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オッペンハイマーのnomoreのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.2
"一人の天才科学者の創造物は、世界の在り方を変えた。そしてその世界に、私たちは今も生きている"

全人類の課題として自分事として観るべき映画のひとつが加わった。
(もちろん好き嫌いはあるけれど)

クリストファー・ノーランが創り上げた傑作!
米アカデミー賞7部門受賞も納得だ。

「原爆の父」であるオッペンハイマーの栄光と没落

「戦争を終わらせる」という大義名分のもとに、科学者としての野心で原爆を開発し、栄光に包まれる。

しかし、広島・長崎への原爆投下の惨状を知り、深い苦悩に陥る。

その後の冷戦下の水爆開発に反対する姿勢を示したため、"赤狩り"の対象となり、その栄光を奪われていく...

彼が創り上げた大量殺戮兵器は、日本への投下によって戦争を終わらせることになったが、"新たな戦争"状態を招くことになってしまった。
それが米ソ(現ロシア)の対立、冷戦(冷たい戦争)だ。

互いの力を誇示するために核兵器の開発競争が激化し、「核抑止」の名の下に互いを核兵器によって牽制しあい、対立し合う時代続いた。

ソ連の崩壊によって冷戦は解消したかに見えたが、未だにアメリカとロシアの対立は解消してはいない。

核兵器は日本への投下以降一度も兵器として利用されたことはない。
さらに冷戦以降減少しているといわれる。

しかし、今も約13000発の核兵器が9か国によって保有されている。
その90%近くがアメリカとロシアによって保有されているという。(若干ロシアが多い)

もし1発の核兵器が使用されたなら、何十万人の人々が殺戮されるであろう。

さらに、もし仮に全ての核兵器が爆発したら、この地球を10回以上滅亡させてしまうくらいの破壊力だとか!

そんなバカな!
と思いたいが、そんな恐ろしい核兵器が存在している世界に私たちは生きているのである。

唯一の被爆国として核兵器を持たない日本ではあるが、アメリカの核の傘の下にいるのだ。

アメリカの大統領は、いつでも核兵器を発射できるように、発射命令が出せるブリーフケースを持ち歩かせている。
(通称:核のボタン「フットボール」と呼んでいるとか)

ロシアのプーチンはウクライナ戦争で核兵器の使用を仄めかしたし、北朝鮮は核兵器の開発に必死だ。

人間のやることだ。
いつ何時、間違って発射してしまうとも限らない。

私たちはそんな世界に生きているのだ。

その最初の核兵器をつくった科学者オッペンハイマー。

その核兵器は世界のあり方を変えた。
そしてその世界に今も私たちは生きている。

一科学者の物語は、人類全ての人に関係する物語でもあるのだ。

その物語をたっぷり3時間。
オッペンハイマーの頭脳と心を、ノーラン節炸裂の映像と音で没入体験してください。

私は打ちのめされました。

それでも、日本人として声を出し続けよう。

No more KAKUHEIKI
No more HIBAKUSYA


余談
思った以上にアメリカの政治的展開だった。

戦争や軍事は政治の延長である。
兵器は政治の具と化す。
いかに最新の兵器を備え、相手を圧倒できるか。

彼がつくった核兵器は政争の道具になり、彼もその中に巻き込まれ、葬られていく姿が不憫でならなかった。
自業自得といえばそれまでなのだが...

優れた頭脳を持って発明した科学技術が、兵器開発に利用される。
そしてその兵器は政治利用される。

科学者は結局政治利用され、必要されなくなったら舞台から降ろされる。

科学者としての倫理観や矜持をどう示すのか。
それも見所のひとつ。
アインシュタインとの対比も見事だった。

 
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