ウシュアイア

イニシェリン島の精霊のウシュアイアのレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
3.7
1932年本島では内戦が続くアイルランドの島イニシェリン島で、閉ざされたコミュニティの中でパードリックは友人のコルムから絶縁を言い渡され、二人の諍いは周囲を巻き込んで悲劇へと発展していく、というお話。

神秘的かつ牧歌的な映像からハートフルヒューマンドラマかと思いきや、結構グロいシーンもあり、鬱なドラマ。Wikiなどではブラックコメディと紹介されており、ジャンル分けが難しい作品。確かに閉ざされたコミュニティの中で蓄積し膨張していく負の感情を風刺作品とも見えなくもない。


以下ネタバレあり。

コルムはパードリックに以前から不満をもっていたことが示唆され、距離を置きたいと思いつつも、閉ざされたコミュニティの中では極端な対応をせざるを得なくなる。パードリックはコルムという友人を失ったことで、コニュニティ内でのポジションが低いという現実に向き合わされ、しかも閉鎖的なコミュニティではポジションは変わることはない。結局のところ、人間は閉鎖的なコミュニティの中で生じた争いというのは収拾がつかないということなのだろう。それが嫌なら妹のシボーンのようにコミュニティから出ていけばいいだけ。でも島の外では泥沼化したアイルランドの内戦が行われいる。

国際社会も閉塞感のあるコミュニティにも見え、行き場のない国だってあり、それが戦争に繋がっているのではないかとさえ思えた。

映像、音楽は牧歌的で美しくもあり、だかこそ醜いグロテスクな争いが際立っていた。
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