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マイスモールランドのtigerpantsのレビュー・感想・評価

マイスモールランド(2022年製作の映画)
4.1
在留資格を失った、埼玉に住むクルド人家族が蒙ることになった〈理不尽な処遇〉によって、一家の絆が引き裂かれそうになる劇映画。

脚本・監督を担当した川和⽥恵真が、是枝裕和の率いる「分福」に所属し、是枝自身の応援もあって実現した……と聞いて、なんだか腑に落ちるところがあった。特定の社会問題を取り上げつつ、ドラマとしての要件を満たしつつ、いかにも「ドキュメンタリー番組」を観ているかのようなリアリティを感じさせる映画…という部分で。

何よりも(祖国を離れ、日本で育った)17歳の少女、サーリャを演じた嵐莉菜の居住まいが素晴らしい。モデル出身で演技経験を持たなかったという彼女の健闘ぶりに、本作の成功は大きく依拠するところがあった気がする。

また、本作における「特定の社会問題」とは日本政府の移民政策や難民審査の部分であり、その〈理不尽さ〉や〈非人道的処遇〉に対する意義申立てとして企画されたドラマ……なのであろうが、その「社会問題」に関する対立的な政治思想の持ち主が、本作のレビューに平気で「星1つ」をつけるケースを見るにつけ、日本社会における〝外国人居留者〟への偏見や先入観の強靭さにたじろいでしまう。

一定のバイアスがかかり、完全な中立ではないスタンスから撮られた映画(だが、そもそもこれはドキュメンタリーではない!)ではあるが、そのぐらいの配慮をもってもなお、彼/彼女らの権利の回復と地位向上には、まだまだ足りていないのだということを、図らずも分からせる結果である。

……とはいえ、途中で挿入される〝パパ活〟のエピソードあたりは、いささかやりすぎな気もしないでもなく(あと、父親についた人権弁護士が、残された一家の経済状況まで、それ相応にサポートしてあげるべきでは?)。

ただ、劇中に登場する「日本人」に、そこまで非情なキャラクターが見当たらなかったのは、微かな〝救い〟なのかもしれない。
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