Shun

イニシェリン島の精霊のShunのネタバレレビュー・内容・結末

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

アカデミー賞で9ノミネートされている話題作。
マーティン・マクドナー監督の前作『スリー・ビルボード』が好きなので、すごく楽しみにしてました✨

それまで親友だったはずの友・コルムからいきなり絶縁を言い渡され、訳もわからず戸惑う主人公・パードリック。
何故そんなことになってしまったのか…
納得出来る理由が明らかにされぬまま進んでいく先の読めないストーリー展開に終始釘付けでした。

近隣住民との会話を基にした人間ドラマの中に、争いから生まれる考え方の変化、きっかけが忘れ去られて見栄やプライドに執着して延々と戦争を続けてしまう人間の醜さが比喩的に描かれているのが面白いと思いましたし、色々と考えさせられました。

たとえ住む島が平和でいつもと変わらない日常だったとしても、海を隔てた本土で内戦が起きていることに心を痛めて人生観が変わるってことは十分考えられること。

それまでの退屈で不毛なパードリックとの会話の時間を思考や作曲活動にあてたいというコルムの気持ちがすごくわかる😔
馬の糞の話に2時間…パードリック、お前はバカなのか!って言いたくなります笑

確かにパブで毎日取るに足らない会話を延々とするのも楽しいことかもしれないけど、そんなどーでもいいことに時間を費やすなら、自分が生きた証を残したい、名を残したいと思うのも不自然なことじゃないはず。

私自身、0から何かを生み出すクリエイティブな仕事をしてる方を羨ましく思います。
名を残したいなんて傲慢かと思われるかもしれませんが、愚かにもそう思ってしまいます…。

役者陣の演技がとにかく見応えありました。
パードリック役のコリン・ファレル、コルム役のブレンダン・グリーソン、奇妙な島民ドミニクを演じたバリー・コーガンなど、会話劇ベースの作品だからこそ役者の演技力が作品の質に直結してきますが、安心して世界観に没入していける見事な演技でした。

前半とクライマックスでのパードリックの変容を演じ切ったコリン・ファレルの演技は特に素晴らしかった👏

ロケーションものどかで美しく、癒された☺️
イニシェリン島の舞台となっているのは実際にアイルランドの西海岸沖に浮かぶイニシュモア島とアラン諸島。

断崖絶壁の海岸線や石垣が積み上げられた道路など、都会の喧騒を忘れさせてくれる、田舎町って感じの風景が良いなぁと思いました。

100年前の話なのでこういう島では本当に娯楽がなかったんでしょう。
パードリックが毎日のように14時にコルムとパブで飲みながら世間話をしているところを想像するだけで、羨ましい生活だなぁと思ってしまいます。
まさに、理想的な暮らし。

本土で起きている内戦を対岸の火事だと思っているパードリックの身に起きる今回の悲劇は皮肉が込められていて、前作に通じるものがあると思いました。
Shun

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