YUKi

イニシェリン島の精霊のYUKiのレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
4.3
閉塞感、孤独感、
それらに勝るものといえば
もしかしたら“退屈”なのかも知れない。

この島に精霊が存在するとしたら
その名称はそれかも知れない。
退屈が人の思考を肥大化させ
ときに蝕む‥のかも知れない。

こんなにイカれた展開なのに
まったくもって胸糞作品ではなく、
静かなイニシェリン島の人々は
それぞれに偏った愛嬌があって憎めない。

心底憎むべきキャラクターは
公には設定していない。

アイルランドの孤島という
小さなコミュニティで展開されるため、
1シチュエーションの舞台劇のようでもある。

演者それぞれのポテンシャルが
話が進むごとに増す あのテンポの良さ。
すごく好きな要素。

途中、解釈に苦しんだとき
島いちばんのバカと呼ばれる
ドミニクの話す言葉がわかりやすい真意なような気がした。
ストーリーテラー的存在で
あるかのようだった。

感情移入の場はないようで、大いにある。
歳を経て、環境も自分も
おのずと変化することを
受け入れることのしんどさ。
それはさすがに身に覚えがある。

静寂のなか、ことの発端から結末まで
絶妙な変化をグイグイっと
骨太に描き切った、爪痕残る作品。
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