朗らかなこっぺ

METライブビューイング2021-22 ヴェルディ「ドン・カルロス」の朗らかなこっぺのレビュー・感想・評価

4.5
 MET初挑戦だったけど、なんでもっと早く行かなかったんだろうと思うくらい、素晴らしかった。上演時間が長いのも2回の休憩を挟むから全く問題なし。むしろ2時間半の映画とか見るよりお手洗いの心配とかしなくていいから楽かも。(長時間座り続けるからお尻は多少疲れる)
 演者さんの技量がすごい。本場ってやっぱすごい。日本でミュージカルとか観るのとはまた違った味わいと感動がある。
 『ドン・カルロス』としての感想は、とても『ハムレット』的。カルロスが内省過剰気味。政治的対立を扱った初めてのオペラ作品らしいので、それ以前は色恋沙汰の物語がスタンダードだったのかな?さらに、ヴェルディの原曲に合わせて歌詞がすべてイタリア語ではなくフランス語。『ドン・カルロス』フランス語での公演はMET史上初とのこと。
 主演のお二人はもちろんだけど、エボリ公女とロドリーグ役のお二人が最高だった。エボリ公女は、劇団☆新感線なら「覚えてらっしゃい!」とか言って袖に走っていく(たぶん高田聖子さんあたりが芸達者に演じられる)おバカさんキャラになりそうなのに、高潔な精神と賢明さを持った悪役というか、悪役ですらない、ヴィランズ的主人公感があって、とても新鮮なキャラクターに映った。これが150年前に上演されていたかと思うと、ヨーロッパの芸術的歴史に畏敬の念を抱かざるを得ない。