NAO141

ベルファストのNAO141のレビュー・感想・評価

ベルファスト(2021年製作の映画)
4.0
子役の男の子がとても可愛い!
モノクロでありながら非常に美しい!
じいちゃん・ばあちゃんがとても良い!

1969年8月15日、プロテスタントの武装集団がカトリック住民を攻撃。穏やかだった少年バディの世界は突如として悪夢へと変わってしまう。本作は故郷を離れるか否かの決断を迫られる中での家族愛を描いている(本作のタイトルにもなっているベルファストという場所は造船所としても有名で、あのタイタニック号もこの地で造船されている)。

本作は暴力と隣り合わせの日々を描いているものの、そこまで深刻な形では描かれておらず、むしろユーモア溢れる子ども目線で描かれている事が特徴。とはいえ、子どもだけではどうすることも出来ない世の中の動きがあり、そこに巻き込まれてしまう子どもの姿も描かれる。物語冒頭の〈剣士ごっこ〉のシーンがとても印象的。無邪気に〈戦い〉の真似事(男の子はこういった遊びが大好き笑)をしていただけの場所に暴徒集団が突然現れ、遊び場が本当の戦場になる皮肉。本物の〈戦い(争い)〉を知らない少年、フィクションだと思っていた世界が現実になったことの混乱。だが、昨日までの日常が、ある日突然このように大きく変わってしまう可能性は私達にも十分にあり得る。そうなったとして私達は人生の岐路でアイデンティティーを取るのか、新しい場所での未来を取るのか、一人ひとりにそれぞれの選択があると思う。〈生まれ育った場所にこのまま居たい〉〈好きな子の傍を離れたくない〉、それぞれにそれぞれの想いがあり、そこに大小や優劣もない。しかし〈争い〉がその想いを壊してしまうことがある、それもある日突然に。本作は今だからこそ観る必要がある作品であり、ラストで「でもあの子はカトリックだよ」と言うバディに父親が「あの子がヒンドゥー教徒でも反キリスト教徒でも関係ないさ。優しくて互いを尊敬出来るのが人間には何より大切なんだ」というシーンが胸に突き刺さる。互いを思いやる戦争のない世界を願ってやまない。

本作はモノクロ作品であるが、作中に登場する『恐竜100万年』『真昼の決闘』『スタートレック』『チキチキバンバン』などの映像はカラーで演出されており、娯楽作品が緊迫した日常社会をいかに和ます存在であったかをうまく表現している。

バディは何かある度にじいちゃん・ばあちゃんの家に行くが、自分も祖父母と過ごした時間が長かったのでとてもほっこりする。好きなシーンは勉強頑張って好きな子の隣に座れた…と思ったら「お前かよ…」なシーンと、バイオ洗剤のシーン笑。これはなかなかの良作だね!!
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