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オッペンハイマーのりのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
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まず、見る人に向けたアドバイスなのですが、非常に多くの人が出てくる会話劇なので人物の名前をある程度把握しておくのが良さそう。そしてある程度、当時の歴史や政治、イデオロギーなども頭に入れておくと良さそう。

私は先行上映で見たのですが、そのあたりもう一度おさえたうえでもう一度見たいと思いました。

あとはやはりノーランさんの映画なので、音響や映像がすごい。映画館に向けて作られています。Dolbyで見たら、音で劇場が揺れて本当に怖いシーンが沢山あったので、臨場感を感じたい方には、オススメします。

それを踏まえた上で。

静かな映画です。その静かさに「もっと酷いことが起こっていたのに!」と思うかもしれません。人類未到の挑戦への知的野心と高揚、その代償、そして没落を、ノーランお得意の時系列をバラした状態で淡々と描きます。今回の時系列をバラした演出は、物語をスリリングにするというよりも、観客の感情を冷却し、第三者として俯瞰的に全容を見るために機能してると個人的には感じました。

代償を描く部分では、広島・長崎の現場を映す描写はなく、オッペンハイマー本人の頭の中の想像のみ画面に現れます。

というのも、この映画の焦点は、その惨状に対する後悔というよりは、こんな恐ろしい兵器を平然と使用でき、さらなるむごい殺戮兵器をも作り出そうとする人間(と空気)の恐ろしさに当たっていると感じました。

ただ、それでもやはり、という前置きが正しいかわかりませんが…私は戦争を経験していないけれど、映画の中での原爆が落ちた時の人々の反応にはこたえるものがありました。映画の中だけではなく、原爆を「戦争を終わらせたもの」「戦争が続いていたら失われていた命を救ったもの」と語られるのはこれまでにも聴いたことがありますが、私たち日本人はその言葉の影にいる。今回の映画が、その影の形を感じられるきっかけになってほしいと願いました。日本人にとっても、それ以外の人にとっても。そして、オッペンハイマーの最後の一言は、現代人として、時代と共に更新されるその意味を重く受け止めなければならないと思いました。

36/24

何故か二回目見た。登場人物がわかっていると見やすい!笑 今回は人間ドラマが描かれているなと改めて。人生の光と闇、成し遂げる組織を束ねるということ、栄光と嫉妬、高揚と後悔。

50/24
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