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オッペンハイマーのshbsbzjisのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.3
この映画は他の映画と比べても本当に多くの論点を自分に与えてくれたが、一番私に重く残ったのは、結局のところオッペンハイマーは善人でも人道主義者でもなく、それらの倫理観はユダヤという民族主義には勝てなかったということだ。

(特に我々日本人にとってはつい目と気が向きがちな)日本に原爆が投下されたことに対する彼の道徳的後悔も、それは決して無辜の人々が虐殺されたことに対する人道的呵責ではなく、放っておいても保たない日本に対して行ったことへの批判であり、自らのアイデンティティであるユダヤ人に対して隆盛を誇ったナチズムに対しては核兵器の使用は躊躇わなかったし、その考えは広島・長崎への原爆投下後も持ち続けていた。つまり彼は決して純粋に本質的に人を殺すことを否定したわけではない。そのため一見すると日本では受け入れられるーというか日本においてはむしろ好意的な人物として美談のように映るかもしれないがそれは普遍的な評価ではないだろう。自らのナショナリズムに人道や倫理観が屈したという厳然たる事実をむしろ生々しく暴いたに過ぎない。それどころか、日本への罪悪感を使ってそれを覆いかけた点ではむしろ極めて卑劣とも言える。せめて、今日のパレスチナの惨状を念頭においた自戒であれば一筋の救いがあるが…

補足・確かに180分とは思えないほどあっという間であった。ただ、会話が多くそれもかなり体力を使う内容なので疲労感は凄まじい。
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