菩薩

ザ・ヒューマンズの菩薩のレビュー・感想・評価

ザ・ヒューマンズ(2021年製作の映画)
4.4
多くの人はこれを観て悪趣味だなんだと言うのかもしれないが、私の様な人間からすると他人の忍耐や清貧の日々を勝手に美化しなんの説得力もなく人生は美しいなどと嘯く方がよっぽど悪趣味に思える…。この映画は明日が当たり前に来る事に対しての不安や恐怖から一切目を逸らしていないし、そんな日々を生き抜いていかねばならない現実を一切美化していない。家族の体裁は保てどてんでバラバラな登場人物達は、常に壁や扉や階段を用いて関係が寸断されていく。人間は元来が愚かであり弱く他者は常に自分にとっての脅威でしかない、そんな中で刻一刻と朽ち狂っていく哀れな人間の姿が、同じ様に劣化の一途を辿る家屋とそれが発する余りにもホラーな生活音の連打の中で表現されていく。これが「人間」だと言われた方がよっぽど真摯に思えるし誠実である。明日からも続くのであろう悪夢的でミニマルな日常をニコ・ムーリーのスコア、ライヒとフィリップ・グラスまでもが彩りを添える。「生きるのが辛いのに健康食品で長生きしたいのか?」←マジでこれ、そのくせ毎日ヤクルト1000ともろみ酢を飲んでいる私はなんだ(しらねぇよ)。昨年ベストをノエの『VORTEX』に捧げた私に刺さらない筈もなく、なんとも後味悪いラストに引きずられながら新年早々絶望感に酔いしれている。
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