原爆開発者側の視点で戦争と平和、原爆と軍拡競争の流れを歴史的に追ってゆく良質な作品だった。争いを続ける人間の愚かさと政治家も研究者も民衆もすべて大きな流れに取り込まれたにすぎないという無常感を覚えさせる。
黒澤明リスペクトで白黒とカラー分けたり、時系列をぐちゃるのは、メメントテネット含めたいつもの分かりづらいノーランだったので予習して行って確実に良かった。タラちゃんのワンスアポンくらいの取っ付きづらさはあったので、この時代の米国史詳しくない人間で、初見ですべて理解できた人などいるのだろうか。
原爆というトピックに関しては複合的な視点で真摯に描かれていると感じた（ほぼほぼ元の小説と一緒らしい）。ラストシーンでの言葉もそうだし、原爆開発以後も批判的に描かれている。
そして後半はそっちよりも資本主義vs共産主義がメイン。何かが終わっても何かに駆り出され、発明は戦争を終わらせることなく、無益で凄惨な殺し合いは死ぬまで続いてゆく。そうして今に至るまで争いを続ける人間、その愚かさ。
戦争や原爆に対して議論が出てきたり考えたりする契機になっている時点で本作は意義も含めて大成功の部類だと思う。
良作です◎
