フロントスカイ

オッペンハイマーのフロントスカイのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.8
「原爆の父」と呼ばれる理論物理学者、ロバート・オッペンハイマーの人生を描いた本作は、第96回アカデミー賞では、作品賞、監督賞をはじめ計7冠に輝いた。クリストファー・ノーラン監督作品ということで楽しみにしてました。
オッペンハイマーの人生を通して、原爆開発がもたらした結果と影響、そして彼の苦悩を描いていきます。
カラーとモノクロのシーンが交互に展開していき、ノーラン監督特有のたたみかけてくるような演出、複数の時系列が複雑に交錯する展開、加えて登場人物の多さとその関係性の複雑さに混乱してしまう。

科学者の使命とは?
オッペンハイマーは、原爆の開発成功によって賞賛を得たが、軍拡競争の拡大さらには核戦争を想起させる大量破壊兵器を作ってしまったことに苦悩する姿が描かれている。「世界はそれまでと変わってしまった。我は死神なり、世界の破壊者なり」と...

原爆の恐ろしさを示す実際の「広島、長崎」への投下と被害の具体的映像はない。「原爆神話」の言及もない。これはやはりオッペンハイマーの生涯と苦悩、葛藤する姿から反戦を描いた映画なのでしょう。その奥には国家(政治家)の責任を追求するメッセージが感じられる。

今のこの世、世界から最も人気があって注目されている監督が製作してくれたことと、全世界の人たちに発するそのメッセージに感謝しなくてはならない。