アクションの総合見本市、ここに極まる!!
前作の続編という位置づけなんだけど、いやいや、どうしてどうして。
前作がまるで本作のティーザー(予告)のように思えてくる。
それだけ、本作の破壊力は絶大で、タイラーレイクはここから始まると言っても過言ではない。
- タイラー流カメラを止めるな
前半20分あたりぐらいから、刑務所にいる母子を連れ出しての脱出劇がずっと続く。
これがどうみてもワンカメで撮っているとしか思えない。
カットの切れ目が見当たらないのだ。
さらに刑務所を出てから森を抜けるカーチェイスに移行しても、ここもまたワンカメでずっと撮ってるようにみえる。
とにかくずっとワンカメにみえるのだ。
車の中を撮って、そのままカメラが外に出て外を撮って、さらに車のなかに戻ってきて中を撮る。
そんなシークエンスをワンカメで追うのは物理的に不可能なはずで(素人目には)、100歩譲ってドローンなら可能かもしれないが、いったいどんな撮影と編集技術使ってんだろうか。
シーンシーンで爆破や炎も多く、役者はリスキーだろうし(恐らく怪我だらけ?)、相当なリハを重ねては、最後は神に祈るような気持ちで一発本番を撮るんだろうかなとか想像する。
この映画はこの長尺だけで十分インパクトがある。
- 詰めアクションが豊富
「その窮地を何手のアクションで脱せるか?」
という、詰将棋ならぬ「詰めアクション」という言葉がある。
もちろん自分の造語だけれど(笑)本作の楽しみの一つとして、主人公がピンチに陥ったとき、いったいどんな手を使い、飛び道具に何を使い、それらをどう組み合わせ、何手で逃げ切れるか?という、パズルアクションがある。
刑務所、乱戦無双、銃撃戦、カーチェイス、バイク、暴走列車、高層ビル、攻撃ヘリ、ガラス天上等々なんやらかんやら、いたるシーンにそれが散りばめられている。
まさに「詰めアクション」のナイアガラ状態。
- 課題もチラホラ
と褒め殺しではあるが、キャラとかストーリーラインにある種の物足りなさを感じるのも事実。
まず、主人公のタイラーレイクのキャラ。
タイラーは、
「硬いもので打たれても、鋭利なもので刺されても、銃で撃たれても死なない、死ねないタフさが持ち味なんです」
と、照れくさそうに言われれば返す言葉もないが、それだと主人公としては弱い。
名だたるアクション映画に引けを取らない本作だけに、主人公タイラーのキャラが惜しい。
だからといって、安直に過去の精神的トラウマなんかを合間合間に引き合いに出すのも、ありきたりだ。
このあたりは再考の余地がある。
そして、タイラーを取り巻く周辺キャラ。
タイラーを支える二人の姉と弟。
このドラマの必然性に欠ける二人の関係性。
これが姉妹だったのなら、タイラーの元妻と妹の関係性と比べたり、重ねたりできたのに。。。脚本ルッソ、なんで弟にしたかなぁ。
自分だったらぜったいめちゃ強い姉妹にするわ(笑)
そうそう、タイラーの元妻(昔007のボンドガールだったような)
元妻の妹がテロ暴力組織のリーダー格と夫婦で、子供二人もいる。
刑務所で暮らしていて、姉である元妻の依頼で彼らを脱出させるために命がけで守ろうとするタイラーという筋書き。
それでタイラーの命がけのモチベーションは成立するかな?
ボスキャラの非情さは出ていて良かった。。。
というか、普通ラスボスキャラは冷徹とか悪とかを出しやすい。
実はポイントは善悪ともに主人公とボスキャラを取り巻く周辺キャラにある。
主人公とボスキャラを活かすも殺すも周辺キャラしだい。
ボスキャラの周辺は叔父さんなどバランスが良かったので、タイラーの周辺をもっと厚くしたかった。
- アクションの総合見本市だが、オリジナル性も欲しい
ルッソ兄弟が監督と脚本をかいた「グレイマン」もアクション見本市であったが、チャート式アクション図鑑みたいな中途半端感がイマイチだった。
今回はその反省なのか、どれも突き抜けていて、極まった感がある。
といっても、どこかで見たようなアクションも多く、ジョン・ウィックやミッション・インポッシブルのデジャヴュ感が漂う。
どんなアクション映画も昔の系譜を踏襲したりオマージュしているので、なかなかオリジナル性を追求するのは難しいのだろうが、頑張って欲しいところ。
と、もろもろ注文をつけてはみたものの、ここ最近自分がみたアクション映画のなかでは出色のでき。
久々に「スリリング」という死語を掘り起こして使いたい気分にさせる映画だった。