ソラ

ホーンテッドマンションのソラのレビュー・感想・評価

ホーンテッドマンション(2023年製作の映画)
4.0
2時間アトラクションのホーンテッドマンションを体験したかのような作品。ホラー要素も少ない(音で驚かす場面はある)ので子どもでも楽しめるかな。アメリカのディズニーランドにあるアトラクションをモチーフにしているため訪れたことのない人には、真新しく感じるかも。とにかく、鑑賞後ディズニーに行きたくなる。

ウォルト・ディズニーは、夢を見続けるために細部の作り込みをかなりこだわった。この映画にもそんな彼のレガシーが垣間見える。

作品として見るのと、ディズニーオタクとしての観点から見るのとでは全く評価が異なるので分けてレビューします。


【一作品として】

2003年にエディ・マフィ主演で映画化されたものとは、異なるアプローチを試みた本作は、Disney100周年という重すぎる期待を一身に引き受けてしまった。

アメリカでは、『バービー』や『オッペンハイマー』といった大作に勝てず、興収的にも評価的にもお世辞にも良いとは言えない。

原因は明々白々。監督の表現したかったものを詰め込んだ結果、愛が強すぎて作品自体を歪めてしまったことにある。ホラーとしては申し訳程度のジャンプスケアがあるに止まり、コメディとして振り切れるわけでもなく一般の鑑賞者には物足りなく思えるのも納得できる。

『ジャングルクルーズ』や『リトル・マーメイド』といった最近のディズニー作品の実写化は悉く上手くいっておらず、漏れなく本作も飛び抜ける良さはなかった。

オーウェン・ウィルソンやジェイミー・リー・カーティスの使い方が勿体無いと感じる。ただ、トラヴィス役のチェイス・ディロの演技は物凄く良かった。リアクションがいちいち面白くてツボだった。(ジョナサン・メジャースにソックリ)大成しそうな雰囲気がある。


でも!ここから先に語るディズニー好きとしての感想を読んで、監督の表現したことの良さを汲んで消化していただけると幸いです。


【ディズニーオタクとして】

1969年に完成したアメリカアナハイムのディズニーランドのホーンテッドマンションをそのまま再現している。パッと目を引く美しい建築様式や対照的にボロボロの内観、動く絵画や伸びる廊下、アメリカでは馴染みのあるハットボックスゴーストの再現度は異常なほど高い。

監督のジャスティン・シミエンはかつてディズニーランドでキャストをしていたほどのディズニーオタク。少しのブレイクの間にもホーンテッドマンションに乗っていたそう。

アトラクションのデザインや設計を担当するイマジニア(イマジネーション+エンジニアの造語)であるマーク・デイヴィスとクロード・コーツの、2人をチームリーダーとしたアトラクション。実は、この2人の方向性は真反対であり、話せば長くなる会議を経た後ユーモアと恐怖が共存するように設計された。つまり、本作も母体となるアトラクションの構成要素を上手く切り取り、ユーモアと恐怖の絶妙な配分を試みた訳である。

ディズニー特有の人間ドラマも個人的には大ハマり。喪失と再生を軸にした作品は近年多くみられる。死について考えさせられる。最愛の人を亡くし死にとらわれるかそれを乗り越えるか。意外に泣かせられる。

ホーンテッドマンションはウォルト・ディズニーが生前最後に手がけたアトラクション。彼は完成を前にあの世へ渡ったが、本作が彼に届くと願っている。
ソラ

ソラ