ぶみ

ちょっと思い出しただけのぶみのレビュー・感想・評価

ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)
4.0
追いかけてこないのかよ。

松井大悟監督、脚本、池松壮亮、伊藤沙莉主演に夜ドラマ。
照明スタッフで元ダンサーの照生と、タクシードライバーの葉の六年間を、7月26日を通じて描く。
照生を池松、葉を伊藤が演じているほか、河合優実、大関れいか、屋敷裕政、尾崎世界観、成田凌といったバラエティに富んだメンバーに加え、市川実和子、國村隼、永瀬正敏といったベテラン陣が登場。
また、チョイ役で渋川清彦や鈴木慶一、高岡早紀、松浦祐也等が出演していたのも見逃せないポイント。
物語は、照生と葉の二人を中心に、様々な人々が絡む日常を描いていくのだが、それを7月26日という照生の誕生日に固定し、過去に遡って定点観測していくという構成となっており、それを説明臭くなく、さらっと観る側に理解させる見せ方の旨さには脱帽。
結論が最初に提示されているだけに、それまでのありふれた日常の光景の一つ一つが大切な時間に感じられるとともに、その光景がドキュメンタリーを見ているかのようなリアリティを誇っているため、没入感が半端ない。
そして、迎える結末では、しっかりと伏線が回収され、その他の人々の背景も明かされるという展開となり、その構成の巧みさには舌を巻くばかり。
そんな中でも、伊藤の演技が素晴らしく、葉を演じることができる女優は伊藤しか思いつかないほどで、等身大の演技とはまさにこのこと。
単に時間軸を巻き戻しているだけなのに、それが心のさざなみを増幅させ、誰もが持つ、あの日あの時、甘く切ないあの空気を、ちょっと思い出すことができる良作。

メーター、止めておきましたから。

〜Just Remembering〜
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