・・
一見、すごく露悪的な作品。
科学実験と称して、刑務所に収監されている囚人を「実験台」にして笑いながら殺してしまう。
決して実験が失敗したわけではない。
これは「成功」なのだ。

「囚人が死ぬ」ということは、的確に人を殺傷する能力を有する兵器の開発に成功したという証なのだ。
だから笑う。

目の前で人間が木っ端微塵に吹き飛ばされて、壁や硝子に血や肉片が飛び散ろうとも、そんな事はお構い無しに、人を殺す兵器の開発がうまくいった事をキャッキャと喜ぶのだ。

でも、彼らはいわゆる「マッド・サイエンティスト」のそれともどこか違う。
彼らのやっていることには決定的にリアリティに欠けているのだ。
それは決してこの作品についての批評ではない。

ここに登場する技術者の二人は、まるでゲームでもするかのように人間を死に至らしめる道具を作り、それを囚人で試す。
囚人だから何をしてもいいという事でもないんだけど、それ以上に彼らが「オモチャ」のような感覚で作ったものが現実的に簡単に人を殺せるものなんだという温度差に異常性を感じる。
彼らが開発したのは『敵兵に「装置」を打ち込み神経にダイレクトに接続して操縦し、敵陣の偵察や潜入を行う』という技術。
確かに最先端のテクノロジーの一端は垣間見える。
そして成果を確認し目的を果たした敵兵は、もはや用済みとなり自爆装置で爆破する。
次に大量のバッタを中枢神経からコントロールし「空飛ぶ爆弾」としてGPSでポイントしたターゲット目がけて一斉に飛び掛らせ、敵もろとも爆破させる生物兵器まで作り、同じように騙して連れてきた衆人目がけて一斉に爆弾バッタを放つ。

どこか「ドラ○もん」のような子供じみた発想と、それに不釣合いな現実的な殺傷能力、そしてその威力を見て嬉々としてハイタッチする技術者の2人。
そのアンバランスさに何とも気味が悪くなる。
彼らが無邪気にはしゃげばはしゃぐほど「痛みを感じない人間」が出来上がっていく。

彼らにはこれで「戦争を終わらせよう」とか「戦争に勝とう」とか、そういう目的があるわけでもなく、単なるひらめきや思い付きで作ったガジェットがリアルに人を殺せるということが嬉しくて仕方ないだけなのだ。

そして、この作品にオチはない。
彼らが実験に失敗して自ら命を落とすみたいなカウンターもないし、彼らがグッドデザイン賞を受賞したなんて結末もない。

だからこそ気味が悪い。
こういう人間が「現在進行形」で何かを企んでいるかのような不気味さ。

「サイコパス」って目で見て分かるようなマークとかないもんかね・・・。
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