ゆめちん

アウシュヴィッツの生還者のゆめちんのレビュー・感想・評価

アウシュヴィッツの生還者(2021年製作の映画)
4.0
アウシュヴィッツの生還者
 
1949年、ナチスの強制収容所から生還したハリーは、アメリカでボクサーをしながら、かつて生き別れた恋人レアを捜していた。彼女に安否を知らせるべく取材を受けたハリーは、自分が生き延びた理由を記者に告白する。

物語は、主人公の収容所内での壮絶な日々と、戦後のトラウマと罪悪感との間を行き来する日々を交互に見せ、どのようにして自分を解放することができたのかを丁寧に描いていく。

とにかく壮絶な実話であり、どうしてこんな非情で残酷なことができるのかと思いながら観ていたら、物語が進むにつれ、さらに悲惨な出来事が明かになり胸が苦しくなる。

収容所で選択の余地がない状況に追い込まれるハリー。生き延びるためにボクシングをさせられるという理不尽さに憤りを覚えるし、その試合をナチス側が楽しむという構図は不快でしかない。

収容所での骨と皮しかないガリガリに痩せた姿、戦後のプロボクサーとして活躍する筋骨隆々な姿、そして家族と幸せに暮らす壮年期の少しふっくらした姿、顔も体も別人としか思ないほどの変貌に驚くが、体重の増減によりそれぞれの時代を演じ分けたベン・フォスターの役者魂に頭が下がる。
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