みみ

オッペンハイマーのみみのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
2.5
●予習として見たもの:NHK 映像の世紀バタフライエフェクト「マンハッタン計画オッペンハイマーの栄光と罪」を2回、YouTube上にアップされているネタバレ無しの予習動画、「銀幕にポップコーン」ネタバレ無しのオッペンハイマー予習回
→これらは観ていてとても役立った。観てなかったら人物相関図や聴聞会のことが理解出来なかったと思う。
映画って予習しなきゃ楽しめないものなのか…?と思うと、高評価はつけられなかった。もちろん、観終わってから勉強したり、深掘りするのは楽しいし実際もう2日間暇さえあればオッペンハイマーのことを調べている。
ただ、やっぱり私は、予告編や簡単なあらすじだけで「面白そう」と思った映画が超絶面白かった、あるいはバカバカしくて最高だった、という体験が好きだ。


↓以下、微ネタバレ↓
思っていたよりもロバートダウニージュニアのパートが多くて、この映画が伝えたいのは原爆のこと以上に「人間の行動の起因と結果」みたいなことなのかな、と思った。
あとオッペンハイマーは変な人だったということ。
ノーラン監督とゴジラ-1.0の山崎監督の対談動画の中で、ノーランが「この映画の原作を読んでいて一番衝撃だったのは、マンハッタン計画に参加した科学者達はこの計画の先に待ち受ける悲劇を知っていた。けれどそのまま研究を進め、誰もやめようとは思っていなかったということだ」と言っていた。
確かに、オッペンハイマーの親友ラビは「これまで研究してきたことの結果が大量破壊兵器なのか。なら自分は計画には加われない」と言っていた。けれど結局計画には加わったし、何よりもあのトリニティ実験成功直後のみんなの反応には恐怖はなかった。自分たちのやってきたことがやっと実現した!という興奮だけだった。ので、その辺はお仕事映画なのねと思いながら鑑賞していた。但しそれは世界中に一万個以上の核弾頭が配置されることを決定づけた瞬間なのだから、やはりただのお仕事では済まされない。
だからこそ、作る事は任されたけどどう使うかは決められなかった科学者達の中で、原爆の使用に反対した人達もいたという事実は知ることが出来て良かった。
ただ、非核平和の教育を受けてきた身としては、やはりどうしてもあの原爆投下後のパーティーのシーンはキツいし、逆にもっとキツいシーンを入れて欲しかったと思ってしまう。
例えばオッペンハイマーは戦後来日していたが、広島長崎には来なかったし、罪の意識に苦しんでいたにも関わらず被爆してしまった人達の救済活動をしたりはしなかった。
なんでなのか。
この辺を少しでもいいから描いて欲しかったと思ってしまう。
描いていたつもりなら、もう少し分かりやすくしてほしかった。
これは世界で唯一原爆を投下された国に生まれた自分にはしょうがない感情なんだろうが、アメリカや他の国の観客がどう感じたか、とても気になる。
アメリカの20-30代の観客のほとんどは、アメリカが当時原爆投下を正当化していた事実を知っているし、それに対して嫌悪感を抱いているという記事を読んだ。
小学校の世界史の授業でも、戦争や原爆のことをどう教えるかは先生に任されていて、日本の被爆者の方が当時の体験を語るビデオを見せることが多いらしい。
だから、この映画を観てまさかオッペンハイマーは、アメリカは正しかったと感じる人は少なくとも若い世代にはいない、と信じたい。
日本の教科書も、せめて世界大戦のページだけは他の国の教科書がどんな伝え方をしているかを事実として記載してもいいんじゃないかとさえ思う。

この映画がここまで大ヒットしているのも本当に気になる。だってやっぱり難しいもん。ノーラン監督だから!と無条件に興奮して分かった気でいる人たちが大部分いるんじゃないかという疑念がどうしてもまだ払拭出来ない。
シンプルに嬉しかったのは久しぶりにジョシュ・ハートネットとデイン・デハーンが観れたこと、ザ・ボーイズのヒューイが出てたこと、映画館を出たらアインシュタインそっくりなおじいさんがいたこと。
みみ

みみ