不思議な力を持つ作品だった。平穏と混乱の混じり具合がリアルに感じて、戦中の市井は本当にこんな様子だったんじゃないかと思う。
戦争という不安定な情勢の最中、愛する故郷に残るのか否かの選択する葛藤を、人間味のある形で描かれていた。ケネス・ブラナー少年の視点から周囲の環境の移り変わりと感情の揺れ動きを明にも暗にも伝えていたように思う。
終わり方が意外にもすんなりとしていた。「あれ、終わったの」という感じ。何か大きな出来事があるわけではないが、エンタメ要素というより、この作品のテーマ性を優先したのだろう。そうした謙虚で本筋を強く貫き通す製作陣の姿勢を感じた。
映像は主に白黒だったけど、古の白黒映画にはない画質の良さがあった。だから、見飽きることはなかったし、空がより美しく見えた。モノトーンながら景色がハッキリと映る分、常に独特の静けさを持っていた。制作側がモノトーンを通して伝えたかったのはこういう部分なのかな。