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茶飲友達のkojikojiのレビュー・感想・評価

茶飲友達(2022年製作の映画)
3.8
ジャケ写はパッと見、おしゃれなフランス映画だが、よく見ると分かる。
「茶飲友達」、実は日本を舞台にした老人売春の映画なのだ。と言ってもこの老人売春を一つのネタにして、現代日本の超高齢社会における家族、人との繋がり、孤独を描いた作品だ。

実話だそうだ。

2013年10月、高齢者売春クラブが警視庁に摘発された。クラブの会員数男性1000名、女性350名、最高齢は88歳。まさに超高齢化社会の日本がかかえる老人の孤独死、介護問題、おひとりさま問題などの不安が反映された事件―――

主人公のマナ(岡本怜)は家族の繋がりがなくなり、風俗嬢として社会を一人彷徨う。社会は高齢化によって孤独に生きる人が溢れている。いつのまにかマナはその人達と売春を一つの繋がりにティーフレンドという擬似家族を作っていく。そうすることで、自分の心の穴埋めることに成功したかに見えたが、ある事件がきっかけとなり、脆くもそれは崩壊する。
取り調べ対しマナが答える。
「社会のルールとか常識とかから落っこちる人もいるのだよ。
みんな寂しいんだよ。
正しいことが幸せじゃないでしょう!」

これに対し取調官は
「寂しかったのはあんたのほうでしょう?、そんなことして虚しくなかった?ファミリーとか言って、馬鹿じゃないの
自分の寂しさを他人の孤独で埋めるじゃないよ」
と切り返す。

このやりとりの後、面会に来た母親に対しマナが言う
「何んできたの」
「家族でしょう」
「家族って何?」

なぜこの会話になるのか、この経緯は映画を観るしかない。

これが観客に対する監督のメッセージだ。
私達は考えなければならない。

今の日本社会において、家族とか何か?


No.1507 2023-539
2022年 監督: 外山文治
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