「我は死 世界の破壊者」
ロバート・オッペンハイマーは、
戦争を終わらせた英雄か。
地獄の兵器の生みの親か。
彼の科学者としての本能は、人間としての心を凌駕した。
原爆実験は成功した。
しかし、やがて、彼の中に、閉じ込められていた「良心」が蘇ってしまう。
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「いつか人類はロスアラモスの名を呪うことになるだろう」
式典のスピーチで、オッペンハイマーが語ったのは、およそその場に“相応しくない”内容だった。
オッペンハイマーの苦悩。
彼はロスアラモスの所長を退任した。
「私の手が血で汚れているような気がする」と吐露するオッペンハイマーに、
トルーマン大統領は
「汚れているのは私の手だ、君が気にすることはない」と返した。
そして、オッペンハイマーを“泣き虫”とこき下ろし、二度と連れてくるな、と伝えた。
オッペンハイマーはその後、新たな兵器・水爆の開発に反対し、原子力委員会を追放された。
さらには、ソ連共産党との関係を疑われ、赤狩りの対象になった。
彼は邪魔者になっていた。
科学がもたらす光。
しかし、オッペンハイマーが放ったその光は、後ろに長い影をも伸ばしていた。
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夢、宇宙、時間などをテーマに、斬新な映画を作り続けてきたクリストファー・ノーラン。
一方で『ダンケルク』など史実をもとにした骨太作もあり。
本作は、そんなノーラン監督の、ひとつの到達点だと思う。
物理学を扱った3時間の映画で、ここまでエキサイティングな内容を撮れるのは、後にも先にも、世界にノーランただ一人だと思う。
ただ、もちろん“原爆の衝撃”をエキサイティングな作品にしていいのか、という躊躇はあるのかもしれないが。
それでも、本作を日本で公開してくれたことは、やはり良かったことだと思う。